麻薬をめぐる世界戦争、あと40年間はアメリカが敗北する

アメリカ国内で、麻薬撲滅キャンペーンは長い間大規模に展開されながら成果を上げてこなかった。いまや1つの主要な薬物が承認の方向で動き出している。マリファナだ。多くの州でこの合法化の動きが進んでいる。しかし、ひとたび国境を越えると、アメリカが主導する麻薬との戦争は続いており、その関係者からはこの戦いを告発する声が上がっている。今の戦いは暴力やいさかいの新たな種をまいているようなもので、得られるものはほとんど何も無いのではないかと。

ニューヨーク – アメリカ国内で、麻薬撲滅キャンペーンは長い間大規模に展開されながら成果を上げてこなかった。いまや1つの主要な薬物が承認の方向で動き出している。マリファナだ。多くの州でこの合法化の動きが進んでいる。しかし、ひとたび国境を越えると、アメリカが主導する麻薬との戦争は続いており、その関係者からはこの戦いを告発する声が上がっている。今の戦いは暴力やいさかいの新たな種をまいているようなもので、得られるものはほとんど何も無いのではないかと。

「他国との関係改善の目的に沿って、好ましい関係を考えたとき、麻薬取り締まりにお金をつぎ込むのは間違った方向だ。まったく効果的ともいえない。」と麻薬批評家のSean Dunagan氏は語る。彼は以前に麻薬取締局 (DEA) の情報分析の専門家として通算で5年間グァテマラとメキシコで働いた経験がある。

アメリカは、2013年度に海外で約20億ドルを出費した。そしてその多くは、アメリカの麻薬取締局を通じて諸外国の警察に取締りの予算として渡された。Dunagan氏のようなDEAの取締官は、麻薬との戦いを海外で大規模に推し進めるための顔なのだ。

いくつかの国々では、DEAの存在は、中規模の町の警察組織に匹敵する。コロンビアには112人の取締官が駐在しており、メキシコには101名、アフガニスタンに79名、ペルーに49名、タイに45名となっている。その他の多くの国々に小さなグループだが取締官が散らばっており、たとえばスイスに3名、タジキスタンに4名となっている。

この機関は国外の69の国々に793名の取締官を置いていることが、ワールドポストの情報公開法に基づいた問い合わせで明らかになった。参考まで、アメリカの外国への非軍事的援助を取り仕切る主要機関であるアメリカ合衆国国際開発庁の発表によると、同庁からサービス要員および監視人として国外に派遣されている職員は1,622名となっている。

しかし、世界各地で働くDEA取締官の成果はひいき目に見てもまちまちだ。アフガニスタンのアヘンの生産は2013年に新記録に達した。ラテンアメリカではコカインの生産量は減少しており、コロンビアなどかつて麻薬関連の暴力に苦しんだ国々の状況は次第に安定してきている。しかし、麻薬密売人のカルテルはペルー、ボリビア、メキシコなどの新天地で新たな存在感を示し始めた。1990年から2007年の間にアメリカ国内のコカインやヘロイン、マリファナの平均価格は揃って下落しており、十分な供給があるため価格が下げ止まらないことを示している。

Dunagan氏によると、たとえあと40年、海外でDEAのために働いたとしても、麻薬との戦いの勝利には至らないだろうと言う。彼の考えでは、そろそろ世界中に広がりすぎた組織を建て直す時なのだ。

「私が代案を出す立場であれば、麻薬に対する政策は根本的に変えるべきだろう。」とDunagan氏は主張する。彼は現在、NPO団体Law Enforcement Against Prohibition(LEAP)のメンバーとなっている。

「メキシコシティーに24人もの取締官を置くのは、この戦いにこのやり方で立ち向かうとするならば理に適っている。しかし、この戦いにこのやり方で立ち向かうことは、そもそも理に適っていないのだ。」

海外のDEA取締官が直面する困難は、アメリカ国内で遭遇する問題と同じものだ。ただその仕事は、国によって異なる原理に従って決定付けられる主権に関するデリケートな問いのため、一気に難しいものとなる。すなわち、取締官は自由に旅行できるか、誰からも事情聴取ができるか、銃は携行できるか、麻薬調査に積極的に関わることができるか、という問いだ。

