中国共産党の指導部が、人口増加に歯止めをかける手段として長いこと称賛してきた「一人っ子政策」。だが、同政策が強制堕胎や幼児殺害、児童売買の温床となっているとの批判の声も上がっている。
中国は世界最大となる約14億人の人口を抱える。同国によれば、1980年以降、一人っ子政策により4億人の誕生が抑制されたことで、食料不足に陥るのを防ぎ、貧困家庭を救い出すことができたという。
一人っ子政策を批判する人たちは、同政策がわがままな世代を生み出し、将来は親の世話をする男子の継承を重んじるという文化的風潮を助長したと主張。これにより、一人っ子政策のもとで、多くの中国人が確実に男児を望むようになったと批判している。
「親は一度のチャンスにすべてを賭ける」。こう表現するのは1980年生まれのHuang Zhengさんだ。「この世代は過大なプレッシャーという重荷を背負わされている。でも、皆が同じ状況なので、もう当たり前になっている」。
一人っ子政策に違反した場合、罰金を支払らなければならない。中には、中絶を強要される場合もある。中国当局は今年1月、同政策に違反したとして、映画監督・張芸謀(チャン・イーモウ)氏に対し、750万元(約1億3500万円)の罰金を科した。
これまでは、都市部に住む夫婦がともに一人っ子だった場合に2人目の子供をもうけることが許されていた。また、地方では、最初の子供が女児だった場合に2人目が許されていた。
しかし中国は昨年、出生率を向上し、急速に高齢化が進む中国社会の経済的負担を緩和する計画の一環として方針転換を打ち出した。都市部の夫婦の場合、今後はどちらかが一人っ子だった場合に2人目を持つことが許されるようになった。
<二重の責任>
一人っ子の多くが、自分たちを溺愛する祖父母はもちろんのこと、親の期待に応えなくてはならないというプレッシャーがあると話す。
1985年生まれのZhang Bowenさんは、現代の中国で一人っ子として生まれ、生きていくには二重の責任があるという。独りで、妻と子供、そして両親の生活を背負わなければならない。「きょうだいがいれば、親が年を取ったときに責任を分かち合えるからいいね」とZhangさんは語った。
カメラを向けると、とても内気な子もいれば、すぐにポーズをとる子もいる。すぐさま自発的にカンフーの動きをし始めた2008年生まれだという男の子は、「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、弟も妹もいらない。家の中をめちゃくちゃにしてほしくないから」と話した。
また、2009年生まれの女の子は、居間におもちゃを積み上げ、家族のスペースを陣取っている。きょうだいが欲しいかと聞かれると、「欲しくない。お母さんがかわいがるから」と答えた。
中国には労働人口を補い、高齢化する人口に要するコストを担うベビーブームが喫緊に必要だと、多くの専門家は指摘する。中国国家統計局によると、同国の労働人口は過去2年で約600万人減少し、9億2000万人となった。一方、高齢者の人口は2030年までに3億6000万人に達する見通しだという。
だが、一人っ子政策が緩和されても、2人目の子供を持つには都市部の生活は高過ぎると感じる夫婦がいるかもしれないと、家族計画の専門家はみている[北京 6日 ロイター]。
(原文:Carlos Barria、翻訳:伊藤典子、編集:下郡美紀)