2018年冬季オリンピック、平昌・長野で分散開催? IOCが改革案承認

原則1国1都市開催だったオリンピックで、別の国で一部競技を開催することが可能になった。この改革案によって、2018年に韓国・平昌(ピョンチャン)で開催される冬季オリンピックの一部を、日本で開催する案が浮上している。
Sungjin Kim via Getty Images

原則1国1都市開催だったオリンピックで、別の国で一部競技を開催することが可能になった。

モナコで開かれている国際オリンピック委員会(IOC)臨時総会で12月8日、40項目からなる改革案「アジェンダ2020」が1項目ずつ審議され、例外的なケースとして「地理的、持続可能性の理由がある場合に、開催国以外での競技実施を認める」とした案が承認された

規模が拡大し、開催コストや大会後の施設維持などが負担になっていることに配慮したもので、出席した96人の委員全員が賛成した。

この改革案によって、2018年に韓国・平昌(ピョンチャン)で開催される冬季オリンピックの一部を、日本で開催する案が浮上している

IOCのバッハ会長は12月6日の常任理事会後に記者会見で、2018年冬季の韓国・平昌と、2020年夏季の東京から適用したい考えを示し、「(2015年の)1、2月に両組織委員会の計画を見直し、アジェンダ2020が両者にどういった意味を持つのか」確認すると述べた

ロイターは、リュージュ、スケルトン、ボブスレーなど、そり競技を日本で開催する可能性を、平昌の組織委員会が協議していると報じた

韓国・平昌の関係者は反発している。13会場のうち、新設する6会場はすでに着工しており、中央日報は改革案の承認前に「外圧に揺れている」との書き出しで以下のように報じている。

シン・ムチョル平昌オリンピック組織委員会広報局長は「アジェンダ2020を平昌五輪に適用するのは非常に難しい」とし「特に長野でそり種目を行うなどの案は全く検討されたことがない。平昌五輪はすべての競技場が工事中であり、事後活用計画も立てた状態」と述べた。平昌五輪を分散開催する案がIOC総会を通過しても平昌組織委との協議手続きが残っている。平昌組織委は「分散開催を受け入れることはできない」という立場をすでに決めた。

そりが抜けた平昌?…IOC委員長「一部種目の日本開催を論議」 | Joongang Ilbo | 中央日報より 2014/12/08 07:52)

一方で最大手紙の朝鮮日報は、財政難から「検討に値する」としている。

それでも平昌と東京が一部種目を互いに分散して開催し、費用を削減する現実的な方策がないかあらためて検討する価値はあるだろう。そのためには可能な限り多くの国民から意見を聞くべきだ。オリンピックは最終的に国民全体に税負担を求めるもの、という事実を忘れてはならない。

Chosun Online | 朝鮮日報より 2014/12/08 08:26)

■背景に平昌の財政難

背景には、巨額の財政負担をめぐり、日本の都道府県にあたる地元・江原道(カンウォンド)と、国や組織委員会との対立が激しくなっていることがある。景気低迷で当てにしていたスポンサー収入が伸びず、2014年7月には組織委員長が辞任。国も費用負担を渋り、年間自主財源が600億ウォンに過ぎない地方自治体への負担が重くのしかかってきたのだ。

特に、当初は組織委が手がけるはずだった開会式・閉会式会場の建設が遅れ、やむなく江原道が肩代わりすることになったものの、費用負担率を巡って対立した。最終的に国が半額を出資することで合意したが、地元市・郡の首長が「開催返上も辞さず」と口にするなど、対立が深まった

オリンピックスタジアム6993億ウォン、周辺道路3552億ウォンなど、総額1兆545億ウォン(訳注:約1140億円)のうち、国費負担(7731億ウォン)を除いた地方負担は2814億ウォンに達する。ここに環境整備事業などを含めると、少なくとも4000億ウォン以上が必要と推定されている。道は来年度、1200億ウォン規模の起債をして、オリンピック関係に780億ウォンを使う。道の起債総額は今年まで5800億ウォン、来年は6330億ウォンとなり、借金が雪だるま式にふくらんでいる。

江原道民日報より 2014/11/17)

■南北開催の可能性も

北朝鮮が2013年12月末にオープンさせた馬息嶺(マシンニョン)スキー場も、2018年冬季オリンピックの共催を視野に入れているとされる。軍事境界線をはさんで平昌に距離的にも近い。北朝鮮と韓国は相互に国家として承認していない状態で、南北共催は1988年のソウルオリンピックでも構想が浮上したことがある。

(c)Taichiro Yoshino

南北関係が悪化したため現時点で現実的な可能性は報じられていないが、韓国紙・毎日経済新聞は以下のように提案している。(引用は抄訳)

今後4年もあるので、南北関係さえ画期的に改善されれば、IOCなどが障害として提起した選手の安全保護の問題などもいくらでも突破口を開ける。馬息嶺スキー場で一部種目が開催されれば、南北ともにお金に換算できない利益がある。

北朝鮮は実際、張雄IOC委員、ウォン・ギルウ体育省部長らを通じて、継続的に「馬息嶺と平昌オリンピックを連携させたい」とシグナルを送っている。

(地理的に近い金剛山や平昌と連携することで)韓国と国際社会も、観光を通じた自然な人的交流で北朝鮮を変化させることができる情緒の土台作りと、連携した観光で経済効果を期待できる。

毎日経済新聞 - 元山・馬息嶺スキー場で平昌オリンピックのアルペン大会を開こうより 2014/04/16 17:13)

北朝鮮の豪華スキーリゾート・馬息嶺ホテル

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