ユダヤ人がパリの町を10時間歩いたら......(動画)

ユダヤ系ジャーナリストのクラインさんは、ユダヤ人がパリに住むことがどのような感じかを、パリを10時間歩き回って記録。動画には、侮蔑的な言葉を投げつけられたり唾を吐きかけられるたりする様子がうつっている。

2015年1月7日にパリで起こったシャルリー・エブド襲撃事件、そしてそれに続いてユダヤ系食料品店で武装した男が人質4名を殺害した事件が起こってから約1カ月後、ユダヤ系ジャーナリストであるツビィカ・クラインさんは、ユダヤ人がパリに住むことがどのような感じなのかを、パリを10時間歩き回って記録することにした。

クラインさんは、ユダヤ人男性の民族衣装であるキッパーを頭にかぶってパリ市内と近郊の町を歩き、その様子を同行したカメラマンが、バックパックに仕込んだウェアラブルカメラ「GoPro」で撮影。10時間の映像は90秒に編集されて、イスラエルのニュースサイト「NRG」で公開された(冒頭の動画)。

黙って町を歩くクラインさんだが、観光客が多い観光地を後にして、公営住宅が立ち並ぶ住宅地に向かってから状況が緊迫しはじめた。

そこでクラインさんは、「Jew(ユダヤ人に対する蔑称)」「Homo(ホモ)」「パレスチナ万歳」といった言葉を投げつけられ、唾を吐きかける人や、後をつけまわす人もいた。

NRGに寄せた記事の中でクラインさんは、小さな男の子が母親にこう問いかけていたと述べている。「ママ、あの人はここで何してるの? 殺されちゃうって知らないの?」

この動画は2月15日にYouTubeに投稿され、わずか数日で閲覧回数が100万回を超えた。

「パリの町を10時間、ユダヤ人として黙って歩き回った。唾を吐きかけられ、罵られ、脅された。残念だが、これが2015年のパリだ」

この動画を撮影しようと決めたのは、ユダヤ人記者が2013年にヨーロッパで発行されている英語紙「The Local」スウェーデン版の取材で、キッパーをかぶってマルメの町を歩いた記事がきっかけだったという。マルメはスウェーデン第3の都市だが、ユダヤ人差別が多いことで知られている。

今回クラインさんはボディガードを後ろにつけて歩いたが、この体験が恐ろしくて気が滅入るものだったと話す。

「私はもう何年も、フランスの反ユダヤ主義についての記事を書いてきました」とクラインさんは「The Local」フランス版の取材に対して答えている。「反ユダヤ主義について、書こうと思えば毎日記事を書けるほどです。そういった類の出来事は日常茶飯事ですから。ただ、自分自身の目で確かめてみたかったのです」。動画の最後に書かれているように、「フランスでは2014年、ユダヤ人に対する攻撃が851件報告されている」という。

一方BBCの報道によると、この動画には批判もある。「誤った印象」を与えるために編集されているという声や、クラインさんがイスラム教徒が圧倒的に多い貧しい地区を歩いている点を挙げて批判する人もいるようだ。しかしクラインさんは反論している。

「イスラエルの旗を持って歩き回ったのなら、否定的な反応が起きるのも理解できます。でも、キッパーをかぶっていたくらいで反ユダヤ的な反応が引き起こされるのが当然だとは思いません」と、クラインさんはBBCに対して述べている。

イスラエルがガザ地区に対して軍事行動を起こした昨年の夏以降、ヨーロッパではユダヤ人に対する攻撃が増えていると伝えられている

2月14日にはデンマークの首都コペンハーゲンでシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)付近で発砲事件があり、4人が死傷。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの事件について、「イスラム過激派のテロ行為」だと非難し、ヨーロッパに住むユダヤ人がイスラエルに移住するのを歓迎すると述べた

ロイター通信などによれば、ネタニヤフ首相は「ユダヤ人に対する相次ぐ攻撃と残虐な行為は、今後も続くでしょう」と述べた。「ユダヤ人はすべての国で保護されるべきです。しかし、すべてのユダヤ人のみなさん、イスラエルはあなた方にとっての故郷です。私たちはヨーロッパからの大量移住を受け入れる用意があります」

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

[日本語版:遠藤康子/ガリレオ]

Belz

失われたヨーロッパのシナゴーグ

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