スペイン、経済危機脱出の特効薬は催眠術?【世界のハフポストから】

スペイン政府が、楽観的なメッセージで経済成長を宣伝しようとしている。「スペインは危機から脱しつつある」とのメッセージを繰り返し始めた。
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スペイン政府が、楽観的なメッセージで経済成長を宣伝しようとしていることを表現した。

「スペインはうまくいっている」。元々は、アスナール元首相(在任1996-2004)が、当時の好調な経済を言い表した有名な言葉だ。

「スペインはー、うまーく、いっているー、スペインはー、うまーく、いっているー」と、ラホイ現首相が国民に催眠術をかけて、スペインの経済危機は終わったのだと信じ込ませようとしているように表現した。眼鏡の中を渦巻きで加工して、ラホイ首相を催眠術師のように見せている。

■痛烈にユーモアを

私たちがこのスプラッシュを選んだのには理由がある。まず、スペインの現状だ。景気回復の兆しは少しずつ見えてきているが、政府が危機脱出へのアイデアを売り出し中とはいえ、まだ十分ではない。

また、このスプラッシュは、スペイン版ハフポストの精神を反映している。私たちは批判精神を持ち、厳密で、同時にスペインのニュースを多角的に、独自の視点で報じようとしている。面白いだけでなく批判精神あふれた魅力的なスプラッシュ。スペインではこんな痛烈な表現や、ユーモアあふれる見出しはあまり見られない。これこそがまさに、スペイン版ハフポスト流のニュースの伝え方なのだ。その瞬間のニュースをただ報じるだけでなく、ビデオ、画像、ツイッターを通じて情報の価値を最大限に引き出そうとしている。そうして、視覚的に読者を最も引きつけるのだ。

■いまだ見えないトンネルの出口

2007年からの経済危機で、失業率は労働人口の26%にまで高まり、人々は欧州から強いられた緊縮財政に苦しんでいる。一方で経済的な指標は改善の傾向がみられる。株式市場の指標は2011年以来の1万ポイントを回復し、リスクプレミアム(投資家がリスクに応じて求める収益の割合)も目に見えて減った。

政府はこれらの兆しを、スペインを経済危機から脱出させたラホイ首相の勝利と思わせようとしている。ただ、スペイン国民にとってトンネルの出口の光はまだ見えない。失業率はいまだ非常に高い水準にあり、教育や健康保険、年金などの公共サービスに影響する社会保障の削減はどんどん進んでいる。貸し出し金利は上がり、売上高も落ち込んでいる。給料は上がらず、1億2400万人が貧困にあえいでいる。

2013年9月、新たな政策がスタートし、政府は「スペインは危機から脱しつつある」とのメッセージを繰り返し始めた。たとえば「スペインは復活した。もう後戻りすることはない」「スペインは未来に向かって歩いている」「トンネルの出口の光が見えた」……。未来をとても楽観的に語るポジティブなメッセージが何度も繰り返されている。こんな台詞をただ繰り返すことで、問題は終わったと国民に思わせる特効薬にでもなるかのように。

このスプラッシュはフェイスブックで500いいね!500シェアを記録した。読者はスペイン版ハフィントン・ポストのニュースの見せ方、伝え方を楽しんでくれているようだ。

(ギレルモ・ロドリゲス編集長)

世界9カ国に広がるザ・ハフィントン・ポストのネットワーク。各国版の編集長が選んだ、2013年の各国イチ押しスプラッシュ(トップ記事)を紹介します。

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