プーチン大統領、編入後初のクリミア訪問 東部衝突では20人死亡との情報【ウクライナ情勢】

ロシアのプーチン大統領は9日、3月に編入したウクライナ南部のクリミアを訪れた。プーチン大統領が現地入りするのは編入後初めて。
Reuters

[セバストポリ 9日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は9日、3月に編入したウクライナ南部のクリミアを訪れた。プーチン大統領が現地入りするのは編入後初めて。旧ソ連の第2次大戦勝利を祝う式典に出席し、クリミア編入によってロシアは力を増したと言明した。

プーチン大統領のクリミア訪問について、北大西洋条約機構(NATO)は「不適切」と批判。ウクライナ政府も、緊張を高めるとして反発している。

そうしたなか、ウクライナ東部マリウポリでは、ウクライナ治安部隊が親ロシア派勢力と衝突し、約20人の死者が出ているとの情報が伝わっている。

同国東部ドネツク州やルガンスクでは、親ロシア派が11日に自治権拡大の是非を問う住民投票を実施すると表明している。プーチン大統領による延期の要請を退け、予定通り行う構えを見せている。

プーチン大統領は、モスクワで行われた軍事パレードに出席。その後クリミア入りし、黒海艦隊の拠点であるセバストポリで軍事パレードに出席した。

今年は、旧ソ連軍がナチス・ドイツからクリミア半島を奪還して70年の節目となる。

大統領は演説で「多くの仕事が残っているが、困難は克服することができる。なぜならわれわれは共にあり、一段と強くなったからだ」と主張した。

米国はプーチン大統領のクリミア入りを挑発行為と非難。ラスムセンNATO事務総長も「不適切」としたうえで、ロシアがウクライナ国境付近から軍部隊を撤収したとする主張にあらためて疑念を表明した。

欧州連合(EU)は、第2次世界大戦の祝典をクリミア編入を誇示する場として利用すべきでないと批判した。

ウクライナのヤツェニュク首相は首都キエフで行われた戦勝記念の礼拝後、「69年前、われわれはロシアと共にファシズムと戦い勝利した。歴史は繰り返すというが、異なった形で繰り返されることになる」と指摘。戦争中はロシアとウクライナが協力してドイツと戦ったのに対し、現在はドイツはウクライナを支援し、米国、英国も協力していると強調した。

現地からの報道によると、ウクライナ東部アゾフ海の湾口都市マリウポリでは、警察本部前で衝突が発生。激しい銃撃戦の模様や、装甲車が市中に設置されたバリケードを突破している映像が伝えられた。衝突の後、ウクライナ治安部隊はマリウポリから撤退したという。

ウクライナのアバコフ内相は、親ロシア派約20人が死亡したと発表した。ウクライナ議会のOleh Lyashko議員によると、戦闘で親ロシア派の8人が死亡。またドネツクの医療当局は3人が死亡、25人が負傷したとしている。

現場に居合わせた地元のカメラマンによると、警察本部からは炎が上がったという。

ロシアのラブロフ外相は同日、ケリー米国務長官と電話会談し、欧州安保協力機構(OSCE)の仲介によるウクライナ政府と親ロシア派の早期対話を要請。さらに、ウクライナ政府による親ロシア派に対する武力行使の停止を促すよう米政府に求めた。

ロシア政府は、11日に住民投票を実施するウクライナ東部の親ロシア派との直接的な関与はないと主張している。

また、EU外交筋は同日、対ロシア制裁の対象に15人相当の個人、およびクリミアに本拠を置く企業数社を加えることで合意した。11日の投票の行方を見極めた上で、12日に開く外相理事会で対ロシア追加制裁を最終的に決定する。

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