G20 初の成長目標、5年間で2%超底上げ 日銀総裁「より高い成長で貢献」

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、「5年間で国内総生産(GDP)を2%以上底上げする」との成長率目標で一致した。具体的な目標設定に踏み込むのは今回が初めて。
Reuters

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、「5年間で国内総生産(GDP)を2%以上底上げする」との成長率目標で一致した。具体的な目標設定に踏み込むのは今回が初めて。

会議終了後に記者会見した日銀の黒田東彦総裁は「日本としては成長戦略などを通じ、より高い成長を目指すことで世界経済に貢献することが大事」と語った。

オーストラリアのシドニーで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議は23日、共同声明を採択して閉幕した。

声明は、世界経済の経済成長に関し、「いまの政策で予想される国内総生産(GDP)を2%以上押し上げる大胆で現実的な政策を策定する」と明記。オーストラリアのホッキー財務相は、こうした目標で一致したことについて「前例がない」と強調した。

これに関連し、会議終了後に記者会見した日銀の黒田総裁は「日本としては成長戦略などを通じ、より高い成長を目指すことで世界経済に貢献することが大事」と述べた。総裁は、「日本経済が長期にわたるデフレから脱却することは日本経済に好影響をもたらすだけでなく、世界経済全体にも好影響をもたらす」と指摘した。

また、黒田総裁は会見の中で「アベノミクスの『第3の矢』として成長戦略を強力に推進していると説明した」と強調。電力自由化や減反廃止などの規制緩和を例に挙げ、「今後、本格化するG20の成長戦略の策定に弾みを付けられたのでは。この点についてはこれまでの国際会議などの場でも説明してきたが、今回のG20でも十分に理解されているという印象をもった」と話した。

日銀の金融政策に関しては「私からは特段の発言はしなかった」と述べた。

先の世界的な株安の引き金となった新興国の動向については「一部の新興国でやや成長率がダウンしたところもあるが、依然として新興国全体の成長率は先進国より高い。新興国全体の成長が、すう勢的に下がるということはないと思う」との認識を示した。

また、総裁は、ユーロ圏のデフレリスクへの認識を問われ「インフレ率そのものが下がっていることは事実だが、ユーロ圏の経済は底を打ち、持ち直している。一般的にユーロ圏がデフレに陥る可能性があるとはみられていない」と指摘。その上で「(ECBの持っている)物価安定目標に向けて徐々に近づいていくことを期待している」と語った。

(木原麗花、山口貴也)

[シドニー/東京 23日 ロイター]

G20声明の骨子

シドニーで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は23日、今後5年で現在の見通しよりも2%ポイント以上の成長押し上げを図るとの声明を採択し、終了した。

以下は、当局筋が明らかにした、声明の骨子。

1)最近の世界経済回復の兆候、特に米国、英国、日本の成長が加速し、中国など多くの新興国が堅調な成長を続け、ユーロ圏が成長を回復していることを歓迎。いくつかの重要なテールリスクが低下した。

2)こうした最近の回復にもかかわらず、世界経済はなお、強く持続可能で均衡のとれた成長の達成には程遠い。われわれは、世界経済が依然、一部需要の低迷に直面しており、成長が雇用回復などに必要な水準を下回っているとの認識で一致した。最近の金融市場の不安定な動き、高水準の公的債務、世界の不均衡継続、一部の国に残る脆弱さは、制御すべき重要な試練が残っていることを鮮明にしている。

3)安心している余裕はない。これらの試練に対応するためには強い志が必要。われわれは、財政の持続性と金融セクターの安定を維持する中で、世界の成長率を著しく高める新たな措置を講じることにコミットする。今後5年、現行の政策で予想される総国内総生産(GDP)を2%ポイント以上押し上げる、大胆だが現実的な政策を策定する。これは実質ベースで2兆ドルを超える増加となり、大幅な雇用創出につながる。これを達成するため、マクロ経済政策に加えて、投資拡大、雇用増加、貿易拡大、競争促進につながる具体的な行動をとる。これらの行動はわれわれの包括的成長戦略、ブリスベーン行動計画の基礎となる。

4)多くの先進国の金融政策が引き続き緩和的である必要があり、正常化は物価安定と経済成長の見通しを踏まえたタイミングで行うべきと認識。こうした動きは世界経済にとって好ましく、緩和的な金融政策への依存を減らすことは中期的に金融の安定にとってプラスとなる。移行期においては、経済政策は、投資を含む民間セクターの需要を拡大する措置によって支援が可能。われわれは、デフレあるいはインフレの圧力に機動的に対応し、物価安定維持に必要な措置を講じる用意がある。G20中央銀行は、金融政策を引き続き慎重に策定し、現行の情報交換の体制のもとで明確に伝え、世界経済への影響に留意するというコミットメントを維持する。

5)資産価格と為替相場は、市場がさまざまな政策の推移や国の状況に反応するに伴い調整する。これは時として、過度な変動につながり成長に打撃を与える可能性もある。多くの国がこれに対する備えをしているが、われわれの第一の対応は国内マクロ経済の構造的・金融政策の枠組みを一段と強化することである。為替相場の柔軟性も経済の調整に寄与する。一部の国は、政策発動余地が狭まった財政的バッファーの再構築が必要になる。われわれは常に、それぞれの行動についてG20内で情報交換し一般にも伝え、他国への波及効果を制御し世界のセーフティネットの効果を確実に維持するために引き続き協力する。

