アメリカの女性上級職が低評価を受ける意外な理由(調査結果)

企業大国アメリカでは、人材の多様性(ダイバーシティ)を尊重すると明らかに冷ややかな目で見られる――白人男性以外は。
NEW YORK, NY - MAY 07: Yahoo! CEO, Marissa Mayer speaks at TechCrunch Disrupt NY 2014 - Day 3 on May 7, 2014 in New York City. (Photo by Brian Ach/Getty Images for TechCrunch)
NEW YORK, NY - MAY 07: Yahoo! CEO, Marissa Mayer speaks at TechCrunch Disrupt NY 2014 - Day 3 on May 7, 2014 in New York City. (Photo by Brian Ach/Getty Images for TechCrunch)
Brian Ach via Getty Images

■アメリカでは、多様性を認める女性やマイノリティは出世できない?

企業大国アメリカでは、人材の多様性(ダイバーシティ)を尊重すると明らかに冷ややかな目で見られる――白人男性以外は。

企業で人材の多様性を推進する女性やマイノリティの上級職は、経営陣や同僚から比較的低い評価を受けていることがコロラド大学とテキサス大学の研究によって新たに報告された

この論文は2つの調査に基づいている。はじめに、上級職362名の業績評価について調査を行った。人材の多様性を認める価値観を持つ女性やマイノリティの従業員、つまり文化的背景の違いを理解し、背景が異なる従業員を管理する能力があると評価された人は、そうでない女性およびマイノリティの同僚と比較して点数が低かった。

白人男性に関しては、同様の価値観を持っていても、業績評価にあまり影響はない。

しかしこの実験だけでは、人材の多様性を認めたら業績評価が下がる、という証明にはならない。研究チームはもう一つの調査を行った。この調査では、395名の学生に人事担当が数名の採用候補者を選定するシーンを俳優たちが演じる動画を見せた。

学生たちは、女性やマイノリティの人事担当が非白人の人材を採用しようとすると、否定的な反応をみせた。ある女子学生は、女性の人事担当が多様性を重んじて女性を採用する場面を見て顔をしかめていたと、本研究の筆頭著者でコロラド大学リーズ・スクール・オブ・ビジネスのデビッド・ヘックマン経営学教授は言う。

「彼女たちは『これはひどい。この人事担当は女性なのに、女性には能力がなくて自分たちでは何もできないみたいに扱っている。結果的に私たち女性全員を貶めているわ』という反応を見せていた」とヘックマン教授は言う。

一方で、学生たちは人事担当が白人男性を採用すると肯定的な反応をみせたという。特に、女性や非白人の人事担当が白人男性を推すと、その傾向はより顕著であった。

このような反応の根底には、女性やマイノリティに対する否定的な固定観念があると研究者たちは示唆している。

女性やマイノリティが、白人男性を評価すれば受け入れられる。反対に、女性やマイノリティ同士が認め合うと、自分たちに都合よく「えこひいき」していると誤解されてしまう。

■ 人材の多様性を尊重したニューヨーク・タイムズの女性編集長はクビに

ヘックマン教授は、Yahoo!の女性CEOマリッサ・メイヤー氏と、最近解雇されたニューヨーク・タイムズの元女性編集主幹ジル・エイブラムソン氏が対照的な運命をたどったことが、教授が指摘する現象が現実世界で起きている事例ではないかと考えている。

メイヤー氏は、フェミニズムと距離を置いている。多くの大手テクノロジー企業がそうであるように、Yahoo!も人材の多様性に関しては取り組みが不十分である。女性の上級幹部率はわずか23%、全従業員の女性が占める割合は37%しかない。黒人およびヒスパニック系の従業員がヤフー全体の人員に占める割合はわずか6%である。

一方、エイブラムソン氏がニューヨーク・タイムズの重役の半数を女性にしたことは、最大の功績の一つである。

「マリッサ・メイヤーには3億ドルの価値が与えられた。しかし、ジル・エイブラムソンは首を切られた」とヘックマン教授は言う。

これは、単純化しすぎているかもしれない。ニューヨーク・タイムズは、最終的にエイブラムソンの後任に黒人のディーン・バケー氏を充てた。しかし、企業のトップに立つ女性やマイノリティは、他の人を出世させるよりも、多様性を形だけのものにして自分を優先させた方が利益を得ていることが研究から見てとれる。

企業の上級職に多様性を持たせることについては、問題を本質的に再構築する必要があるとヘックマン教授は指摘する。言葉だけで多様性を強調するよりも、教授は企業が「人口統計学的に寛大な」リーダーを登用することが好ましいと言う。言い換えれば、自分たちとは異なる人材を昇進させる、そして採用するという姿勢が重要なのだ。

「多様性という言葉にはバイアスがかかっている。『あなたは非白人や女性を登用するのが好きなんでしょ』という本音の婉曲表現として使われている」と、ヘックマン教授は述べている。

ヘックマン教授と研究チームは、企業で多様性を促進する役を白人男性に務めさせることを提唱している。多くの企業で「CDO (Chief Diversity Officer、最高多様性責任者)」などの役職が設けられているが、その役職に就くのは女性やマイノリティばかりだ。これは結局、彼らに対する否定的な固定観念を強化することに他ならない。「フォーチュン」誌に掲載された500の大企業のうち、CDOがいる企業は60%にのぼるが、その内訳は65%が女性で、37%がアフリカ系アメリカ人であると2012年のウォール・ストリート・ジャーナルが報告している。

「企業で多様性を推進する部署はぼぼ全て非白人や女性だが、これでは多様性からかけ離れており、真剣に受け止めてもらえない。白人男性が自分の都合で人材の多様性を推進していたとしても、誰も文句を言わないだろう」

English Translated by Gengo]

JFK with Caroline on the Honey Fitz, 1963

キャロライン・ケネディ氏の写真集

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