北陸新幹線、いくらかかった? 知っておきたい「そもそも」のこと

地元は歓迎ムードに沸き立っているが、ここでなぜ北陸に新幹線なのか、いったいいくらかかっているのか、といった「そもそも論」をもう一度振り返っておきたい。

北陸新幹線の長野~金沢間が3月14日に開業する。新型車両のE7系、W7系が投入され、新設される「かがやき」の最速列車では、東京~金沢間は最速2時間28分で結ばれる。

地元は歓迎ムードに沸き立っているが、ここでなぜ北陸に新幹線なのか、いったいいくらかかっているのか、といった「そもそも論」をもう一度振り返っておきたい。

■そもそもなぜ北陸に?

田中角栄元首相

1964年に東海道新幹線が開業し、東京と大阪を3時間程度で結ぶ「夢の超特急」が脚光を浴びた。その翌年には早くも北陸の政界から、太平洋側に比べ開発の遅れた北陸への新幹線誘致運動が始まっている。需要増が見込まれた東海道新幹線のバイパスルートとして、北陸を経由する「北回り」の必要性を主張していた

1972年には新潟県出身の田中角栄氏が首相に就任し、著書「日本列島改造論」で、地方都市を新幹線や高速道路で結んで開発を推進する構想を提唱。1973年、日本政府は、東海道・山陽新幹線と東北・上越新幹線に続く、新たな5路線の整備計画(整備新幹線)を決定した。ここで北海道や九州などとともに、高崎から長野、富山、金沢を経て大阪に至る「北陸ルート」が盛り込まれた。

その後、国鉄の経営難で新規計画は凍結されていたが、1987年の分割・民営化によるJR発足後、計画沿線の自治体や政界から、新規着工を求める声が再び活発化していく。長野オリンピック(1998年)の開催決定に伴い、1997年に長野までが先行開業した。負担割合はJRが50%、国が35%、地方15%となった。

しかし、負担割合の高いJRの経営陣から、整備新幹線の着工自体に難色を示す意見が相次いだ。このため、地元への利益誘導のために新幹線を建設したい当時の与党・自民党は1996年、負担割合を見直し、JRの負担を大幅に減らした。北陸新幹線については、当初、建設費を抑えるためにミニ規格(山形、秋田新幹線と同じ方式)との併用だった計画が徐々に拡張され、2005年に金沢まですべてフル規格で着工された。

■総工費はいくら? 誰が払ったの?

長野~金沢間の総工費は約1兆7800億円。およそ3分の2を国、3分の1が地方自治体(国からの地方交付税分を含む)が負担する。運行するJR東日本と西日本は、利益が出た分を設備のリース料として国の特殊法人「新幹線鉄道保有機構」(現在は鉄道建設・運輸施設整備支援機構)に支払い、そのリース料からさらに新幹線の建設費に回る。

■延伸の計画は?

金沢から福井を経て敦賀までの着工が決まっている。当初、2025年ごろの開業予定だったが、自民・公明の連立与党の合意により、2022年ごろに前倒しされることになった。北海道・北陸・九州の開業前倒しのために、16年間で計840億円の税金が新たに投入される

■大阪とはどうやって結ぶの?

敦賀から大阪までのルートは正式決定しておらず、開業のめどは現時点で立っていない。

関西と北陸は「サンダーバード」など現時点で20往復以上の在来線特急(寝台特急を除く)が走っている。新幹線と在来線は線路の幅も違うため、北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業した後は、関西からの乗客は敦賀で乗り換えを強いられる可能性がある。

このため、大阪と北陸間の直通運転をめざし、異なる幅のレールを相互乗り入れできる特殊な車両「フリーゲージトレイン」の開発を、JR西日本が進めている。北陸は雪が多いため、幅を変えられる特殊な車輪が雪の影響を受けないようにすることが主眼となっている。

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