「火星の有人探査」日本も参加へ なぜ人類は赤い惑星を目指すのか?

文科省は、国際協力による火星への有人探査を目標に掲げる方針を明らかにした。宇宙探査のあり方を検討する有識者会合「国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会」で、5月30日に示した。
NASA

世界各国が2030年以降の実現を目指す「火星の有人探査」に、日本も名乗りを上げることになった。アメリカのオバマ大統領は2030年代半ばまでに火星の有人探査をすることを表明済み。中国は2050年代に人類を火星に送る方針を公表している。それに比べると、日本の取り組みはまだ曖昧な状態だが、遅ればせながら手を挙げることになった。人類はなぜ火星を目指すのか?その理由をまとめてみた。

■なぜ火星探査が必要なのか?

人類が地球外の天体に行くのは、アポロ計画で人類が月に最後に到達した1972年以来となる。火星までの直線距離は最短でも約5500万キロで、月までの約38万キロの100倍以上。往復には約3年を費やすと言われている。宇宙飛行士は長旅の間、強い宇宙放射線にさらされることになり生命も危ぶまれる。

最大の懸案は発がんリスクを高める宇宙放射線だ。火星飛行では地球を取り囲む磁気圏を飛び出すため、エネルギーが強い銀河宇宙線を大量に浴び続ける。従来の宇宙船の壁では十分に遮蔽できない。NASAは5月、火星探査車「キュリオシティー」の測定から、飛行士が浴びる放射線量は許容量を超える可能性があることを明らかにした。

(MSN産経ニュース「2030年火星への旅、NASAが新たな工程表 月面や小惑星探索など有人飛行へ準備着々」2013/09/30 08:32)

それだけの困難を乗り越えて実施する目的の一つには、火星がテラフォーミング(惑星地球化計画)しやすい惑星だということがある。火星は人類が住める環境に造りかえられる可能性があると、アメリカの天文学者、故カール・セーガン博士は指摘していた。

火星の有人探査計画の観点から、国際宇宙ステーションは、それが長期(1~2年)有人宇宙滞在の研究のためだとすれば尚更、十分納得のいく話である。長期的にみれば、火星は人類が他の天体で自給自足による共同社会を建設するための最高の場所である。同時に、太陽系の中で最も地球環境に改造し易い天体でもある。

火星は、我々の孫やひ孫達に前途有為の未来という希望に満ちた夢をもたらしてくれる。この実現によってこそ、アメリカ人の節度、想像力および持続力を示し、冷戦の影を地球から排除する機会をもたらすことができる。

(THE PLANETARY REPORT 1996年9・10月号「なぜ火星なのか」)

■文科省が意欲「挑戦する意義があるフロンティア」

今回、文部科学省は、国際協力による火星への有人探査を目標に掲げる方針を明らかにした。宇宙探査のあり方を検討する有識者会合「国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会」で、5月30日に示した。同委員会は7月までに報告書をまとめる予定。2030年代後半の実現をめざしている。毎日新聞などが報じた。

文科省は30日、国際協力で進める宇宙探査の長期目標について、「火星への有人探査」を掲げた案を公表した。火星には長期滞在や資源利用などの可能性があり、挑戦する意義があるフロンティアだとしている。2030年代後半の実現を想定している。

(毎日新聞「有人火星探査:2030年代後半に実現を…日本も長期目標」2014/05/30 19:25)

火星の有人探査をめぐって2013年8月、日本を初めとする世界の14機関が加盟する国際宇宙探査協働グループ(ISECG)が、2020年代に月周辺の有人探査、2030年以降に有人火星探査を実施する行程表(下図)を策定している。

■火星探査船に日本人は乗るか?

日本は、国際宇宙探査フォーラムを2016年にも日本で開く予定。国際プロジェクトとして火星有人探査を呼びかけることを目指す。しかし巨額の費用をどう分担するか、日本人宇宙飛行士を探査機に乗せるか否かといった検討はまだこれからだという。

文科省は、16年にも日本で開かれる閣僚級会合で、国際プロジェクトとして有人探査を目指すことを提案する。各国に参加を呼びかけ、合意に向けて議論を先導したいとしている。

しかし、実現に向けた技術開発や費用などについて、参加国の役割分担の議論が必要だ。日本人飛行士を探査機に乗せるかなど、計画にどうかかわるのかの検討もこれからだ。

朝日新聞デジタル「有人火星探査で各国に呼びかけへ 文科省」2014/05/30 23:53)

冷戦を終えて、国際協力の下に人類は火星に到達できるのだろうか。

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