吉田調書「あのおっさん、アンフェア」 菅直人元首相に強い憤り

東日本大震災発生時に福島第一原子力発電所で所長として対処にあたった吉田昌郎氏が、菅直人首相(当時)に強い憤りを覚えていたことがわかった。
時事通信社

東日本大震災発生時に福島第一原子力発電所で所長として対処にあたった吉田昌郎氏(2013年7月9日死去)は、菅直人首相(当時)が現場を混乱させたとして、菅氏に強い憤りを覚えていたことがわかった。

吉田氏は菅直人元首相らの「事故発生当時、東電が福島第一原発から全面撤退しようとしていた」とする主張を、強く否定したという。吉田氏が政府事故調の調べに対して答えた「聴取結果書」(吉田調書)に記された内容として、MSN産経ニュースが8月18日、報じた。

吉田氏は聴取担当者の「例えば、(東電)本店から、全員逃げろとか、そういう話は」との質問に「全くない」と明確に否定した。細野豪志首相補佐官(当時)に事前に電話し「(事務関係者ら)関係ない人は退避させる必要があると私は考えています。今、そういう準備もしています」と話したことも明かした。

特に、東電の全面撤退を疑い、15日早朝に東電本店に乗り込んで「撤退したら東電は百パーセント潰れる」と怒鳴った菅氏に対する評価は手厳しい。吉田氏は「『撤退』みたいな言葉は、菅氏が言ったのか、誰が言ったのか知りませんけれども、そんな言葉を使うわけがない」などと、菅氏を批判している。

(MSN産経ニュース『【吉田調書】吉田所長、「全面撤退」明確に否定 福島第1原発事故』より 2014/08/18 05:00)

吉田所長への聴取は、2011年7月22日から11月6日にかけ、13回にわたって行われた。聴取時間は29時間16分(休憩1時間8分を含む)。その内容が書かれた吉田調書はA4判で約400ページにも及ぶ。

吉田所長への聴取が行われていた最中の9月2日、菅元首相は内閣総理大臣を辞任。その3日後の9月5日、東電の全面撤退を自分が止めたとする菅元首相の発言が朝日新聞の朝刊で報じられた。

《朝日新聞社インタビュー》平成23年9月5日 (菅総理)

- 東電が撤退するという話があったのは本当かを問われ -

「経産大臣から午前3時ごろ、東電から撤退したいという話があった。撤退したらどうなるのか。放置すれば全部がメルトダウンし、チェルノブイリどころではなくなる。私の頭に『撤退』という文字はなかった。命がけでどうやって抑えこめるかどうかだった」

(東京電力「撤退問題に関する官邸関係者の発言」より 2012/06/20)

この発言に対して吉田氏は、菅元首相を「おっさん」と呼びながら、次のように聴取に答えていている。

政府事故調査・検証委員会の平成23年11月6日の聴取では、「菅さんが自分が東電が逃げるのを止めたんだみたいな(ことを言っていたが)」と聞かれてこう答えている。

「(首相を)辞めた途端に。あのおっさんがそんなのを発言する権利があるんですか」「あのおっさんだって事故調の調査対象でしょう。辞めて、自分だけの考えをテレビで言うというのはアンフェアも限りない」

(MSN産経ニュース『【吉田調書】「あのおっさんに発言する権利があるんですか」 吉田所長、菅元首相に強い憤り』より 2014/)

なお、菅元首相は2011年5月2日の参議院予算委員会で「ある段階で経産大臣の方から、どうも東電がいろいろな状況で撤退を考えているようだということが私に伝えられたものですから、社長をお招きをしてどうなんだと言ったら、いやいや、そういうつもりはないけれどもという話でありました」と述べており、東電側から全面撤退の話が出ていないことを明かしていた。

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