電気柵、なぜ死亡事故に? 他の場所の柵は問題ないの?

静岡県西伊豆町で起こった電気柵による感電事故。なぜこのような事故が起こったのか。他の電気柵は問題はないのか?

静岡県西伊豆町で7月19日、川遊びをしていた家族連れら7人が、土手に設置されていた電気柵が原因で感電し、うち2人が死亡した。捜査関係者の調べでは、この電気柵には法令で義務付けられた漏電遮断器や専用の電源装置が、取り付けられていなかったことがわかった。なぜこのような事故が起こったのか。他の電気柵は問題はないのか?

■電気が通ると人間の体はどうなるの?

人体に電流が流れたときに人体が受ける影響は、電流の大きさ、通過時間、通電経路によってピリピリと感じる程度から火傷、死亡などまで変化する。

■通常の電気柵はどのような対策が取られている?

経済産業省のリーフレットによると、電気柵は獣害対策であれば自由に設置できるが、電気事業法によって、設置方法が決められている。その内容には、

  • 家庭のコンセントなど30ボルト以上の電源から電気柵に電気を供給するときは、危険防止のために「漏電遮断機」を設置しなければならない。電柵機なし(直接電源)
  • 人が気が付きやすいように、危険表示をしなければならない。

などが含まれていた。「漏電遮断機」とは、15ミリアンペア以上の漏電が0.1秒間以上起こった時に、電気を遮断するものだ。

また、農林水産省の資料によると、通常、電気柵は人間が触れても手を離せるように、数千ボルトの微電流を1秒間に1回程度、瞬間的に流すようになっているとされている。

瞬間的に電流を流す「パルス」の仕組みは柵そのものではなく「パルス発生装置」という専用の電源装置で制御されている。電気柵を扱う業者でつくる「日本電気さく協議会」は、柵の線そのものを家庭用電源などに直接接続することは法律違反だと呼びかけていた。

■今回の問題となった電気柵は?

朝日新聞デジタルによると、今回問題となった電気柵は、79歳の男性が約5年前に設置したもので、自宅の納屋の100ボルトのコンセントから電気を引いていた。設置が義務付けられている「漏電遮断器」や「パルス発生装置」も設置されておらず、また、危険表示も行われていなかったという。

今回の事故で亡くなったのは、川の中にいた2人の男性だ。現場では、電気柵の電線の一部が切れて川の中に垂れ下がった状態になっていたほか、救助活動に当たった近所の人が「川に入った瞬間、足がビリビリした」と話していることなどから、何らかの理由で電線が切れ、川の中で感電が起きた可能性があるとみられていた。救急隊は、電気柵の電源を切って川に入り、救助を行ったという。

静岡県警が21日に現場検証を行い、通電実験を行ったところ、漏電が起きても電気が遮断されないことが確認された。県警は「漏電遮断器」がなかったために、被害が拡大した可能性もあるとみて調べている。

高橋健彦・関東学院大教授(建築電気設備学)によると、体がぬれていると電気抵抗が下がり、乾いているときより大きな電流が流れて危険性が増すという。また、体が電気柵に直接触れていなくても、電線が川につかって電気が流れていれば、負傷や死亡につながる可能性もあるという。

■他の柵は問題ないの?

今回の事故を受け、電線の管理を所管する経済産業省は全国の関係部局に注意喚起の通知を行った。宮崎県では、県内一斉に安全点検を実地で実施すると発表。各電気柵の設置状況を調べるとしている。

四国新聞社によると、設置に行政への届け出義務はなく、香川県では安全対策や点検は設置者に任されているのが現状だという。インターネットで電気柵のパーツを手軽に購入できることもあり、国や県の補助金を活用せずに設置されたものについては、県内にどれだけの電気柵があるのかわかっていない。

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