6)財政戦略は引き続き、債務の対GDP比率を維持可能な水準に抑えると同時に、短期的な経済状況を考慮して経済成長と雇用創出を支援するよう柔軟に運用する。これを成長戦略の一環として改善に努める。

7)特にインフラ(社会資本)や中小企業の投資が増える環境作りにコミット。これは世界経済の成長が短・中期的に加速するために不可欠である。われわれは、安定的で予測可能な政策、規制の枠組みを構築し、市場のインセンティブや規律を強調して民間投資の制約を排除する改革を実行する。これは、長期的な民間セクターの投資を促進し、民間セクターの設備投資を最大化し、多国間開発銀行の触媒的役割を強化する他の措置と合わせて、われわれの成長戦略、ブリスベーン行動計画の重要な部分を成す。

8)2010年に合意した国際通貨基金(IMF)改革がまだ実現せず、第15次一般クオーター(出資割当額)見直しが2014年1月までに完了していないことは大変遺憾。引き続き2010年の改革の批准がわれわれの最優先課題であり、米国に次回4月の会合までに批准するよう求める。

9)安定した税政策原則に基づく、税源浸食と利益移転(BEPS)へのグローバルな対応にコミット。G20/経済協力開発機構(OECD)のBEPS行動計画を引き続き全面的に支持し、合意された予定通りに進展が図られることを期待。

10)2014年は、耐久力のある金融機関の構築、大き過ぎてつぶせない問題の解決、シャドーバンキングのリスクへの対応、デリバティブ(金融派生商品)市場の安全性を高めるといった、世界金融危機の対応として打ち出した中核的な改革の主要部分をブリスベーンで開催されるG20首脳会議までに完了することに全力を挙げる。金融システムの耐久力を高め、規制環境の確実性を強化して信頼性や成長を支援したい。これらの改革は、統合した世界金融システムを促進し、有害な分断を低減し、意図しない負担を企業にかけないように実行する。

[シドニー 23日 ロイター]

G20財務相・中央銀行総裁会議、終了後の主な当局者発言

シドニーで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議終了後の当局者の主要発言は以下のとおり。

◎ホッキー豪財務相

「各国は11月のブリスベーン首脳会議までに2%以上の成長押し上げ計画を策定することになる。計画によりG20の国内総生産(GDP)は2%以上押し上げられる。各国の成長策をG20が中心となり策定することはない」

「主要国の金融政策の動向が新興国経済に影響を与え、見通すことができる将来においてこれを考慮にいれるというのが妥当な認識だ」

成長について「今後5年で世界経済の成長を2兆ドル以上引き上げることを目標としており、世界的に多くの雇用が生み出される。これに向けた具体策の策定が必要で、各国は十分な押し上げ策を打ち出す必要がある。方策は各国によって違う」

中国について「経済成長のスピードについて現実的となる必要がある」

◎ルー米財務長官

「景気回復が一段と本格化しているが、依然試練に直面している」

税について「税改革での前進で合意したことを歓迎する。多国籍企業が公正に負担するようにすることが必要」

◎バイトマン独連銀総裁

「ユーロ圏のデフレリスクは非常に低い。デフレ的な動向はみられない。ドイツの名目賃金上昇は、(ユーロ圏の)デフレへのリスクを一定程度軽減する」

「新興国の世界経済への影響を過大評価すべきではない」

◎ショイブレ独財務相

G20での債務などの目標について「各国で目標を設定することができ、それを達成するのは各国の手腕」

「どの成長率水準なら達成できるか、非常に複雑な過程の結果となる。この過程の結果について政治家は保証できない。高成長への条件のひとつは、過剰債務の縮小を続けること。堅固な財政政策は妥当な成長政策と相反するものではない」

◎ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事

「世界の成長が最近数カ月、先進国がけん引する形で加速したものの、新興国の金融市場と資本フローの一段の不安定化や、先進国の低インフレが今後重要な課題。世界経済の回復をより強固にし、現在存在するリスクや潜在的なリスクに対応するためには一段の行動と国際協調が必要」

◎周小川・中国人民銀行(中央銀行)総裁

G20で総裁が表明したとして中銀が公表。

「中国は生産性拡大、構造改革促進、GDP押し上げに向けてG20諸国と協力する。経済成長、改革、安定の均衡化に努力」

「中国は7―8%の経済成長を目指しており、これは中国や世界にとって良好な水準」と表明したが具体的な時期は示さず。

金融面でのリスクに警戒しており、「シャドーバンク」を注視。シャドーバンキングは急激に拡大しているが、規模はさほど大きくない。

◎黒田日銀総裁

「日本としては成長戦略などを通じ、より高い成長を目指すことで世界経済に貢献することが大事。日本経済が長期にわたるデフレから脱却することは日本経済に好影響をもたらすだけでなく、世界経済全体にも好影響をもたらす」

[シドニー 23日 ロイター]

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