プーチン大統領のクリミア編入表明 各国の反応は

ロシアのプーチン大統領は18日、ウクライナ南部クリミアをロシアに編入する条約に署名した。大統領はウクライナの他の地域を占領する考えはないとも強調した。ウクライナ、米欧はこれに反発。米欧は、ロシアへの制裁を強化する構えで、来週の核安全保障サミット中に緊急日米欧主要7カ国(G7)会議を開き、対応を協議する。
Reuters

ロシアのプーチン大統領は18日、ウクライナ南部クリミアをロシアに編入する条約に署名した。大統領はウクライナの他の地域を占領する考えはないとも強調した。ウクライナ、米欧はこれに反発。米欧は、ロシアへの制裁を強化する構えで、来週の核安全保障サミット中に緊急日米欧主要7カ国(G7)会議を開き、対応を協議する。

プーチン大統領は、上下両院議会の合同会議で演説を行い、クリミアで16日実施されたロシアへの編入の是非を問う住民投票で、クリミアとロシアの再統合を望む声が圧倒的多数だったと指摘。「クリミアは、われわれすべてにとり歴史的な重要性を持つ」とした上で「国民の心のなかでは、クリミアはロシアといつも不可分の存在だったし、いまもそうだ」と語った。

議会は今後数日以内に、条約批准に向けた手続きを開始すると見られる。

こうした中、クリミアでは、シンフェロポリのウクライナ軍基地が何者かによる襲撃を受け、兵士1人が死亡した。ロシアが3週間前にクリミア半島を実効支配して以来、同地域での軍事衝突による初の死者となる。

ウクライナ当局は、襲撃者がロシア軍の制服を着ていたと主張。事態を受け軍に身を守るための武器使用を認めた。

<ロシアへの反発強まる>

ウクライナや西側諸国からはロシアへの批判が相次いだ。

ウクライナ危機打開に向けた欧州の主要な仲介役を務めたポーランドのトゥスク首相は、ロシアの動きは国際社会にとって容認できないと批判。英国は、ロシアとの軍事面の協力を停止した。

米国のバイデン副大統領は、ロシアと国境を接する北大西洋条約機構(NATO)加盟各国の安全保障に対するコミットメントを強調するとともに、ロシアがクリミアの編入手続きを進めた場合、欧州連合(EU)と米国はロシアに対して追加措置を講じるとの方針を示した。

米ホワイトハウスは、日米欧7カ国(G7)首脳が来週ハーグで開催される核安全保障サミットの合間に、ウクライナ情勢について協議することを明らかにした。

ウクライナ外務省は、クリミアをロシアに編入させる条約をウクライナとして認めないと表明。「クリミアがロシア連邦に編入されるとの合意書の署名、およびロシア大統領が行った演説は、法律にも民主主義にも常識にも合致しない」と言明した。

英国のキャメロン首相は「ロシアが、偽りの住民投票の結果に基づき、武力をもって国境を変更したことは全く受け入れられない」と批判し、プーチン大統領に「一段と深刻な結果を招く」と警告した。

フランスのオランド大統領は、プーチン大統領の条約署名を非難した上で、20─21日の欧州理事会では「強力かつ協調した対応」が必要になるとの認識を示した。

日本政府も、新投資協定や宇宙協定など三つの新たな日ロ協定の締結交渉開始凍結を含むロシアへの経済制裁を決定している。

<プーチン大統領 クリミア編入の正当性強調>

プーチン大統領は演説のなかで、コソボ問題を引き合いに出し、西側諸国はコソボがセルビアから独立するのは認めたが、クリミアには同等の権利がないと否定するのは偽善だと批判。「同じ物がきょうは黒く、あすは白いなどということはあり得ない」と語った。

