エボラ出血熱、西アフリカでの流行に至った「最初の感染源」とは(研究結果)

2015年1月現在に西アフリカで流行しているエボラ出血熱の最初の感染者と言われている、エミール・ウアモウノくんという2歳の男の子が感染したきっかけを追跡する研究が行われた。
Mexican free-tailed bat (Tadaria braziliensis)photo credit: USFWS/Ann Froschauer
Mexican free-tailed bat (Tadaria braziliensis)photo credit: USFWS/Ann Froschauer
USFWS Headquarters/Flickr

2015年1月現在に西アフリカで流行しているエボラ出血熱の最初の感染者と言われている、エミール・ウアモウノくんという2歳の男の子が感染したきっかけを追跡する研究が行われた。

男の子はギニアのメリアンドゥという小さい町に住んでいたが2013年12月に亡くなった。しかし、どうしてこの幼児が最初にエボラ出血熱ウィルスに感染したのだろうか?

人類学者、獣医、生態学者から成る研究グループが、その手がかりを得た可能性があると考えている。2014年12月30日に発行された欧州分子生物学機構(EMBO)の専門誌「EMBOモレキュラー・メディシン」の論文の中で、筆頭著者のドイツのロベルト・コッホ研究所のファビアン・レーンデルツ氏は、ウアモウノくんが、地域で子供たちがよく遊びに使っている木のほらからエボラ出血熱に感染したのではないかと仮定している。

その木は処分されたが、食虫性のオヒキコウモリの巨大なコロニーの拠点であった。このコロニーのコウモリは、前回調査のエボラ出血熱の動物感染実験から生き延びていた。オヒキコウモリは、過去の発生でもウィルスの発生源として論じられていた。

ファビアン・レーンデルツ氏の研究グループ提供

エボラ出血熱は人畜共通ウィルスだ。つまり、動物から人間に感染する可能性がある。これまで、エボラ出血熱の発生は、猟師が野生動物を殺し、大型霊長類の生肉を食べていることが原因だとされていた。レーンデルツ氏と研究グループは、その可能性を2つの理由から否定した。

第一に、仮に生肉が感染源だとすれば、食べた猟師自身が最初の感染者となるはずだ。第二に、地域の住民によれば、大型霊長類は次第に少なくなっており、メリアンドゥ付近で捕えるのは難しいという。

そこでレーンデルツ氏は、別のエボラウィルス保有宿主として知られるオオコウモリに着目した。しかし、オオコウモリのコロニーは比較的ウアモウノくんの住んでいた村から遠いうえに、オオコウモリの猟師が最初にエボラ出血熱に感染したわけではなかった。

最終的にレーンデルツ氏は、子供たちが日常的に捕らえて焼いて食べていた食虫コウモリに焦点を当てた。女性たちが洗濯しに小川に行くのに通る人出の多い道沿いにある、ウアモウノの家からおよそ55ヤード(50m)周辺の大きな木のほらに注目したのである。レーンデルツが村人たちから聞いたところによると、子供たちはしょっちゅう木のほらで遊んでおり、木は食中コウモリの大きなコロニーの拠点となっていたとのことだ。

A: メリアンドゥ村 B–D:焼かれた木のほら (D)では矢印が棒を指している。恐らく子供たちが残したものだ。

レーンデルツ氏は、木のほらについて次のように説明している。

我々が到着した時、木はほとんど焼かれていた。切り株と落下した枝だけが残っていた(図3CおよびD)。村人たちは、2014年3月24日に焼いたと報告している。また、木に火がつくと「コウモリの雨」が始まり、大量のコウモリが摂取用に捕えられた(対象と方法を参照)。コウモリはロリベロ(lolibelo)と呼ばれる、長い尾を持った小さくて臭いコウモリである。これらのコウモリを摂取したことによる人畜共通感染症の兆候は見られなかったが、村人たちは、野生動物肉の摂取禁止が次の日発表された後、それらを処分すると語った。

子供たちはいつもコウモリを捕まえ、一緒に遊んでいたようだとレーンデルツ氏は述べている。メリアンドゥで最初にエボラ出血熱に感染した患者群は、主に子供たちと女性たちであったとも述べている。しかし、木に生息しているコウモリを調べることができなかったため、コウモリから本当にエボラ出血熱が子供たちに感染したかどうかを確かめるすべはない。

これまでの研究でオオコウモリや大きな霊長類が感染源ではないかと指摘されていたが、食虫コウモリをエボラ出血熱発生の分析に含めるには、今回の調査が有力な証拠になり得るとレーンデルツ氏は現時点で考えている。彼は、ウアモウノくんが本当に現在発生しているエボラ出血熱の最初の患者だとしたら、「この地域を罰して攻撃したり、汚名を着せたりするのを避ける」ために特別な注意が必要だと警告した。

さらに、地域住民にコウモリの取扱いの危険性を周知させる必要がある一方で、人間への恩恵も含め、コウモリが生態系の維持に大きな役割を果たしていることについても教育をしなければならないと書いている。

世界保健機関(WHO)の最新の数字によると、これまでこのエボラ出血熱の発生は19497件で、7588人の死者が発生している。

A:ギニアの南東 (シエラレオーネ、ギニア、リベリアが見える。縮尺は50km。 B:指標となる村(メリアンドゥ)の内外。縮尺は100m。

最近のエボラ出血熱の発生がどのように起きたかについてさらに知るためには、ニューヨークタイムスとフロントライン(PBS)の動画で、父親のエティエンヌ・ウアモウノさんがこのウィルスによってどのように家族全体が崩壊していったかについて語るのを聞くようお勧めする。

[編集部より注記: 幼児がエボラ出血熱に感染した時の年齢についての報告には食い違いがある。ニューヨークタイムスは1歳と報じた]

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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