東小雪さん、杉山文野さんがLGBTの権利を訴える「好きな人といるために、自分の生殖器を切りますか?」

4月23日、東京レインボープライド2015 共同代表の杉山文野さんとLGBTアクティビストで元タカラジェンヌの東小雪さんが東京の外国特派員協会で会見した。同性パートナーシップ制度を認める条例を制定した渋谷区長選について語り、「日本が多様性を認める社会になれるかの分かれ目」とその重要性を訴えた。

4月23日、東京レインボープライド2015 共同代表の杉山文野さんとLGBTアクティビストで元タカラジェンヌの東小雪さんが東京の外国特派員協会で会見した。同性カップルにパートナーシップ証明書を発行する条例を制定した渋谷区の区長選について語り、「日本が多様性を認める社会になれるかの分かれ目」とその重要性を訴えた。

杉山さんと、東さんの発言は以下の通り。

■「日本の社会が、どんな属性を持った人にも暮らしやすいものになってほしい」

LGBTアクティビストで元タカラジェンヌの東小雪さん

私は東小雪です。

私は2年前に東京ディズニーシーで、日本のディズニーとしてははじめてとなる、同性同士の結婚式を挙げました

とても幸せな経験で、結婚式が挙げられたことを今でも本当に嬉しく思っています。今はパートナーと渋谷区に暮らしています。一緒に経営して、一緒に家事をして、時々喧嘩をしながら、私は裕子さん(パートナーの増原裕子さん)のことを大切な家族だと思っています。

結婚式の模様

私は彼女のことをとても大切なパートナー、家族だと思っていて、結婚式を上げて一緒に暮らしていても、今の日本の制度では残念ながら、家族として扱われません。同性パートナーだから困ってしまう、ということがあります。例えば、引っ越しをしようとしても、同性のパートナーという理由で、家を借りることがとても難しい、という現状があります。

そして、今は二人とも健康に暮らしているんですけれど、病気や事故のリスクは誰にでもあります。万が一の時に、病院で家族として扱ってもらえるのか、手術の同意書にサインをできるのか、面会をできるのか、不安を抱えながら暮らしています。

法律的に何の保証もなく、社会的な制度を利用できない私たちは、ルームシェアをしているお友達、という扱いにしか過ぎません。今お話したほかにもさまざまな社会的な生きづらさを抱えているのが現状です。

私は金沢市の出身なんですが、はじめて同性が好きだと気づいたのは16歳の春、高校2年生のころのことでした。学校のクラスメートの女の子への気持ちが、「あ、これは恋愛感情なんだ」と気づいたことがありました。当時の金沢にはLGBTに関するポジティブな情報はほとんどなくて、同性愛であることは人に話してはいけないことだ、親や、学校の先生、友だちに言ってはいけないことなんだと、とてもつらい思いをしました。

今でもLGBTの子供たちは自殺のリスクが高い、いじめられてしまう可能性が高いと言われています。今回、渋谷区の条例が可決された時、私はパートナーと一緒に議場におりました。可決された瞬間は本当に感動して、とてもうれしくて涙が出てきました。これは今、私とひろ子さんが使えるようになるからうれしい、というだけではなく、自分の性的志向やあり方を肯定的に捉えることができない次の若い世代にも、とてもポジティブなメッセージになったと思います。私たち大人がこれからどうやってこの条例が全国に広がっていくのか、きちんと運用されていくのかを見守って、日本の社会が、どんな属性を持った人にも暮らしやすいものになってほしい、心から思っています。今日は、ありがとうございました。

■「好きな人と一緒にいる権利を国がくれる、と言われたら、みなさんは自分の生殖器、切りますか?」

東京レインボープライド2015 共同代表の杉山文野さん

僕がこういった活動をするきっかけは約10年前、学生だった頃に友人のすすめで性同一障害のカミングアウト本(『ダブルハッピネス』)を出したことでした。僕自身、学生時代は誰にも言うことができずに、自分だけが頭がおかしいんじゃないか、死んでしまいたいと思うほど悩んだ時期もあって、多くの友人、家族に恵まれて、少しずつカミングアウトしています。

ちょうど写真がでていますけれど、いわゆるどこにでもいるような普通の4人家族、杉山家の次女として生まれました。赤いネクタイで、セーラー服を着ているころ、右下の写真が中学生の頃で、一番、体は女性として順調に成長していく一方で、心のほうでは男性として成長していく、まさに引き裂かれるなんて簡単な言葉では済まないような心理状況でずっと悩んでいた頃の写真です。

