日中が受注合戦、インドネシア新幹線の実現なるか?

インドネシアのジャワ島に導入される高速鉄道を巡り、日本と中国が激しい受注合戦を繰り広げている。
Flickr - Takeshi Kuboki/dunhilaryu

インドネシアのジャワ島に導入される高速鉄道を巡り、日本と中国が激しい受注合戦を繰り広げている。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、8月末に日中どちらの方式にするかを決定すると説明。日本の新幹線が選ばれるのか、中国の高速鉄道が選ばれるのか注目される。

日本の経産省の報告書によると、1億人以上が暮らすジャワ島にはインドネシアの人口の6割が集中。人口規模に対し運輸インフラが不十分で、在来鉄道は自家用車に比べ所要時間の面で競争力が弱く、旅客の8割以上が自動車に依存している。そのため、首都ジャカルタ近郊を中心に渋滞が深刻になっており、鉄道のニーズが急速に高まっているという。

ジャワ島で計画されている高速鉄道は、首都ジャカルタからバンドンまでの約120km間を結ぶもの。将来的にはさらに570km先にある、スラバヤまで延伸する。

毎日新聞によると、日本は数年前から官民挙げて新幹線方式を売り込んでおり、インドネシア政府と詳細調査の実施で合意するなど先手を打っていた。しかし、2014年10月に就任したジョコ大統領は、計画自体に消極的だった上に、中国政府とも高速鉄道の導入に向けた調査を実施すると発表。日本の関係者に衝撃が走ったという。

日本側は「省エネ性能」「耐震性」「安全性」などをアピールした。これに対して、中国側の計画はほとんど明らかになっていないが「日本に比べて早く完成し、コストも安い」と説明している模様だ。

高速鉄道の鍵を握るインドネシアのジョコ大統領

8月13日の日刊工業新聞によると、ジョコ大統領は「日本と中国がそれぞれ行った事業可能性調査の結果を精査し、日本の新幹線か中国の高速鉄道かで判断する。第三国のコンサルタントによる事業費及びコスト、導入技術、安全性、現地調達率、メンテナンス、長期的な協力の可能性などについての評価に基づき判断する」と説明したという。

インドネシアのウリアント副経済調整相は14日、日本が中国に対抗して新たな提案を行ったことを明らかにした。ロイターによると、ウリアント氏は「円借款の融資期間と金利に変更はないが、インドネシア政府の財政支出が不要な形に修正された」と話しているという。

■タイやインドでも新幹線導入に向けた動き

高速鉄道はアジアの他地域でも計画されている。タイでは首都バンコクと北部チェンマイを結ぶ660〜670kmの区間で、新幹線が導入されそうだ。日本とタイ政府は5月、新幹線技術を前提とした高速鉄道計画の共同調査の実施で合意した

インドでは西部のムンバイ〜アーメダバード間の約500kmで高速鉄道を計画しているが、7月に公表された日本とインドの両政府による事業化調査の報告書は、新幹線方式を推奨している。約1兆9000億円に上る見込みの総事業費をインド側が用意できるのかが課題となっている。

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