2020年東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設に伴い、近隣にある都営霞ケ丘アパートが取り壊される。
コンペで選ばれたザハ・ハディド氏のデザインを基にした新国立競技場の建設計画は、安倍首相の政治判断により、白紙見直しになった。しかし、8万人規模のスタジアムを建設することに変わりはなく、アパートの取り壊し計画はそのままだ。
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都営霞ケ丘アパートは戦後間もなく整備されたバラックに100世帯が居住。1961年に建設され、住民約370人、うち6割が65歳以上の高齢者だ。2012年夏、住民には立ち退きが一方的に通告された。合同説明会が行われたのみで、世帯ごと戸別の説明は行われなかったという。
転居のめどは2016年1月。原宿神宮前と若松町のアパートへ引っ越しする。
国立競技場の南側に霞ケ丘アパートがある
一般的に、周辺住民と建設計画の折衝は、デザイン選定後の基本設計と呼ばれる過程において行われる。日本スポーツ振興センター(JSC)の管轄だが、事前の協議はなかったという。デザインコンペ審査委員長の安藤忠雄氏は会見で、霞ケ丘アパートについて問われると「周辺環境の問題はコンペの後、徹底的に話し合わなきゃいかんのです。その主体はJSCなのか、私にはわからないですけれど。オープンな形でやってほしい」と語っており、デザイン時点での関与を否定している。
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国も、建設計画の白紙見直しとは関係なく霞ケ丘アパートの取り壊しについては既定事項として進める方針だ。
責任の所在があいまいなまま進められたプロジェクトの代償は、こんなところにも現れている。
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