【東日本大震災】「モリウミアス」 被災地の廃校が農漁業版キッザニアに 2015年夏オープン

東日本大震災で壊滅状態になった過疎の町で、廃校になった小学校を拠点に、農漁業や自然の中での暮らしを都会の子供たちに体験させ、人の交流を通じて地域の産業や共同体を再活性化させようとの取り組みが始まる。

東日本大震災で壊滅状態になった過疎の町で2015年夏、県外の人々と地元が手を取り合い、町を再生させる試みが動き出す。廃校になった小学校を拠点に、農漁業や自然の中での暮らしを都会の子供たちに体験させ、人の交流を通じて地域の産業や共同体を再活性化させようとの取り組みだ。

着工前の旧桑浜小学校 (c)sweet treat 311

宮城県石巻市の旧雄勝町(おがつちょう)にある旧町立桑浜小学校を改修し、60人を収容できる宿泊施設と、62人が利用できるレストランに生まれ変わらせる。豊かな自然と未来への希望を込め「MORIUMIUS」(モリウミアス、「森と海と明日へ」から)と命名した。2015年夏の本格オープンを目指している。

立花貴・代表理事(左)と油井元太郎理事 (c)Taichiro Yoshino

運営するのは、公益社団法人「sweet treat 311」。元伊藤忠商事で石巻の漁業振興などに取り組んできた立花貴・代表理事と、疑似職業体験のテーマパーク「キッザニア」の日本展開を担当した油井元太郎理事らが中心になっている。

(c)sweet treat 311

震災前に約4300人が住んでいた雄勝地区は、震災による津波で海沿いを中心に建物の約8割が流された。人口流出と高齢化も進み、現在は人口約1300人のうち、65%以上が高齢者という。油井氏は「今後20~30年、雄勝が元気であり続けるためには、教育を通じて町を再生していく必要がある。世界の人も呼び込み、地域の人と交流するハブのような役割を果たしていきたい」と希望を語る。

(c)sweet treat 311

桑浜小学校は1923年に開校し、長らく地域の共同体の中核施設だったが、2001年に廃校になった。高台にあったため震災では大きな被害がなかった。震災直後に雄勝に炊き出し支援などで入り、そのまま雄勝に残った立花氏らが、築90年の木造校舎を再び地域の核として蘇らせようと、同校卒業生らのボランティアと協力して、2013年から建物の泥を搔き出し、床や壁、柱などを張り替える作業を続けてきた。

「モリウミアス」完成予想図 (c)sweet treat 311

地元名産の「雄勝硯(すずり)」で屋根を葺くなど、新たな施設のデザインは東京大隈研吾研究室やイギリス・スタンフォード大学などのワークショップで決まった。これまで携わったボランティアは約2500人。国家公務員や民間企業などが研修として参加している。家族を連れてボランティアに参加したエバーノート日本法人会長の外村仁氏は「日本を離れていると、日本の良さを子供たちに体験させたくなる。震災を奇跡的に免れた漁師さんの話を聞き、お金を出しても買えない体験ができたと感じた」と話した。

(c)sweet treat 311

(c)sweet treat 311

キャンプのほか、農漁業や料理の体験プログラムなど、自然や一次産業を子供に体験させるプログラムを用意する。体験プログラムの講師や、地元の食材を提供するレストランなどで、地元住民に雇用を提供できる見込み。初年度は3500人の宿泊を目標にしている。開業までの事業費は約2億円と見積もり、うちインターネットでクラウドファンディングを実施し、約1700万円を調達した。立花代表理事は「宿泊費と、体験プログラム料金で採算はまかなえると見込んでいる。レストランは予約制だが、宿泊客以外にも提供する」と話す。

施設は2015年2月ごろ完成する予定。今後、試食会や内覧会を順次開いていく。

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