「小さいおうち」最優秀女優賞を受賞も、海外からは「高齢者向けのメロドラマ」と酷評

今月開催のベルリン国際映画祭において、山田洋次監督作品『小さいおうち』に出演した黒木華(はる)が、最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した。しかし、海外メディアからは作品を「高齢者向けのメロドラマ」などと表する厳しい評価がなされた。
BERLIN, GERMANY - FEBRUARY 14: (L-R) Director Yoji Yamada and actress Haru Kuroki attend 'The Little House' (Chiisai Ouchi) premiere during 64th Berlinale International Film Festival at Berlinale Palast on February 14, 2014 in Berlin, Germany. (Photo by Luca Teuchmann/WireImage)
BERLIN, GERMANY - FEBRUARY 14: (L-R) Director Yoji Yamada and actress Haru Kuroki attend 'The Little House' (Chiisai Ouchi) premiere during 64th Berlinale International Film Festival at Berlinale Palast on February 14, 2014 in Berlin, Germany. (Photo by Luca Teuchmann/WireImage)
Luca Teuchmann via Getty Images

高齢者向けのメロドラマ? 映画『小さいおうち』 最優秀女優賞受賞も海外メディアは酷評

今月開催のベルリン国際映画祭において、山田洋次監督作品『小さいおうち』に出演した黒木華(はる)が、最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した。

1951年より開催されているベルリン国際映画祭は、カンヌ、ヴェネツィアと並んで、世界三大映画祭の一つと呼ばれる。主催者発表によると、今年度の同映画祭のチケット販売数は、過去最高の33万枚に及んだ。

82歳の山田監督の、82作目となる本作品は、同映画祭で最優秀作品賞(金熊賞)を争うコンペティション部門にノミネートされたため、海外メディアの注目を集めていた。

【映画の概要】

第2次世界大戦の前から、終戦の年までを主な舞台としている。東京の若い人妻・時子(松たか子)と、その家の女中・タキ(黒木華)、そして時子の夫の同僚であり、時子と引かれ合うことになる正治(吉岡秀隆)、この3人が軸となっている。タキの回想を通して、物語は進行する。

【昭和初期へのノスタルジー?】

アメリカのエンターテインメント業界情報サイト「バラエティ」は、本作品を「情熱に欠けている」と述べた。「正治と時子の情事は、カタツムリの速さで進展する。背徳のスリルは、これっぽっちもない」。最後に明らかになる、作品の鍵となる「秘密」も、些細なことを大げさに言っているだけ、との印象を与えるという。昭和初期へのノスタルジーをかき立てるだけのもので、日本の高齢者と、台湾の日本文化オタクにしか適していない、と断じた。

キャスティングについても、役に合っているかどうかより、この監督の過去作品の同窓会をやりたかっただけではないのか、と疑問を呈している。

記事は、『風立ちぬ』、『永遠の0』など、最近、日本の映画市場において、第2次大戦中の日常生活を実際より美化して描くものがヒットしている、と指摘する。この作品も、その風潮を表している。作中で、山田監督は自身の政治的姿勢を表明しているが、それでも政治的、歴史的要素は、あまりにも薄められているように感じる、と述べた。

【ひたすら甘いメロドラマ?】

同じく、アメリカのエンターテインメント業界情報サイト「ハリウッド・リポーター」も、ほぼ同様の論調だが、口ぶりはさらに辛辣で、「陳腐なメロドラマ」と斬り捨てる。久石譲の甘ったるい劇伴に乗せて、感情の押し売りをしてくる。この眠気がさす物語は、日本のシネコンで、懐古にふけるおばあちゃんたちを引きつけるかもしれないが、他の人にとってはひどく退屈だろう、と。

山田監督が戦中世代なので、激動の時代についての監督自身の想いが、作品に表れていることを観客は期待していたかもしれないが、実際にスクリーンに映し出されるものは、何から何まで作り物めいている、と批判。“総天然色”的絵作りも、ひたすらどうしようもなく古臭さを感じさせる、という。

黒木華の演技については、「いじらしく慎み深いものだが、一本調子」と述べた。記事中でほめていると言えるのは、かろうじてこの一点だけだった。

【その他の海外メディアの論評】

イギリスの映画情報サイト「シネビュ」は、本作品を「過ぎ去った時代からの色あせた葉書」のようだと形容し、「がっかりするC級作品」だと述べている。

アメリカのニュースサイト「グローバル・ポスト」は、監督のインタビューを掲載している。記事によると、監督は、日本国内の、戦争の恐ろしさを気にかけない世代に向けて、この作品を作った、という。戦争を経験していない世代に、その破壊的な影響を伝えることを目指した、と語っている。

戦争の時代を描こうとする監督の意図は、日本の観客には、十分に伝わるものだっただろうか。あるいは、上述の海外メディアが批判するとおり、戦争は、メロドラマの単なる書割になってしまっていただろうか。それは、映画館で確かめることができる。

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