幼稚園のときだけ男女共学で、男の子たちと一緒に遊んで、自分が疑いもなく男だと思っていた時の写真です。

まだ本を出した時期は性同一性障害について、認知がない状態で、セクシュアルマイノリティといえばイコール、水商売とか、テレビのバラエティに出ている一部の人というイメージ、自分とは遠くの世界にいる人というイメージが強かったころですが、どこにでもいるような人、学生、フェンシングの日本代表選手でもそうした人はいるんだと、カミングアウトしたところ、話題にしていただいたことがありました。

自分でも思っていたより反響がありました。「僕もそうです」「私もそうです」「誰にも言うことができません」「辛いです、苦しいです、死にたいです」という1000通を超えるメールが来て、そういう方たちの相談に乗ったり、全国の学校や企業で講演したり、今はパレードやセクシュアルマイノリティの子供たちの支援をするNPOをやりながら、自分で会社を経営して活動しています。

たった10年でも日本のセクシュアルマイノリティを取り巻く環境は非常に大きく変わってきていると思うんですけれども、特に先月、渋谷区で日本初の同性パートナー条例が可決されてからの3週間というのは本当に目まぐるしいスピードで変化しているのを感じます。

この条例の件は日本だけでなく、国内外で大きく話題になっているんですけれども、僕は大きく国を変えたい、と思った始めたというよりも、ただ普通に暮らしたい、と思ってきただけ。本を出した時も、何か訴えて社会を変えてやろう、というよりも、僕は僕です、と言いたかっただけなんです。

好きな人と一緒に暮らしたい、というごくシンプルな思いが、数が多い人は当たり前のようにできるのに、数が少ないというだけでできない、それはそろそろスタートラインを一緒にしていただきたいなと。そして、数が多い人にとってはこの条例で明日は変わらないと思いますが、僕たちにとっては非常に大きく、明日が変わる一歩なんだということをわかっていただけたらなと思います。

今回の渋谷の件も、ただ、素直に嬉しいと思っています。条例の中身ももちろんですが、それ以上に行政が僕たちの存在をちゃんと認めてくれた。渋谷区では、今まで存在しないと思われていた僕達の存在を認めて、尊重してくれる街なんだ、ということを何より嬉しく思います。

同性パートナーシップ、というと性同一性障害は関係ないんじゃないかと思われることもあります。大いに関係あります。僕自身は見た目はこんなですが、戸籍上は女子になります。今、僕には5年近く付き合ったストレートの女性のパートナーがいるんですが、見た目は男女、異性のカップルに見えても、戸籍上は女性同士、ということで一緒になることができません。ならば、性同一性障害特例法を使って、戸籍の変更をすればいいじゃないか、と言われるんですが、戸籍変更の条件はまだ非常に厳しくて、条件の一つである、「生殖器を取り除いていること」という条件に当てはまらない僕はまだ、変更できないので、(パートナーと)一緒になる手段がありません。

できることなら、僕自身はもう体を切りたくはない。金銭的にも、体にも心にも負担がかかる手術はこれ以上したくないと思っているんですけど、やっぱり彼女と一緒にいようと思うと、切ったほうがいいのかなと悩んだりもして……。

名前は性同一性障害と、「障害」とつくのに、だけど、保険は効かない。だけど戸籍の変更の条件には、保険適用がない手術を条件としている、これは矛盾しているんじゃないかと思います。

自分の体の違和感ではなくて、制度に合わせるために体を切らなくてはいけない、という悲しい手術がたくさん行われていて、生殖器を切れば、好きな人と一緒にいる権利を国がくれる、と言われたら、みなさんは自分の生殖器、切りますか?

もちろん、性同一性障害特例法の条件を変更する、という方法もあるんですけれども、もし同性パートナー条例のようなものがちゃんと進んでいけば、制度に合わせるために体を切るといった不必要な手術が減るんではないかと、今後に期待したいと思います。

一方で、今週日曜日、(東京レインボープライド)パレードの行われる26日、この条例が可決された渋谷区で区長選があります。候補の中では否定的な方もいて、選挙結果次第では、条例が見直される可能性があります。今後のLGBTを取り巻く環境が大いに変わる可能性があると思っています。

渋谷区からスタートしたこの話題が全国に広がって、全国の自治体が議論を始めました。ここで渋谷区がしっかりと進めて、形作れるかどうか、はたまた今の流れが止まってしまうのか。今後の日本を左右する大きなポイントなんじゃないかと思います。

この渋谷の条例は、渋谷だけの話でなくて日本全体の話だと思っています。同性パートナーの話だけではなく、2020年東京オリンピックの決まった日本が今後、しっかり国際都市になっていけるのか。多様性をある先進国になっていけるのか、大きな分かれ道だと思っていて、多くの皆さんにこの現状をお伝えしたくて、今ここでお話をさせて頂きました。

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