佐村河内守氏の番組をNHKが内部調査 「設計図を見せられたので」ウソ見抜けず

NHKは3月16日、「耳が聞こえない作曲家」として知られていた佐村河内守(さむらごうち・まもる)氏の曲を別人が作曲していたことに気づかずに「NHKスペシャル」などで放送した問題を検証した調査結果を発表した。
時事通信社

NHKは3月16日、「耳が聞こえない作曲家」として知られていた佐村河内守(さむらごうち・まもる)氏の曲を別人が作曲していたことに気づかずに「NHKスペシャル」などで放送した問題を検証した調査結果を発表した。

午前11時から放送された情報番組「とっておきサンデー」の中で「なぜ別の人物が作曲していたことに気づかなかったのか」と厳しい意見が視聴者から寄せられたことを受けて、NHKでは調査チームを設けて事実関係を調べてきたことを女性キャスターが説明。

その後、調査にあたった生活・食料番組部の松本浩司部長が登場し、「NHKではそれぞれの番組の制作過程でチェックを行ってきましたが、気づくことができませんでした。視聴者の皆様、取材でご協力いただいた方々に心からお詫び申し上げます」と謝罪した。

この番組と合わせてNHKは「佐村河内氏関連番組・調査報告書」を発表。番組制作スタッフが佐村河内氏のウソに気づかなかった理由を以下のように釈明している。

■本人が作曲していなかった問題についての釈明

「クラシック音楽番組の担当者が専門家に取材したが、『本人が作曲していないのではないか』と疑わせるような情報はなかった」

「譜面を書くのは神聖な行為であるという佐村河内氏の強硬な反対で、そのシーンの撮影を断念。そのの代わりに曲の全体構成の設計図を見せられたので、『これだけ具体的なイメージがあるなら本人が作曲しているに違いない』と感じてしまった」

■本人の聴力が全くないわけではなかった問題についての釈明

「耳が聞こえないとする医師の診断書と、『聴覚障害』(2級)の障害者手帳を確認していた」

「とても流暢に話すので、『耳が聞こえないのに、あんなに話せるものなのか』と思ったが、手話通訳の人から、途中から失聴した人ははこれくらい話せると聞いたので『そうなのか』と納得していた」

■ディレクターは「知らなかった」

その上で、一部報道で「NHKスペシャルはフリーランスの持ち込み企画。このディレクターが佐村河内氏のウソを知った上で番組を作っていた」とされたことについて、以下のように否定した。

「フリーランスではなく3年半業務を委託していた契約ディレクター。本人は佐村河内氏のウソを知らなかったと、全面的に否定。他の撮影スタッフのヒアリングでもそのような事実は認められない。佐村河内氏に2月4日にNHK側が面会した際には、ゴーストライターを雇っていた件は認めたが『契約ディレクターはゴーストのことはまったく知らない』と筆談で述べていた」

■「事実と異なることを放送したと真摯に反省」

「とっておきサンデー」の中でNHKの松本浩司部長は、以上のような報告書の内容を紹介した上で、最後に再発防止策について次のように話した。

「今回の問題で視聴者の皆様から極めて厳しいご意見が寄せられ、深刻に受け止めております。聴力については通常は行わない障害者手帳や医師の診断書の確認を行いましたが、人道上の観点からそれ以上の確認はしませんでした。佐村河内氏の音楽的経歴については、もっと取材範囲を広げていれば虚偽を見抜けたかもしれません。社会的に一定の評価が定着している人を番組に取り上げるとき、経歴や評価についてどこまで確認を取るべきか、番組を制作するときの教訓として重くとらえています。

今回、事実と異なる内容を放送したことを真摯に受けとめ、反省しなければなりません。このような事態が起きうることを制作現場の全ての職員・スタッフがしっかりと認識し、チェックの精度を高めていく必要があります。NHKはさまざまな研修会や勉強会でこの問題を取り上げ、再発防止の取り組みを進めてまいります」

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