大砂嵐「横綱になるのが夢」 イスラム圏出身の初の関取が会見

イスラム教徒として初の幕内力士の大砂嵐、東京の日本外国特派員協会で会見、親方を尊敬し、両親や友人、そして母国のために頑張ると語り、「横綱になる夢を持ち続ける」と力を込めた。
中野渉

イスラム教徒としては初の幕内力士である大砂嵐(22)が2月12日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、イスラム教の断食月(ラマダン)について「大きな問題ではない。厳しいトレーニングの延長」と話した。親方(元十両・大竜)を尊敬し、両親や友人、そして母国のために頑張ると語り、「横綱になる夢を持ち続ける」と力を込めた。

大砂嵐は、ピラミッドで有名なエジプトの首都カイロ近郊のギザで生まれた。アフリカ大陸出身者としても初の関取である。本名はアブデルラフマン・シャーラン。母国の大学を2年で休学して2011年夏に来日し、自ら売り込んで大嶽(おおたけ)部屋に入門。初土俵から10場所での入幕という、外国出身者として最速の出世を果たした。会見で大砂嵐は流暢な英語で話した。要旨は次の通り。

--どうして相撲に興味を持ったのですか。

11歳の時からボディービルディングをやっていた。14歳の時にジムでトレーニングをしていると、アマチュア相撲をやっている人がトレーニングしていた。彼から「14歳としては体が大きい。相撲を始めたらどうか」と誘われた。

エジプトでは、相撲は2頭の象が押し合っているスポーツだと揶揄されていた。「相撲は醜い(アグリー)もので、一生やりたくない」と答えた。体が大きければ、筋肉が多ければ簡単に勝つものだと思っていたが、家に帰ってインターネットで相撲を調べると違っていて、スピリットやハートを必要とするスポーツだと分かった。それから相撲に恋に落ちた。

--イスラム教徒はラマダン(断食月)という課題があります。

みなさんが思うほど、大きな問題ではない。厳しいトレーニングの延長だ。前向きに考えている。

--母国エジプトに帰ったときの気持ちは。

2年半前に来日して、2013年7月に初めて1週間だけ帰国した。相撲の世界では自由時間がほとんどなくて、2カ月に1週間あるかないか。うれしかった。日本に戻りたくなくなった。でも、日本には遊びで来たのではない。自分をより磨くため、より向上するために来たのだ。日本は夢をかなえてくれる国だ。私の家族や友人、そして母国のために頑張っている。命懸けで家族のために頑張る。

--初めて来日したときの日本の印象は。

ファンタスティックな映画の世界に来たようだった。高層ビルや人々の歩き方、話し方、服装などにびっくりした。奇妙で国と全然違った。ショックを受けた。

--英語が流暢ですが、どうやって学んだのですか。日本語も同レベルですか。

子どものころから、異文化や外国語に興味があった。世界のことを知りたいと思った。英語だけでなく、日本語でも、中国語でも韓国語でもなんでも学びたかった。エジプトでは、若い人はみんな英語を学んでいる。日本語は正式には習っていないので、読み書きはできない。「大砂嵐」しか読めない。

--相撲は神道の影響が深いのですが、どう受け止めていますか。

私にとって神道は相撲を通してだけのもの。親方は父のような存在で、最初に会った日からアドバイスをしてくれた。「スピードを付けないといけない」「謙遜の心を忘れてはいけない」と言われてきた。エジプトの父も同じようなことを言っていた。「どんなに強くなっても、偉大になっても、権威のある人になっても、最終的にはただの普通の人でないといけない、他人を見下してはいけない」と。そして「肌の色、宗教、出身地にとらわれず、精神で人を判断するように」と言われた。

--家族は、力士になることについてなんと言ったのですか。相撲を始める前の夢は。

力士として活躍したいと言うと、母は泣いていた。「なぜ国から離れるのか」「憎んでいるのか」と。私は、「愛情を感じているが、夢を追いたい」と言った。エジプトは家族の絆が強い。一生、同じ建物で家族と暮らす。異国に行くことは両親にとってショックだった。中東・アフリカ出身の第1号の力士になりたかった。家族が支援してくれないと夢が実現できないといった。すると、母は支援すると言ってくれた。

力士になる前にはボディビルダーになりたかった。いまは三役に昇進したい。そして、横綱になる夢を諦めずに持っていたい。

--モンゴル出身の力士をどう思いますか。日本の力士と取り組むのが好きですか。

どこの出身なのかは気にしていない。私も外国人だから。日本人力士のテクニックが好きだ。日本人力士の相撲を見ていると楽しめる。素晴らしい。

-- 親方はどんな人ですか。

親方を深く尊敬している。ほかの七つの相撲部屋は私の弟子入りを受け入れてくれなかった。「アラブ人の扱いが分からない」などと言われた。大嶽親方は、「どこから来たかはどうでもいい。どういう宗教でも構わない。ただ、君のスピリットが大好きだ。君の夢を実現できるように支える」と言ってくれた。「君には本当の相撲、日本の気持ちを教える」とも言ってくれた。

--「アラブの春 」の後、混乱するエジプト情勢をどう見ていますか。また、戻る予定はありますか。

家族や友人を心配している。ただ、私ができることは仕事。相撲でベストを追求することだけだ。相撲に集中する。中東やアフリカ地域では、相撲はまだまだ有名ではないので普及させたい。そのために日本で成功したい。

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