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ホテルのフロントで「◯◯」を借りる。専門家がこっそり教える、旅先で快眠できる4つの秘訣

快眠のヒケツは“寝返り”にあり。「旅先で眠れない」そんな悩みの解決方法を探るべく専門家に話を聞いてみたところ、4つのポイントが見えてきた。
20th generation woman who sleeps in a bed
Indeed via Getty Images
20th generation woman who sleeps in a bed

せっかくの旅行なのに、寝不足でぐったり……。出張先のホテルで眠れなくて、大事な商談で実力が出せなかった……。このように旅先で十分に睡眠がとれず、残念な思いをしたことはないだろうか?

山田朱織さん。整形外科の医師で、山田朱織枕研究所にて快眠セミナーを行う、睡眠姿勢の専門家。

いわゆる「枕が合わない」と眠れないという人は一定数いるらしい。寝具や環境などの変化により、普段通りの睡眠がとれないといった悩みは、特に“こだわりが強い”とか“神経質”といったタイプの人に多いようだ。

こうした悩みを解決するにはどうすればいいのだろう?医学博士の山田朱織先生を訪ねた。眠りのプロである山田先生は、“寝返り”のしやすさこそが快眠の秘訣だと話す。そんな山田先生に、旅先のホテルで実践できる“ぐっすり眠れるポイント”を教えてもらった。

1. ホテルの枕を使うよりも、フロントでバスタオルを借りよう

枕はホテルに備えられているものではなく、バスタオルの手作り枕がおすすめ。

「枕を高くして寝る」ということわざがあるけれど、実際には枕が高ければいいというわけではないのだ。枕の高さや硬さが合わないと、頚椎を痛めてしまう原因にもなる。まずは枕の正しい高さを知ろう。

山田先生が教えてくれた「枕の正しい高さ」のチェックポイントは次の3つだ。

□横向きに寝たときに、額(中央)、鼻、あご、胸(中央)が一直線になり、床(ベッド面)と並行になる

□仰向けの状態で、喉が苦しくなく、呼吸しやすい

□両膝を軽く立て、胸の前で腕をクロスした状態で左右に寝返りを打ってみよう。このとき、力を入れずにスムーズに寝返りが打てる

山田先生によると、女性ならバスタオル3枚、男性なら5〜6枚程度用意すれば、大体の体型に合う枕を作ることができるという。折り畳んだタオルを重ねて、めくりながら調節して、正しい高さに合わせよう。

とはいえ旅先にバスタオルを3枚持っていくのは、枕を持参するのと同じくらい荷物になってしまう。ここでひとつのワザを教わった。

「ホテルを予約する時、またはチェックインする時“首を痛めていまして、備え付けの枕は使わないように医師から言われていますので、バスタオルを3枚貸していただけませんか?”と相談してみてください。これまで幾度もホテルを利用していますが、断られたことはたった一度もありません。どのホテルも快く用意してくださいますよ」

もしも同じ部屋に連泊する場合は、清掃時にバスタオルを片付けられてしまわないよう“ベッドのタオルはこのままでお願いします”とメモを残しておけば大丈夫。このように、旅先に枕を持参しなくても自分にぴったり合う枕を手作りすれば、快眠に近づけるはずだ。

2. ホテルの寝巻きは使わずに、パジャマを持参する

「ホテルに備えてある寝巻きは使わずに、パジャマを持参すること」と、山田先生。これも寝返りのしやすさが大きく関わっている。

「寝返りしやすい服装は、ほどよくフィットしたサイズの衣類です。ホテルに備えられている寝巻きは、さまざまな体型の人に合わせるために大きめのサイズが用意されていますよね。浴衣タイプの場合は、体にまとわりついて寝返りが打ちづらくなります。それが睡眠の妨げになるのです」

シーツと衣類の摩擦を少しでも減らすことが重要だ。寝るときの靴下も摩擦によって動きづらいため、できるだけ避けること。

「夏でも足が冷えて、靴下を履いていないと眠れないという人もいますが、寝返りがきちんと打てれば、体内の血液やリンパ液の流れがよくなり、冷え性も解消されることが多いんですよ」

3. ビシっと織り込まれた掛け布団はぜんぶ剥がす

きっちりベッドメイキングされ、ビシっと織り込まれているホテルの掛け布団。見た目はとても美しいけれど、寝るときはすべてはがして使うのが快眠への近道。山田先生はこう説明する。

「ビシっと織り込まれたシーツの中は窮屈で、とても寝返りを打つことができません。まずは、織り込まれた布団を足元まで全部はがしてください。使わない枕やクッションが複数ある場合、邪魔になるので、すべてベッドの上から片付けましょう」

掛け布団は、摩擦の少ないハリのある生地が理想的。生地のまとわりつきを減らすことで、寝返りが打ちやすくなるのだ。

「やわらかくて肌触りが気持ちの良いものを好まれる方が多いですが、眠りにつきやすい一方で、生地がまとわりついて寝返りしづらくなることもあります。快眠にとって大事なのは、入眠時ではなく、眠りについた後なんです」

4. パートナーと一緒に泊まるときは、ダブルではなくツイン

「カップルで宿泊するなら、ダブルではなく、ツインのお部屋を選んでください」と山田先生。それはなぜだろう?

山田先生によると、人は寝ている間にも、無意識のうちに一緒に寝ている相手を気遣い寝返りを打たなくなったり、ベッドの隅っこに寄ったりと、リラックスできない状態が続くのだという。たとえば自宅でも、赤ちゃんや飼っているペットと一緒に寝るという人も、同じように緊張した状況で眠ることになる。

「実際、睡眠中にカメラを回して撮影してみると、不思議なくらい寝返りの回数が減るんです。寝返りが楽に打てなければ、質のいい睡眠がとれずに、寝覚めもスッキリしません」

腕枕は、精神的にリラックスできそうだが、どうだろう?

「腕枕なんてもってのほかですよ。“ハネムーン・パルシー”という病名をご存知ですか? 長時間腕枕をして、腕の神経が麻痺してしまう病気です。新婚旅行中に起こることが多いことから、その名がついています。腕枕する側もされる側も、睡眠にとっていいことはないのです」

快眠のヒケツは「寝返り」にあり。マットレスも重要

快眠のコツは、いかに楽に寝返りが打てるかにある。だからこそ、山田先生は寝返りの打ちやすい寝具や服装、環境を重視しているのだ。

寝返りは体内の「体液」「血液」「リンパ液」の流れを促す重要な役目がある。人が寝ている間に寝返りを打つのはそのためだ。寝返りが多いと、“寝相が悪い”と言われがちだが、そうではない。人によって異なるが、ひと晩で20〜30回が適正な寝返りの回数だといわれている。

「寝返りを打つたびに体が覚醒してしまうようでは、質の良い睡眠とは言えません。旅先でも、寝具や着るものなど、“寝返りしやすい環境”づくりが大切なのです。寝具は、枕のほか、マットレスも重要です。低反発タイプのマットレスは、体が沈み込むので寝返りが打ちづらくなってしまいます。私は体が沈み込みすぎない適度な弾力性のマットレスパッドを推奨しています」(山田先生)。

今回、山田先生に教わった快眠のコツは、旅先だけではなく自宅でも応用できるものばかり。最近では、眠りに関心の高い人が増えており、こだわりの寝具を揃えるホテルも増えてきているようだ。従来のベッドに、高機能マットレスパッドを敷いて、寝返りしやすい環境を整えているホテルもあるのだとか。

山田先生のアドバイスと合わせてチェックしておけば、きっと旅先でもぐっすりと眠れるだろう。