パナソニック、通期の最終利益1800億円 津賀一宏社長「利益優先から成長優先に舵を切る」

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reuters

パナソニックは28日、2016年3月期の連結当期純利益が前年比0.3%増の1800億円になると発表した。構造改革が一巡し、車載・住宅事業のけん引で売り上げ拡大を図る。M&A(合併・買収)や設備投資も拡大。利益重視の経営から成長優先に舵を切る。

通期の売上高予想は前年比3.7%増の8兆円、営業利益予想は同12.6%増の4300億円。トムソン・ロイターの調査によると、アナリスト9人の予測平均は4119億円で、会社予想はこれを上回る。

売り上げは、車載や産業向け事業のほか、海外の住宅事業で伸ばす。「戦略投資(新規M&A、研究開発、宣伝投資)1兆円」は今期2000億円を充てる。通常の設備投資は2850億円(前年同期は2267億円)に拡大する。

また、連結営業利益率は5.4%を計画。エアコンや2次電池など、営業利益率が5%未満である事業を集中的に改善することで達成を目指す。今期の構造改革費用は海外の拠点再編などに充てるが、400億円(前年同期は949億円)に圧縮することで、当期純利益も増加する。

当期純利益は前年比で0.3%増にとどまるが、15年3月期は、今後の業績拡大の見通しから繰延税金資産1302億円を再計上したため、同49%増の1794億円に跳ね上がった。この押し上げ分を除くと、今期の純利益の増加額は1300億円を超える見込み。

<営業利益率5%を前倒し達成>

15年3月期の実績は、売上高が前年比0.3%減の7兆7150億円、営業利益が同25.2%増の3819億円で着地した。事業の撤退・売却で売り上げは減少したが、構造改革効果や固定費削減を徹底した。

特に前期は、不振事業の改善を優先し、テレビ、半導体、液晶パネルの赤字を圧縮した。これにより、営業利益率は16年3月期までの3カ年の中期経営計画の5%目標を1年前倒しで達成した。

記者会見した津賀一宏社長は、営業利益率5%を前倒し達成したことで「利益優先から成長優先に舵を切る」と強調し、2019年3月期の売上高10兆円の目標に向けて「スタートの年にする」と述べた。

<円安で新規投資は日本優先>

今期の為替の想定はドル115円(前年実績は110円)、ユーロ135円(同139円)、人民元19.5円(同17.74円)。円安進行は車載事業や映像機器でプラスとなる一方で、白物家電や住宅事業にはマイナスに働くことから「業績予想への影響はほとんどニュートラル」(河井英明専務)という。

津賀社長は、円安進行を受けて「新規の投資は、まず日本でできないかと考えている。中級品以上の製品で輸出できる事業は、日本での設備投資を優先して考える」と述べた。

同日、パナソニックは、2017年3月期末から、国際会計基準(IFRS)を任意適用すると発表した。16年4―12月期までこれまでの米国会計基準を適用。グローバルに統一されたルールに基づく運営で、経営管理の精度向上を図るとともに、キャッシュフロー重視の経営を進める。[東京 28日 ロイター] -

(村井令二 編集:田中志保)

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