世界的に人気の玩具メーカーであるレゴ社は、世論の要求に屈して、大手石油会社ロイヤル・ダッチ・シェル(以下、シェル)との50年にわたる提携を終えることになった。大きな原因となったのは、グリーンピース等が展開してきた「北極圏の環境保護に関するキャンペーン」だ。
シェルは2012年夏、アラスカ沖で、資源探査のための掘削を開始した。しかし同年末に、アラスカ湾を曳航中だった石油掘削リグ「クルック」が座礁事故を起こし、しばらく掘削を延期していた。同社は2015年から再び北極圏での採掘を試みる意向を表明した(グリーンピース側は、「北極圏での石油採掘はリスクが大きく、もしメキシコ湾の事故のような原油の流出事故が起これば、厳しい環境下での復旧作業はほぼ不可能となり、生態系への影響は甚大と予測される」と批判している)。
冒頭の動画は、キャンペーンの一環としてグリーンピースが公開したビデオ「Everything is not awesome」。北極圏で原油流出による自然破壊が起こる恐れをレゴを使って描いたこのビデオは、インターネットを通じて急速に広まり、これを見た100万人もの人々が、レゴ社に対してシェルとの販売促進提携をやめるよう要求する請願書に署名した。
グリーンピースが3カ月にわたって繰り広げたキャンペーンは、レゴ社とシェルの50年に及ぶ提携と、1億1000万ドル規模の販売促進提携契約を終了させ、シェルに打撃を与えることを狙いとしていた(両社による共同プロモーションは、車でシェルの給油所を訪れると、子供たちが、シェルのタンクローリーや給油所、シェルがスポンサーとなっているレーシングカーなどからなるレゴセットを集められるというもので、世界各地で展開されている)。
グリーンピースは冒頭の動画の最後で、「シェルは子供たちのイマジネーションを汚染しています。レゴに、シェルとの提携をやめるよう訴えましょう」と主張している。グリーンピースはこのビデオのほか、シェルの給油所や、各地の観光名所を背景に、レゴのミニフィギュアを使った「小さな抗議活動」も行ってきた。
「シェルを止めろ」「北極を守れ」。グリーンピースの活動家が抗議のプラカードを取り付けた、レゴのミニフィギュアたち。
こうしたキャンペーンの結果、レゴ社は10月8日、シェルとの販売促進提携契約を今後は更新しないと発表した。
レゴ社は契約終了を発表した声明で、レゴ社のヨアン・ヴィー・クヌッドストープ最高経営責任者(CEO)は、同社はグリーンピースの戦術を支持していないし、グリーンピースはレゴのブランドを巻き込むべきではなかったと主張した。だが同時に、「こうした状況が大きく変わらないとすれば、現在のシェルとの販売促進提携契約が終了した後、さらに契約を更新するつもりはない」と明確にした。
イギリスにあるレゴのテーマパーク「レゴランド」のビッグベンの前で、シェルに対する抗議活動を行うミニフィギュア。
化石燃料業界に背を向ける世界的有名企業は増える傾向にある。イギリスの高級スーパーマーケット・チェーン「ウェイトローズ」(Waitrose)は、2012年にシェルとの提携を終えることを発表した。また、2014年9月には、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックの各社が、気候変動法案に反対している保守派の圧力団体「ALEC」(アメリカ立法交流評議会)から脱退、あるいは支援を打ち切ると明言している。
北極点周辺を自然保護区として、石油採掘や大規模漁業から保護するべきだと求める運動は、ここ2年の間に世界的な広がりを見せている。世界中で600万人を超える人々が参加しており、グリーンピースの「Arctic Declaration」(北極宣言)には、デズモンド・ツツ大司教やエマ・トンプソン、ポール・マッカートニーら、大きな影響力を持つ著名人1000人以上が署名した。
北極グマの着ぐるみでグリーンピースのポスターを持つ人。
また、9月19日には、国連の潘基文事務総長が北極圏保護を訴える活動家たちと会い、世界中から寄せられた請願書を受け取った。この席で潘事務総長は、北極圏保護の問題を討議する国際サミットの招集を検討すると発言した。
シェルの広報担当者は、次のように述べている。「世界的に増え続けるエネルギーのニーズを満たす方法について、自由かつ率直な意見を交換する個人や組織の権利をわが社は尊重しています(略)その上で、そうした表明が合法的な形で行われるよう、また本人や他の人々を危険にさらすことがない方法で行われるよう、望んでいます」
文末のスライドショーでは、グリーンピースが制作した動画からさまざまなシーンを紹介している。
[Charlotte Meredith(English) 日本語版:水書健司、合原弘子/ガリレオ]
【関連記事】
ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています。
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー