[9日 ロイター] - 米アップルは9日、待望の「アップルTV」新モデルを発表し、お茶の間向け製品市場を制覇する戦略を垣間見せた。
新型アップルTVはアプリ配信サイト「アップストア」を完全搭載し、音声認識機能「Siri(シリ)」やタッチ型リモコンを導入した。
しかし家庭向け製品市場では米アマゾン・ドット・コムやロク社が提供するより安い製品との間で激しい競争にさらされそうだ。
新型アップルTVのセット・トップ・ボックスは10月末に149ドルで発売される。
アップルは既に、スマートフォンの「iPhone(アイフォーン)」などを通じてあらゆる場所で番組を見られるようにすることで、テレビ番組の視聴方法に変革を起こした。しかし家庭のお茶の間は今でも各社が制覇にしのぎを削る場所。キャンター・ワールドパネル・コムテックの調査責任者兼米事業統括、キャロライナ・ミラネージ氏は「聖杯」と表現する。
投資家はアップルに対し、売上高の3分の2近くを占めるアイフォーン依存を減らすよう求めてきた。
アナリストによると、アップルTVは重要な収益源になる可能性があるが、鍵を握るのはアプリ開発とサービスからの収入だ。業界専門家はアップルが複数のケーブルチャンネルを束ねるストリーミングTVサービスを開発中だとしているが、9日の発表には盛り込まれなかった。
ハイテク調査会社IHSは、アップルTVの2012年モデルは端末価格99ドルに対し66.15ドルの製造コストを要し、他のアップル製品に比べて利幅がずっと小さいと推計している。IHSのアナリスト、ケビン・ケラー氏は、新型も同様に「コンテンツ重視モデル」になると予想する。
一方、DCMベンチャーズのゼネラル・パートナー、ジェーソン・クリコリアン氏は、新たなアップストアにより、従来閉ざされた環境にあったアプリ開発が数千人の開発者に開かれたと指摘する。
「ハリウッドの精鋭が、アップルTVにつながれた家庭のテレビ画面向けコンテンツ配信に知恵を絞るようになれば、テレビ視聴の新たな世界が開けるだろう」とクリコリアン氏は語った。
ロクもアプリ開発ではオープン型のプラットフォームを採用している。しかし「信者」ユーザーを抱えるアップルの方が優位だとアナリストは指摘している。
新型アップルTVは、見る番組を探し出すという、テレビ視聴で最もイライラさせられる問題に切り込んでいる。Siriを使えば、例えば「ジェイソン・ベイトマンの映画が見たい」と声に出すだけでいい。
しかしこの点でアップルは追い上げる立場だ。ロク製品やアマゾンの「ファイアTV」、コムキャストの「X1」は既に音声検索機能を備えている。
新型アップルTVはまた、ゲーム機能にも力を入れている。アイフォーンや「iPad(アイパッド)」と同じ基本ソフト(OS)を採用することで、ゲーム開発者が利用しやすくなっている。
アップルTVの最大のライバルは、今なおメディアプラットフォームとして支配的地位にある従来のテレビセットかもしれない。ただ、ニールセンのデータによるとセット・トップ・ボックスやゲーム機器などストリーミング端末の利用はあらゆる世代で増えつつある。
最も利用率が高いのは「ミレニアル世代」と呼ばれる18歳から34歳で、1四半期にストリーミング端末を利用する比率は30%前後、利用日数は23日で、1日の利用時間は2時間半となっている。
(Julia Love and Lisa Richwine記者)