海外で取締官が体験することといえば「配置された国ごとに、まったく異なっています」とDavid Wilson氏は語る。彼は以前の連邦麻薬局の組織で事務局長の職にあった。元DEA取締官として1974年から1978年の間にカナダのバンクーバーに配置され、同機関の副調査主任としてしばしば世界中を旅している。

「とてもオープンで友好的に受け入れてくれる国もあれば、そうでもない国もありました。それも時が経つにつれて変わっていたのです。」とWilson氏は言う。

過去15年の間に起こった変化は大きかった。9.11のテロ攻撃の後、同機関はテロリズムと戦う使命を次第に強く帯びるようになってきた。ウゴ・チャベス大統領に象徴されるようなアメリカに反対する政治勢力がラテンアメリカで力を持ってきたのだ。

チャベス大統領は、2005年ベネズエラ政府に対するスパイ行為を働いたとしてDEAを非難した。その3年後、ボリビアのエボ・モラレス大統領は同国から麻薬取締官を追放した。共謀して政府の転覆を図った容疑だ。

「メキシコのような大きな国であっても、国民は自国の統治権が他国から来た取締官たちの手に握られていると感じています。DEAの職員が牛耳っているというわけです。」NPO団体「Washington Office on Latin America」で麻薬政策を研究するJohn Walsh氏は語った。

ある麻薬カルテルの内部情報提供者に関する免責訴追を、他のカルテル情報を得たいがためにDEA取締官が反故にした疑いについて、エル・ユニヴァーサル紙が証拠を持って立証した。それにより、メキシコ国民は激昂した。

ホンジュラスの町はもっと荒れた。2012年にDEAとホンジュラス麻薬局が共同でラ・モスキチアの密売ルートを急襲したのだが、事態は明らかに間違った方向に進み4名の死者まで出した。DEAは国から出て行け、の大合唱となったのだ。

Dunagan氏は、近隣の国グァテマラで当時の記録を記している。そこでは「驚くべきことに」国民の半数以上が法定貧困レベル以下の水準で生活していたのだ。

「打ちのめされた気がしました。グァテマラの人々が必要としているものと、私たちが送り込んだものとははっきりと食い違っていたのです。」さらに続けて、「コロンビアから飛ばされた飛行機を追跡するヘリコプターを私たちが送り込んだからといって、グァテマラの人々の生活には何の足しにもなりません。でもそれこそ私たちが全力でやっていることだし、そのために私たちはそこにいるのです。」

Dunagan氏が、とりわけ気にしているのはThe Foreign-deployed Advisory Support Teams (FAST) のことである。一種の奇襲部隊で当初はアヘン生産と戦うためアフガニスタンに配備されたのが、いまやラテンアメリカにも配備されているのだ。このFASTチームは、ホンジュラスの事件にも関わっており、そして、麻薬取締局の最悪の時代に2009 年アフガニスタンのヘリコプター墜落事件で命を落としている。だ。

アフガニスタンには、ラテンアメリカ以外どの国にも増して多くの取締官が配置されている。しかし最近の議会証言で、ある取締官は、アフガニスタンでの麻薬取締りの試みは「2014年以降にかけて非常に切迫した状況のまま、明るい兆しは見られない」と発言した。

そこには「苛立ちはあります、もちろん。」とWilson氏は語る。同局の使命に忠実なままでいるのだ。「でも望みが無いのかと問われると、違います。もしそこに成功の見込みがまったく感じられないのなら、何もしないわけですが。」

その一方でWalsh氏を始めとする麻薬取締局に対する懐疑派は、今こそ新しいアプローチを始めるときだと主張する。それによると、アメリカはアヘンの供給側にもっと目を向けるべきで、経済開発を通じてケシの栽培農家に別の収入の手立てを与えること、そして取締官には凶悪犯の摘発に専念してもらう。麻薬の最大の積荷を追うのを止めて、罪のない人々を数多く殺すような輩をこそ取り締まるべきなのだ。

「麻薬取締官にはより深い意味合いを持った建設的な目標を与えることができるはずです。」と彼は語る。「より賢明な方法で戦略的に取締りを進めるならば、犯罪市場に集まる者たちに、こうしたマーケットの醜悪で有害な側面を少しでも少なくさせるように、方向付けができるのです。」

With reporting by Jason Cherkis. Infographic by Jan Diehm.

[(English) Translated by Gengo]

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