突然死で3カ月の息子を亡くした母親は基金を設立した。子供たちの命を救うために

「10年前、当時3カ月だった息子のサイモンを昼寝のために寝かせました。その後、息子が二度と目を覚ますことはありませんでした」
L'Oreal

「10年前、当時3カ月だった息子のサイモンを昼寝のために寝かせました。その後、息子が二度と目を覚ますことはありませんでした」

こう語るのは、「サイモンズ・ファンド」の創設者フィリス・サッドマンさんだ。フィリスさんは2005年、息子のサイモン君を乳幼児突然死症候群 (SIDS) で亡くした。サイモン君が亡くなった後、彼女は医師の勧めで、夫と一緒に心臓検査を受けた。すると、SIDSとの関連性が認められている心拍障害「QT延長症候群」だと判明した。

息子を亡くした原因の病気が検知・治療可能なものだったということを知り、フィリスさんは「サイモンズ・ファンド」を創設した。この団体では心臓突然死(SCA)への認識を高めるための活動を行っている。ボランティアと職員のチームが学校を訪問し、それまで気付かなかった心臓病の症状がないかといった検査を、生徒たちに対して行う。

心臓突然死は、成人だけの問題ではない。フィリスさんはハフポストUS版に語った。「大抵の人は、50歳を超えるまで心電図を撮りません。信じ難いことに、国中の学校で、子供は目や耳の検査を受けますが、心蔵の検査は受けないのです」

フィリスさんは、女性支援のためのチャリティ「ロレアル・ウィメン・オブ・ワース」の2014年最高賞を受賞した。その後も活動をを通じて「サイモンズ・ファンド」のモットーである「心臓検査で命を救う」活動を広めてきた。2005年以降、「サイモンズ・ファンド」は約1万1000人の子供たちの心臓検査を実施し、命にかかわる心臓病の症状を45件検知した。

ハフポストUS版は、現在2人の子供を持つフィリスさんに、彼女自身の体験や「サイモンズ・ファンド」についてインタビューした。

「サイモンズ・ファンド」について、簡単に教えてもらえますか?

10年前、3カ月だった息子のサイモンを昼寝のために寝かせましたが、息子は二度と目を覚ましませんでした。ありがたいことに、小児科医の先生が私たち夫婦に心臓検査を受けるように勧めてくださって、その結果、私は不整脈の一種であるQT延長症候群と診断されました。そこで、全ての乳幼児突然死症候群(SIDS)の約15%がQT延長症候群と関係しているということを知りました。子供を失うということは親にとって最大の悪夢です。この心臓病のことが分かってから、検知・治療が可能な心臓病や心臓突然死が原因で、毎年何千人もの子供たちが亡くなっていることを学びました。こうした心臓病の全てが検知・治療可能であることが分かったので、「サイモンズ・ファンド」を創設しました。また、心臓病は成人だけの問題ではないという認識を高めることにしました。たいていの人は、50歳以上になるまで心電図を撮りません。学校では、子供たちは目や耳の検査は受けますが、心臓検査は受けないのです。

「サイモンズ・ファンド」は今までにどこを訪問しましたか? また、心臓検査の過程はどのようなものですか?

私たちの活動拠点はフィラデルフィアですが、シンシナティ、アトランタ、ナッシュビル、シカゴでも心臓検査を行いました。多くの場合、学校の協力を得て、これらの心臓検査を実施しています。

体育館や講堂で検査設備を設置するのでしょうか?

その通りです。学校、教育委員会、学校区管理者との共同作業です。すべてのスポーツチームがチームメンバーに心臓検査を受けるように勧めてくれることも、検査が受け入れられている理由の1つです。

心臓検査を行う「サイモンズ・ファンド」のボランティア

どのようなフィードバックがありましたか? また、親や子供たちとどのような会話をしましたか?

驚くべきことですが、心臓検査をする度に、少なくとも1つの家族が遺伝子に心臓病があることを発見できるのです。そして、少なくとも1人の子供が心臓病を患っていることを発見します。分かったことは、検査を受けた1万1000人の子供たちのうち、100人中1人が心臓病を患っているということです。家族と話をする時、多くの場合、両親は自分や自分の子供には何も問題がないと思っています。母親として私は、子供のために最高の粉ミルクやチャイルドシートを用意していました。徹底的に調査して、準備ができていると思っていて、こんな悲劇が起ころうとは思いもしませんでした。お子さんの心臓病を見つけた後、多くの両親が私に話しかけてきて、「本当に来て良かった。もう少しで来なかったところでした!」と言います。多くの場合、この国では心臓検査が標準的治療ではないため、また、もう一度言いますが、大抵の親が心臓突然死は成人病で子供たちには起こらないと思っているため、心臓検査の優先順位は低いのです。

他の「ウィメン・オブ・ワース」の受賞者全員と会ってみて、どのような気持ちでしたか? かなり印象深い女性たちだったのではないでしょうか。

受賞以来、本当に素晴らしいことは、お互いの活動を支持するために、みんなが連絡を取り合い、メールを送り合っていることです。本当に素晴らしく、謙虚にさせられる体験でした。彼女たち全員が非常に多くのことに取り組んでいて、自分の活動に対してとても情熱的で、インスピレーションに溢れていました。だから、実際にどんな体験だったかを説明することは難しいです。「ウィメン・オブ・ワース」授賞式の開催前、ロレアル・パリUSAのカレン・フォンデュ社長が主催する朝食会で、私たち全員が座って話し合う機会がありました。お互いを知り、それぞれの経験や今の活動について学ぶために、あんなに個人的で、親密な時間を過ごせたことに、本当に感動しました。

フィリス氏と、ウィメン・オブ・ワース・アワードの候補者9人とカレン T. フォンデュー社長およびマリーナ・ヒゲラ副社長

12月に「ウィメン・オブ・ワース」の最高賞を受賞して以来、大変忙しい数カ月間を過ごしていると思いますが、それ以降の活動を教えていただけますか?

ええ、ロレアルに認めてもらえたのは本当に素晴らしいことで、他の9人の女性たちと共に候補者になれたことは素晴らしい体験でした。12月以来、「サイモンの夜」と呼んでいる年1回の催しを開催しました。500人ほどの出席者を迎え、約25万ドルの寄付金を集めました。また、「ハート・オブ・ユース・スポーツ・イン・フィラデルフィア」という医療教育コースを初めて主催しました。医師、アスレチック・トレーナーなどの専門家たちを招いて、そこで心臓検査に関する1日間の教育コースを実施したのです。また、NHLのフィラデルフィア・フライヤーズの試合でも、2万人の観客の前で、「ウィメン・オブ・ワース」最高賞の受賞者として話す機会をいただきました。

それは凄いですね。

本当に素晴らしかったです!

将来、「サイモンズ・ファンド』ではどんなことをしたいですか?

目標はとてもシンプルです。それは、学生への心臓検査を標準医療にすることです。サイモンズ・ファンドは今では本当に大きな影響力を持つようになりました。しかし、学生への心臓検査が標準医療となったら、もっと多くの子供たちの心臓を検査して、命を救うことができます。

このインタビューは編集および要約されています。

「ロレアル・ウィメン・オブ・ワース」の他の候補者はロレアルのサイトから確認できる。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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