アメリカの新しい温室効果ガス削減基準は州まかせ 目標達成の可能性は?

アメリカ環境保護局(EPA)が6月2日に発表した既設発電所に対するCO2排出量の新基準によって、温室効果ガス排出量の削減のために対策を立てる責任は、各州に課せられることになる。
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アメリカ環境保護局(EPA)が6月2日に発表した既設発電所に対するCO2排出量の新基準によって、温室効果ガス排出量の削減のために対策を立てる責任は、各州に課せられることになる。

環境保護局は2030年までに、発電所からの排出量を2005年の基準から30%削減することを求めている。各州に課せられた目標は、現在の排出量と潜在的な削減可能量を産出して考え出されている。各州は個別の基準を達成するために、さらに高いレベルの管理を求められる。

会見を行うアメリカ環境保護局(EPA)ジーナ・マッカーシー長官

「すべては州の問題だ」と、アメリカの環境NPO「エンバイロメント・アメリカ」のワシントン事務所長アンナ・オーリリオは述べている。

各州が発電所の設備更新や、天然ガスへの燃料切り替えなどを行うことで達成可能だという。また、家庭や企業のエネルギー効率を高めたり、再生可能エネルギーからの発電を増やしたりすることなどで目標到達を図ることもできる。ある環境局高官は取材陣に対し「各州はどうやって目標を達成するか、最終的に選択するだろう」と述べた。

発表された基準は、草案段階だ。120日間のパブリック・コメント募集を経て、2015年6月にならないと確定しない。2016年6月までに、各州は計画を策定しないといけない。

30%という数字はアメリカ全州の平均値だ。ある州はもっと高い削減を期待されている一方、別の州の削減目標はさほど高くない。

「各州がすでにどういう取り組みをしてきたのか、私たちは多くの項目を調査してきた」と当局者は述べている。

たとえば、ワシントン州には石炭火力発電所が1基しかなく、2030年までに停止する予定だ。州の目標にはこれを反映している。AP通信によると、ニューヨーク州は州ごとの削減目標としては最も高い、44%を課されている。しかしこの数年でかなり改善されたため、目標達成のためにすべきことはさほど多くない。

発電に要する燃料の多くを石炭に依存している州は、削減目標が低くなる。APが伝えた削減率によると、ウエストバージニアとワイオミング両州の削減目標はわずか19%で、ケンタッキー州は18%、オハイオ州は28%だ。

バーモント州には石油火力発電所がないため、この原則が適用されなかった。同じように、ワシントンDCには首都石炭火力発電所(CPP)があり、上下両院議会の空調を担っているが、この発電所は新たな基準に該当する発電量に届かない。

環境保護局の計画では2030年までに、石炭はアメリカ全体でまだ発電全体の31%を占める。そして天然ガスが32%、再生可能エネルギー9%と担当者は解説する。天然ガスの使用増加はすでに、2005年以降の発電部門からおよそ13%、排出量が削減されている。目標はまだ道半ばだ。

ジョージタウン気候センター作成のマップによると、各州は排出量削減を進めてきた。

ジョージタウン気候センター事務局長のビッキー・アロヨは「各州はスタートラインがそもそも違う」と言う。「環境局は現時点での到達点から始めることと、州自身に有利な計画を立てることを認めた」

環境関係者の間からは、各州が環境保護局の求める30%より多く削減することを期待する声もある。

「2030年は遠い先のことだ」。次世代気候アメリカ研究所のダン・ラシュドフCOOは言う。「技術は発展し続けるし、我々は2030年までにもっとたくさんのことができる」

しかし、計画の策定を各州に任せることで、いくつかの州、特に知事や議会が環境保護局を支持していない州は、計画を策定しない可能性がある。ノースカロライナ州テキサス州は環境保護局への訴訟を抱えているし、14の州は、今回の決定に先立って、温室効果ガス排出が健康を害するとの結論を不服として提訴し、敗訴した

オハイオ州の州議会議員は、すでに同州が環境保護局の規制を阻止すると明言しているし、リック・ペリーテキサス州知事は声明で、この基準が「数多くのアメリカ人を雇用するエネルギー供給者、家庭と国民の経済成長への、もっとも直接的な暴挙だ」と批判した

環境保護局の担当者は、この規制が、必要な排出削減をどうやって決めるのか、権限の多くを州に委譲していると話す。

担当者は「私たちは、各州がそれぞれの計画を進めてほしい。各州は頑張ってくれるだろうと確信している」

しかし、この担当者はさらに、環境保護局は各州に対して今回の決定のもととなる大気浄化法に従わせることになると強調した。

「最終的に、もしある州が計画を策定しなかったとき、大気浄化法は環境保護局が従わせることができることを定めている。しかしその状態にはほど遠いし、そうなる前に、各州としっかり対話していく」

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