【同性パートナーシップ条例】証明書の発行、早くて6月 渋谷区長が見通し

渋谷区の桑原敏武区長は議会終了後の記者会見で「国政の課題に一石を投じる歴史的な事業になった」と評価した。一方で、実際に証明書の発行が可能になるのは、早くても6月定例区議会のあとになるとの見通しを示した。
Taichiro Yoshino

同性カップルに対し、結婚に準じる関係と認め「パートナーシップ証明」を発行する全国初の条例案が、3月31日の渋谷区議会の本会議で可決、成立したのを受け、桑原敏武区長は議会終了後の記者会見で「国政の課題に一石を投じる歴史的な事業になった」と評価した。

一方で、実際に証明書の発行が可能になるのは、早くても6月定例区議会を経てからになるとの見通しを示した。今後、証明書の発行要件や手続きなどを区の規則として定める必要があるが、少なくとも2回、議会に報告するよう、条例の付帯決議で求められたためという。

区議会の本会議では討論で「拙速だ」「従わない事業者名の公表は行き過ぎだ」との反対意見表明があった。桑原区長は「答申をいただいて内容を精査するのに時間が必要だ。新しいことは理解できないほどそういう言葉が出やすい」と一蹴した。

桑原区長は4月に予定されている次期区長選には立候補しないことを表明している。「後任の区長が反対したらどうするのか」との質問には「この条例は区議会の団体意思。区長個人の意見で左右されるべきものではない。批判を食うだけだ」と、方針を継承するよう求めた。

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主なやりとりは以下の通り。

Q 条例の意義について改めて。議会からの批判としては「事業者名の公表はやりすぎ」と「条例の作成過程が強引、拙速」があったが。

区長 国政の課題に一石を投じる歴史的な事業になった。今まで性的マイノリティーは社会から疎外されていた。そういった方々が人知れず教育や職場、社会で苦しまれ、そのことに対し我々は手を差し伸べた。すべての区民が希望のある人生となるよう肯定的な仕組み作り。パートナー証明もそうだが、このことによって少数者を支援する仕組みを有効に環境づくりの第一歩となった。「やりすぎ、拙速」は、根拠があって言っているとは思わない。常に新しいことは言えば言うほど、理解できなければできないほど、そういう言葉が出やすい。私は公表については隠し立てしたわけではなく、答申をいただいて内容を検討精査したから、どうしても1カ月ぐらいは時間が必要だ。拙速と言われるが、じゃあどうすれば拙速でないんだ。まずは第一歩を踏み出したい。

Q 事業者名の公表規定については。

区長 私は公表自身を目標にしていない。こういうことについてはお互いがどうしてそうするのか、どうしてわかってもらえないのか、コミュニケーションを図らなければいけない。理解していただき、そのところはいろいろ話をして詰めていく必要がある。その中から非常に孤独で苦しんでいる人の立場をわかっていただき、パートナー証明を出せばどう意味があるのか理解していただく。そういう努力は最大限したい。制度を円滑に運営していく第一歩になると思っている。

Q それがなぜ必要だったのか。

総務部長 どちらかと言えば公表というのは事業者に損失やイメージダウンを与えることから、誰が見ても明らかな人権侵害など例外措置と考えている。必要だと思っている。

区長 ほとんどは知識がゼロに近い。そこからお話ししなければ、ああそうかということにならない。そのための努力を我々は惜しんではならない。

Q 「拙速」との批判について。区民からの理解は得られたとお考えか。

区長 ほとんどの方は身近にそういう方がいると知らない。この条例ができる前と、できてから話すのでは組織的な対応が違う。そのためには早くその体制をとらなくちゃいけない。相談窓口を開設したり、情報収集をしたり、いろいろと意見や提言を受けていかないといけない。条例があるから我々は組織的な対応、審議会をつくったり、情報を集めて対応するという、条例の裏付けのもとに組織が動き審議会が動く。そのこと自身は拙速というよりは必要な体制をとることができると思っている。

Q 今期限りで引退を表明しているが、後任の区長が反対したらどうサポートするのか。なぜ在任中にできなかったのか。事業者名の公表で果たして実効性はあるのか。

区長 この条例は区議会の団体意思。区長個人の意見で左右されるべきものではない。制度としてやるものだ。いかなる区長もそれは否定できない。批判を食うだけ。合理性がなくて条例にかなってなければ議決されなかった。この条例の秘められた合理性、人権救済の役割を持っていると思ったから進んだ。それから公表について理解、協力できない事業者があった場合、最後の手段として考えているが、このこと自身は今までやり方として、識者と検討していた。過料を科すことは適当でなく、自主的に協力していただける関係を作ることがベストだ。初めから公表を考えているわけではない。

総務部長 まずは条例の周知、啓発、相談窓口の設置という形で重点を置いていかなければならないのは制度の理解。その上で社会的認知を高めていきたい。

Q パートナーシップ証明書の発行は早くていつごろか。

区長 議会の付帯決議で、議会には2回報告してからスタートしてほしいと言っている。従いまして我々は、まず規則を作ってお話しする。その次は証明をこういう形で発行したいんだという要件、手続き、そうしたことを理解していただかなければならない。少なくとも6月定例会ののちになるだろうと思います。私としてはできるだけ早いうちに整えたいが、私は退任するので申し上げにくい。

Q 議会にカメラが入れないなど、理解を深めるために適切だったと考えるか。

区長 議場の秩序権というのは議長にありますから、議会で判断することですので、私からあーだこーだということは言いにくい。ただ私は、できるだけプレスの方に理解、協力していただくことが大切だと思っていますけどね。

Q 自民党の谷垣幹事長が懸念表明したり、自民部会などでも「説明せよ」という発言があった。どう考えるか。

区長 呼び出しを食えば行ってきちっと説明させていただきたい。法の下の平等に反するということです。そのこと自身は憲法上の課題であって、両性の合意という点では、法の下の平等という意味ではさらに広く検討されるべき課題ではないか。あらゆる課題への基本原則ですから、私はご説明の機会を与えられたらご説明させていただきたい。

Q 区民からの賛否の数は。

総務部長 正確な数は控えるが、賛否同数ぐらい。ただしなぜか後になるにつれて反対、それも区外の方から、すべて同じような文言で匿名の意見が増えた。賛否含め、総数で1000件は超えていると思う。

区長 メールで来ているので見るが、反対の意見はパターン化されていて、市民の意見を言っているというよりは組織活動としてきているなと思う。賛成の方は率直には少ないが、そうかと言って反対の人は自分の考えで言っているとは思えないものが多かった。これは信念や信条の問題ではないから、お話しすればわかってもらえるんじゃないかという気持ちでおります。

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