ウクライナが東部奪還作戦、ロシア「最後の希望を破壊」と批判 大規模衝突の懸念も

ウクライナ暫定政権は、親ロシア派の武装勢力が占拠を続ける東部ドネツク州スラビャンスクの奪還を目指し、大規模な軍事作戦を開始した。ロシアは平和解決のための「最後の望み」が絶たれたとしており、今後、大規模衝突に発展する懸念がある。

ウクライナ暫定政権は5月2日、親ロシア派の武装勢力が占拠を続ける東部ドネツク州スラビャンスクの奪還を目指し、大規模な軍事作戦を開始した。親ロシア派も反撃し、死者も出ているという。

ウクライナの軍事演習開始について、ロシアは平和解決のための「最後の望み」が絶たれたとしており、今後、大規模衝突に発展する懸念がある。NHKニュースなどが報じている。

この作戦でウクライナ軍は、武装集団が占拠していた検問所のうち9か所を制圧しましたが、ヘリコプター2機が撃ち落とされ、兵士2人が死亡したということです。

また、これに関連してウクライナ軍は、4人を拘束したと発表しました。一方、親ロシア派の武装集団は、ロシアの国営通信社に対し、1人が死亡し1人がけがをしたと述べました。

(NHKニュース「ウクライナ東部で軍事作戦 死傷者も」より 2014/05/02 20:30)

■ロシア、平和解決の「最後の望み」絶たれたと非難

ウクライナを巡っては、4月17日にロシア、ウクライナのほか、アメリカ、ヨーロッパ連合(EU)も参加して行われた協議で、ウクライナでの暴力の即時停止を呼びかける共同声明を発表(ジュネーブ合意)。占拠された建物についても、全て所有者に返還される必要があるとされていた。

しかし、ウクライナ暫定政権は4月25日、ジュネーブ合意の履行状態を調査するため現地入りした欧州安全保障協力機構(OSCE)の監視団メンバーが、親ロシア派に拘束されたと発表。親ロシア派は、監視団にウクライナ当局のスパイが紛れ込んでいたとの報告を受け、拘束に至ったという。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は5月2日、今回のウクライナの軍事作戦を受け、OSCEの監視団メンバー拘束に対する「報復的行動」だと述べ、ジュネーブ合意を存続させる「最後の望み」を踏みにじったと非難。OSCEの監視団の解放に向けてロシアが派遣した特使とも、連絡が取れなくなっていることを公表した。

さらに、ロシア外務省はこの作戦で、「英語を話す外国人が攻撃に参加」したと批判する声明を発表。「外部からの干渉」は許せないとしている。

声明は「米国務省の許可がなければ、民間組織が海外に雇い兵を派遣できないことは、よく知られている」と指摘し、米国の雇い兵が攻撃に参加した可能性を強く示唆した。

(MSN産経ニュース『【ウクライナ情勢】「英語話す外国人が攻撃参加」 ロシア外務省が声明』より 2014/05/02 20:35)

■ウクライナ、徴兵制を開始

ウクライナのトゥルチノフ大統領代行は5月1日、徴兵制を復活する命令に署名。ロシアの軍事介入に備える措置だとされている。

トゥルチノフ氏は声明で、徴兵制復活の理由について「東部ドネツク、ルガンスク両州で親ロシア派による政府庁舎への攻撃や占拠がエスカレートしており、こうした政治的、社会的な状況がロシアの介入を招く恐れがある」とした。

(朝日新聞デジタル「対ロ備え、ウクライナの徴兵制復活 昨秋撤廃したばかり」より 2014/05/02 11:38)

ウクライナは2013年秋に、徴兵制から志願制に移行したばかりだった。MSN産経ニュースはこの変化について、ロシアがクリミアを併合したことで多くのウクライナ兵がロシア側に寝返り、ウクライナ軍は立て直しが必要だったためと報じている。

ロシアが併合したクリミア半島には約1万8千人のウクライナ将兵がいたが、多くがロシア側に寝返った上、海軍本部や艦船、海兵隊の拠点も失った。ロシアとの関係が改善する兆しは見えず、ウクライナ軍は早急な立て直しを迫られている。

(MSN産経ニュース「ウクライナが徴兵制復活 ロシアの脅威に対処、“寝返り将兵”続出で」より 2014/05/02 14:10)

■「大規模衝突になりかねない」と専門家

ロシア政府はこれまで、「ロシア系市民への攻撃はロシア自体に対する攻撃とみなす」などとして、ウクライナのロシア系住民に物理的危険があれば介入の用意があることを繰り返してきた

元自衛官で「ヒゲの隊長」の愛称で知られる自民党の佐藤正久参議院議員は、「大規模衝突になりかねない」とツイートしている。

関連記事

Separatists Tighten Control On East Ukraine

注目記事