行方不明から7年 認知症の女性が夫と再会 保護した館林市は生活費を請求しない方針

群馬県館林市で保護されたものの身元のわからないまま介護施設で暮らし続けていた女性が5月12日、NHKの番組をきっかけで、夫と面会し、東京都台東区の67歳の女性であると確認された。奇しくもこの日は、夫婦の41回目の結婚記念日だったという
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認知症による徘徊が原因で7年間行方がわからなくなっていた女性が、夫と再会を果たした。

群馬県館林市で保護されたものの身元のわからないまま介護施設で暮らし続けていた女性が5月12日、NHKの番組がきっかけで、夫と面会し東京都台東区の67歳の女性であると確認された。奇しくもこの日は、夫婦の41回目の結婚記念日だったという。NHKニュースなどが報じた。

平成19年に、群馬県館林市で保護されたあと、身元が分からないまま7年間、介護施設で暮らし続けている女性について、11日にNHKスペシャルで放送したところ、身元に関する情報が相次いで寄せられました。これがきっかけとなり、夫が12日、館林市内の施設で面会し、女性は東京・浅草の柳田三重子さん(67)と確認されました。三重子さんは4年ほど前から寝たきりになっていて、7年ぶりに再会した際、夫の滋夫さんは三重子さんの名前を何度も呼びかけ、手を握っていました。

滋夫さんによりますと、三重子さんの行方が分からなくなった直後、警察に届け出たほか、自分たちでもチラシを作って地域に情報提供を呼びかけたものの、手がかりは得られなかったということです。

(NHKニュース「認知症の女性 7年ぶりに夫と再会」より 2014/05/12 18:46 )

朝日新聞デジタルによると、行方不明となっていた女性は、館林署に保護された当初、署員に「ヤナギダ・クミコ」と名乗っていたが、身につけていた下着には「ミエコ」と書かれてた。しかし、県警は、女性の保護について照会書を全国の警察に出す際に「下着にエミコと書かれていた」と誤って記し、女性の捜索願が出されていた浅草署の署員が気づくことはなかった。

■館林市、7年間の生活費は請求しない方針

館林市は16日、これまで7年間、市が支出した経費全額を女性やその家族に請求しない考えを明らかにした。「認知症に起因し、社会全体で考えるべき問題。人道的見地から、請求すべきでない」と判断し、特例措置を示した。毎日新聞が報じている。

市や入居していた介護施設などによると、女性は身元不明状態だったため、仮の名前で住民票が作成された。収入や資産がないものとして、生活費や介護費用は生活保護で賄われてきた。7年間の費用総額は1000万円以上とみられる。生活保護受給者に無申告の資産や年金があることが判明した場合、その分の保護費は返還を請求されるのが一般的。館林市は「認知症の人が増え続け、今回のことはこれからも起こりうる深刻な事例」として慎重に対応を検討していた。

市は、7年前に女性を保護した経緯について、「人命を守るのは当然の責務。人道的見地から施設入所措置をした」と総括したうえで、かかった経費を請求しない方針を決めた。全国的にも前例がないため、今後、女性の資力などを確認し、国や県と協議したうえで正式に決定する。

(毎日新聞「認知症:女性7年間不明…館林市、生活費請求せず」より 2014/05/17 10:40)

■行方不明となる認知症の人は年間約1万人

65歳以上の高齢者のうち認知症の人は2012年の時点で462万人と推計されている。予備群である「軽度認知障害」(MCI)は約400万人とみられ、合計すると800万人を超える。徘徊で行方不明となるトラブルも全国で頻発しており、2012年には全国で述べ1万人近い人が行方不明となった。

徘徊(はいかい)で行方不明となるトラブルは全国で頻発している。警察庁によると、認知症が原因で徘徊して、行方不明者として家族らが警察に届け出た人の数は、12年には全国で延べ9607人に上った。多くは無事見つかっているが、居場所がわかった時に亡くなっていた人も359人いた。翌13年末時点でも行方不明のままなのは約180人だ。

(朝日新聞デジタル「行方不明7年、妻と会えた 認知症で徘徊、身元わからず」2014/05/13 22:56)

■Twitterの声

この女性のような事例は今後も増えると見られ、館林市が女性の生活費を請求しない考えを示したことについて、Twitterでは様々な意見が寄せられた。「面倒を見きれなくなった認知症の人を捨てる人が出てくるのでは」といった懸念の声や、入所待ちが相次いでいる特別養護老人ホーム(特養)に入所できずにいた人はどう思うだろう、といった声もあがった。

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