またクリミア半島はロシアの聖地であると表現し、西側諸国との対立は望まないとしつつも、制裁を発動した西側諸国は一線を越え、無責任な行動に走ったと批判した。

ウクライナの暫定政権には「ネオナチ、ロシア嫌い、反ユダヤ主義者」が含まれていると非難した。

ドイツに対しては、1990年のドイツ再統一をロシアが支持したように、ドイツもまたロシア国民の再統一への願いを支持するものと確信していると述べた。中国については、ロシアを支持しているとして感謝の意を示した。

プーチン大統領は、ロシアとして、ウクライナの一層の分断を望んでいないと強調。「ロシアが脅威であると説いたり、他の地域もクリミアの二の舞になると吹聴する者たちを信用してはならない。われわれはウクライナの分断は望んでいないし、必要としてもいない」と語った。

NATOがウクライナに勢力を拡大する可能性について懸念を示し「(クリミアにおけるロシア黒海艦隊の拠点である)セバストポリでNATO水兵の出迎えを受けるなどということは、あってはならないことだ」と話した。[モスクワ 18日]

3月18日、ロシアのプーチン大統領は、同国はウクライナの分裂を望まないと表明、一段の支配地域拡大を望まない姿勢を示した。写真は大統領の演説を見る人。シンフェロポリのカフェで18日撮影(2014年 ロイター/Thomas Peter)

ウクライナのさらなる分裂は望まず=ロシア大統領

ロシアのプーチン大統領は18日、同国はウクライナの分裂を望まないと表明、一段の支配地域拡大を望まない姿勢を示した。[モスクワ 18日]

米独首脳が電話会談、ウクライナ情勢めぐり対応協議

オバマ米大統領とメルケル独首相は18日、電話会談し、ウクライナ情勢について協議した。

ドイツ首相府の声明によると、両首脳は、ウクライナ南部クリミアの独立宣言とロシアへの編入は「ウクライナの領土保全に対する受け入れ難い打撃」との見解で一致した。

また欧州連合(EU)および米国による制裁発動はロシアの行為が招いた結果だが、対話の窓は引き続き開かれている、としている。

ホワイトハウスのローズ大統領副補佐官はツイッターで、米独首脳は「引き続き連携してウクライナ情勢への対応を行う」ため協議したと述べた。

ロシアのプーチン大統領はこの日、ウクライナ南部クリミアをロシアに編入する条約に署名。一方で、他のウクライナ地域を占領する考えはないとも強調した。[ベルリン/ワシントン 18日]

3月18日、米国のバイデン副大統領は、ロシアがクリミアの編入手続きを進めた場合、EUと米国はロシアに対して、追加措置を講じる方針を明らかにした。写真は手を振る同氏。ワルシャワで18日撮影(2014年 ロイター/Kacper Pempel)

米国、バルト海の軍事演習強化を検討=バイデン副大統領

ポーランドを訪問中のバイデン米副大統領は18日、バルト海諸国での軍事演習強化を検討していることを明らかにした。

ロシアのウクライナ介入を受け、北大西洋条約機構(NATO)加盟各国の安全保障に対する米国のコミットメントを強調した格好。

副大統領はポーランドのトゥスク首相との会談後、ロシアがクリミアの編入手続きを進めた場合、欧州連合(EU)と米国がロシアに対して、追加措置を講じる方針を表明。

ポーランドを訪問中のエストニアのイルベス大統領と会談後に「地上・海上の演習・訓練を行うため、米軍の交代勤務を含めたバルト海地域での軍事協力について、ペースと規模を増やす多くの追加措置を検討している」と述べた。

政府高官は、今後数日中に新たな軍事訓練の詳細を発表する方針を示した。

バイデン副大統領は、ロシアのクリミア介入を同地域の収奪と批判。米国が今後、同盟強化に向けた追加策をとる考えも示した。また2018年までに米国がポーランドにミサイル防衛網を構築する計画をあらためて強調した。[ワルシャワ 18日]

3月18日、米ホワイトハウスのカーニー報道官は、クリミアのロシア編入姿勢を受けて、追加制裁を課す方針を明らかにした。写真はオバマ大統領。ワシントンで17日撮影(2014年 ロイター/Kevin Lamarque)

