原子力産業が人材不足 これから必要な人材とは 廃炉作業でヒューマンエラー発生も

原子力産業へ就職する人材の確保にむけ、原子力関連団体や企業が各地で就職セミナーを開いている。原子力業界はどのような人材を確保したいと考えているのか。
原子力人材育成ネットワーク

原子力産業へ就職する人材の確保にむけ、原子力関連団体や企業が各地で就職セミナーを開いている。原子力産業は深刻な人材不足の状態だが、日本原子力産業協会が2013年12月に大阪で開催したセミナーには、昨年度より約70人多い195人が参加したという。朝日新聞デジタルが報じた。

学生は10年度の647人から東日本大震災後の12年度には123人まで落ち込んだが、今回は増加に転じた。協会の服部拓也理事長は「基本計画案で原発維持の方針を示してくれたことが大きかった」と話す。

朝日新聞デジタル「(原発迷走:7)新増設、先走る有識者 経産省審議会」より 2014/01/14 05:00)

東日本大震災のあと民主党政権では「脱原発」が掲げられたが、安倍政権は「原発維持」を表明。また、安倍政権は海外への原発輸出についても強い意欲を示している。海外では、原発需要が増えると見られているからだ。

政府は原子力関連の人材を育成するために補助金を出したり、産学連携による人材育成データベースの作成などを行っている。

しかし、学生の原子力離れは依然として深刻な状況で、特に原子力“以外”の学問を専攻した学生のセミナー参加者が、顕著に減少している。

日本原子力産業協会の求人担当者は、人材の確保について次のように話す。

日本では原子力発電の規模が大きく増えることは暫くの間はないかもしれないが、少なくとも今ある原子力発電所を、数十年にわたって安全に運転してくためには、様々な企業の活躍が必要だ。

運転者である電力会社や、燃料メーカーをはじめ、プラントメーカーや、材料、バルブ、建設、空調、放射線計測などの原子力特有の技術を持つ企業、その他の技術で品質の高い部品を提供する企業などは、これからも新しい人材を必要としている。

また、原子力というと発電ばかりが注目されるが、放射線を利用する企業には、ジャガイモの発芽抑制や、花の品種改良、害虫駆除などを取り扱う農業分野、がん検診やがん治療、滅菌などの医療分野、非破壊検査・測定、高機能な樹脂の製造などの工業分野などがあり、様々なかたちで私たちの生活の向上に大きく貢献している。

(マイナビTV「原子力産業協会」より)

国が先頭に立って取り組むと断言している福島第一原発事故の収束も、人材確保が大きな課題の一つだ。現在、廃炉作業員を支える活動を行っている元東電社員の吉川彰浩さんは、原発に関する知識を持つプロフェッショナルがどんどん辞めてしまい、収束作業でヒューマンエラーが発生している状態だと自身のブログで指摘する。

皆さんは、福島第一の作業が原発作業員の生活を守れるほどの仕事量があると思っています。大きな間違いです。震災前後で比べれば現在の仕事量は震災前の3割ほどしかありません。

福島第一で行っている作業の大部分は、震災後新に入所した大手ゼネコン企業が行っています。

作業員の方々が辞めていく大きな理由は、仕事がないからです。ここで言う作業員とは長年福島原発で働く作業員の方々です。

それと入れ替わる形でゼネコンにぶら下がる企業の作業員が増え、一般産業の作業員が人手不足で入ってきています。

総じて技術力や原発で働く知識(主に放射能を扱うということ)が低い作業員の割合が増え、結果ヒューマンエラーを起こすといった事になっています。

(ショコラとはーちゃん「福島第二原発に行ってきました。」より 2013/10/31)

一方、学生は原子力関連企業への就職についてどのように感じているのか。NHKニュースは、1月12日に開催された就職セミナーに参加した学生の声を、次のように報じている。

東京の大学院で原子力工学を専攻している23歳の男性は「原子炉などを作るプラントメーカーに就職して、福島第一原発の廃炉作業や原子力の安全性を支える設備の開発に携わりたい」と話していました。

福島県いわき市の出身で東京の大学院で放射線の研究をしている23歳の男性は「原発事故のときに何もできなかったという無力感を感じました。原子力の道に進むことに親は反対していますが、東京電力福島第一原発の廃炉に関わる仕事に就いてふるさとの復興に貢献したい」と話していました。

福島県南相馬市の出身で東京の大学院で放射性物質の除去に関する研究をしている23歳の女性は「原発事故にショックを受けて、大学院から原子力の研究を始めました。除染に関する企業に就職して福島の復興を支援したい」と話していました。

(NHKニュース「深刻な学生離れ 原子力業界が就職説明会」より 2014/01/12 18:17)

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