TPPが成立すると、国有企業は金儲けに走る(かもしれない)

ウィキリークスが公開した資料から、TPPが合意に至れば、公共放送や郵便事業などの公共サービスが「利益追求」を求められるかもしれない。
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TPPのルールの下では、国が運営する公共企業体は「利益の追求」に専念しなければならなくなるかもしれない。

これは内部告発サイト「ウィキリークス」が2015年7月29日に公開した資料からわかったことだ。

ウィキリークスが公開したのは、2013年12月のTPP会合の前に、各国の閣僚に対して行われたブリーフィングの資料だ。資料には「TPP交渉参加国の大多数が『国有企業が商業ベースで活動する』ことにすでに合意した」と書かれている。

12カ国による最新のTPP交渉ラウンドは、7月28日~31日ハワイで行われたが、合意には至らなかった。

資料によって明らかになった国有企業に関する原則が最終合意に含まれているかどうかは不明だが、資料は国有企業がTPPのルールの対象になる可能性があることを示唆している。カナダでは年間10億ドルの補助金が「カナダ放送協会」(CBC)へ支払われているが、もしこのルールが適用されれば、カナダ政府が公共企業体に税金をどの程度投入し続けられるかが問題になりそうだ。

この文書を分析したニュージーランド・オークランド大学法学部のジェーン・ケルシー教授は、国有企業への補助金が他のTPP参加国に「悪影響」を及ぼすと判断された場合、各国政府は国有企業に税金を投入できなくなると述べている。

「国有企業は、利益を目的とせず、時には損失も出すような公共の機能を担っています。そうした活動には政府からの支援やサポートが不可欠ですが、TPP協定によって支援を受けられなくなる可能性があります」

ケルシー教授によると、TPPでは「投資家」と「国家」が対立する構造となっており、外国企業は、国有企業への補助金によって、自社が競争上不利な立場に置かれていることを証明できれば、補助金を出している政府を訴えることができるという。

しかし、ケルシー教授はこの提案は「本質的に問題がある」と批判している。

「国有企業が国有なのは、重要なサービスを提供したり、国の社会的・文化的機能を維持したりするなど、単なる利益以上の役割を担っているからです」

「民間企業は、公的サービスを効率化し、選択肢を増やし、競争を加速させます。もし国有企業と民間企業が同じ条件の下で自由競争をするようになったら、民営化を支持する人たちは公的サービスを国有企業に任せておくことに反対するでしょう」

ただし、文書によれば、交渉参加国はこのルールに対する「例外や柔軟性を設ける」ことも求められているようだ。これは、国有企業を守りたい参加国にとってはいいニュースと言えるかもしれない。しかしそれでも、今回の文書が明らかになったことで、さらにTPPへの批判が強まっている。

貿易協定への反対を長年訴えている市民団体「カナダ人評議会」のスジャータ・デイ氏は、「TPPは、カナダの国有企業が公共の利益のために活動することを妨げるでしょう」と話す

「たとえば、『2カ国語で多文化社会のカナダのニュースを伝える』というCBCの本来の使命は『単純な利益獲得』という目標の前に重要さを失ってしまうでしょう。同様に、カナダ郵便公社が民間企業になれば、国家を支える役割は失われてしまいます。公共企業体の本質と使命が失われ、利益を追求するだけの企業になってしまう可能性があるのです」

TPPの交渉は2008年に開始され、カナダは2012年に交渉に参加した。その他の交渉参加国は、オーストラリア、ブルネイ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカ、ベトナムだ。

TPP交渉が成立すれば、世界最大の自由貿易圏になるといわれている。交渉参加国すべてを合わせた人口は約8億人、国内総生産(GDP)の合計は27.5兆ドルで、世界経済全体の約40%を占める。

一方で、TPP反対派は交渉が異常なほど秘密裏に行われていることを批判している。カナダでは一般の人への認知も進んでおらず、7月に公開された世論調査では、カナダ人の4分の3が「TPPについて聞いたことがない」と回答した。

この記事はハフポストカナダ版に掲載されたものを翻訳しました。

[日本語版:湯本牧子、合原弘子/ガリレオ]

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