『終活』ブームは業界の煽り? 日本における葬儀の変化について海外メディアの視点とは

『終活』とは、「人生の終わりのための活動」の略で、自らの人生の終わりを迎える準備することを指す。日本社会において、自身の葬儀や死後の事務手続きを準備している60代・70代の高齢者が増加しているという。日本人を対象にしたアンケート調査では、「葬式は(残された親族や隣人ではなく)故人の意思を反映するべき」との答えが回答の過半数を占め、「生前葬」「樹木葬」などといった慣習も広まり始めていることなどから、日本社会において人生の終わりを主体的に迎える潮流が始まったと言えそうだ。
足成

『終活』ブームは業界の煽り? 日本の葬儀の変化に海外メディア注目

12月22日、AP通信は、日本の『終活』についての記事を掲載した。『終活』とは、「人生の終わりのための活動」の略で、自らの人生の終わりを迎える準備することを指す。同記事によれば、日本社会において、自身の葬儀や死後の事務手続きを準備している60代・70代の高齢者が増加しているという。日本人を対象にしたアンケート調査では、「葬式は(残された親族や隣人ではなく)故人の意思を反映するべき」との答えが回答の過半数を占め、「生前葬」「樹木葬」などといった慣習も広まり始めていることなどから、日本社会において人生の終わりを主体的に迎える潮流が始まったと言えそうだ。

【日本社会で変わりつつある「葬儀」に対する認識】

2013年11月、天皇陛下は国民の負担を軽減するため、従来の土葬ではなく、火葬での葬儀をご希望されることを発表した。同記事はこの発表を、日本社会で変わりつつある「葬儀」に対する認識を反映していると分析している。

茨城キリスト教大学社会学部の森謙二教授が実施した葬儀に対する意識調査では、回答者の過半数が「葬式は故人の意思を尊重すべき」と回答し、自身の葬儀に対して主体的に向き合おうとする認識が広まってきていることが確認された。同時に、40%の回答者が、自身の葬儀の親族への負担を憂慮していることから、自らの葬儀を積極的に準備しようとする姿勢には、残される遺族への配慮も含まれていると言えそうだ。

自身の葬儀や「人生の終わり方」に対して、より積極的に向かい合っていこうとする傾向は、遺言の書き方のハウ・ツー書籍がベストセラーになっていることや、「終活セミナー」が盛んにおこなわれていること、また、「生前葬」や、故人の灰を木の根元に埋める「樹木葬」などといった新しい葬儀スタイルが少しずつ広まってきている現状にも見られる。こうした潮流に対し、多くの高齢者が定年退職後も健康かつ活動的でいる今、「(葬儀などを含む)心配事を早期に片づけ、余生を楽しもうとしている姿勢の表れではないか」とみる専門家もいる。

【「終活」ブームの背後には無縁化社会と葬儀ビジネスか】

葬儀や「人生の終え方」に対する認識の変化を肯定的に受け止める声もある一方、日本社会の「無縁化」と葬儀ビジネスの商業的動機があるとして、否定的に見る向きもある。

一般社団法人コミュニティネットの佐々木敏子氏は、少子高齢化とコミュニティや家族の絆の弱体化が高齢者の孤独感を生んでいると指摘。「葬儀が親族や先祖の希望よりも、故人の希望を反映するようになっている」現状には、日本社会における家族関係の変化があるとしている。

また、前述の森教授は「葬儀は従来、親族や隣人による『見送り』の儀式だったが、葬儀ビジネスの商業的動機によって伝統的な意義がなくなってしまった」と発言。前述のAP通信の記事では、「終活ブーム」自体が葬儀業界に煽られたもので、前述の「終活セミナー」も、葬儀関連会社の主催によるものが多いことを指摘している。

葬儀ビジネスは現在成長産業だと目されており、異業種の業界への参入も目立つ。2009年には大手スーパーマーケット・チェーンを経営するイオン・グループが「顧客に対する費用の透明化」を打ち出した葬儀サービスを開始。2007年には全国平均231万円だった葬式費用が、イオングループ参入後の2010年には全国平均199万円にまで下がり、価格破壊を起こした。2010年には、大手コンビニ・チェーンを経営するファミリー・マートも葬儀ビジネスに参入する方針を発表している。

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