クリミアのロシア編入方針受け追加制裁準備=米ホワイトハウス

米ホワイトハウスのカーニー報道官は、ロシアのプーチン大統領がウクライナのクリミア地方を正式にロシアへ編入する姿勢を示したことを受けて、追加制裁を科す方針を明らかにした。

同報道官は記者会見で「住民投票や、ウクライナの一地方を併合する動きを受けた今回の行動が、米国や国際社会から決して認められることはない」と述べた。

米国が制裁対象者を拡大すべく準備を進めていることも明らかにした。同氏は「追加措置を予定している」と指摘。「ロシアが方向を変えなければ、われわれや世界中の友好国、同盟国、世界経済全般によって追加コストが課されることになる」と述べ、ロシアが方針を変更するまで、コストは増大し続けると警告した。

ただ、追加制裁の公表時期や他の詳細についての言及はなかった。[ワシントン 18日]

3月18日、ロシアのラブロフ外相(写真)は、ケリー米国務長官に対し、クリミア問題で西側諸国が発動した制裁は容認できないとの考えを伝えた。モスクワで8日撮影(2014年 ロイター/Sergei Karpukhin)

ロシア、クリミアめぐる西側の制裁容認できず=ラブロフ外相

ロシアのラブロフ外相は18日、ケリー米国務長官に対し、クリミア問題で西側諸国が発動した制裁は容認できないとの考えを伝えた。

ロシアのプーチン大統領がクリミア編入条約に署名したことを受け、両外相は電話会談を行った。

ラブロフ外相は「クリミア住民は国際法および国連憲章にのっとってみずから民主的な選択を行ったのであり、ロシアとしてその選択を受け入れるとともに尊重する」とした上で、「米、欧州連合(EU)による制裁は容認できず、その影響は免れないだろう」と語った。

サキ国務省報道官によると、ケリー国務長官は、クリミアの住民投票と同地域の編入が「法律違反」であり「容認できない」との政府の立場を繰り返した。[モスクワ/ワシントン 18日]

3月18日、クリミアに駐屯しているウクライナ軍が、ロシア軍による攻撃を受け、兵士1人が負傷した。写真はロシア軍兵士とみられる武装した男性。シンフェロポリ近郊のウクライナ軍基地前で14日撮影(2014年 ロイター/Vasily Fedosenko)

クリミア半島でウクライナ兵1人死亡、ロシア実効支配後初の死者

ウクライナ南部クリミア自治共和国で18日、首都シンフェロポリにあるウクライナ軍基地が何者かによる襲撃を受け、兵士1人が死亡した。ロシアが3週間前にクリミア半島を実効支配して以来、同地域で軍事衝突による初の死者が出た。

ウクライナ軍報道官ウラジスラフ・セレズノフ氏はロイターに対し、兵士1人が死亡、司令官が負傷したと述べた。

誰による攻撃かは不明しており、相手は完全装備で、顔を覆っていたと説明している。

兵士死亡のニュースを受け、ウクライナのヤツェニュク暫定首相は、ロシア軍により「政治的対立から軍事的対立」へと状況が変化したとの認識を示した。

首相は国防省での会議で「ロシア軍はウクライナ兵士を銃撃し始めた。これは時効のない戦争犯罪だ」と断じた。

また一段の対立を回避するため、国防相に対し、英、米、ロシアの国防相と緊急会議を開催するよう指示したことも明らかにした。ウクライナと英米ロの3カ国は1994年、ウクライナの現存する国境を尊重するとしたブダペスト覚書に調印している。

一方、トゥルチノフ大統領代行の報道官は、クリミア半島に駐屯するウクライナ軍兵士に対し、自衛のための武器使用を認める指令を出したと明らかにした。これまでは攻撃に対する武器使用を回避するよう指示してきたが、兵士死亡のニュースを受けて方針を転換した。[キエフ 18日]

Crimea Goes To The Polls In Crucial Referendum

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