【TSUTAYA図書館】TRCとCCCの「関係解消」なぜ? 海老名市は会見へ

公共図書館の指定管理者最大手企業である「図書館流通センター」(TRC)が、10月に「TSUTAYA図書館」としてリニューアルオープンした神奈川県の海老名市立中央図書館で、共同事業体であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との協力関係を解消すると報じられた問題で、海老名市は今週中にも会見を開く。海老名市では一連の問題収束を図るとみられる。
猪谷千香

公共図書館の指定管理者最大手企業である「図書館流通センター」(TRC)が、10月に「TSUTAYA図書館」としてリニューアルオープンした神奈川県の海老名市立中央図書館で、共同事業体であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との協力関係を解消すると報じられた問題で、海老名市は近く会見を開くことになった。報道を受けて、ネットでは不安の声が上がっており、市長選と市議選を11月に控えた海老名市では一連の問題収束を図るとみられる。

■違いすぎた「図書館に対する考え方」とは?

海老名市立中央図書館は、スターバックスや蔦屋書店が入った佐賀県の武雄市図書館に次ぐ第二の「TSUTAYA図書館」として開館したばかり。しかし、9月の市議会でCCCによる選書リストが明らかになり、古い雑誌などが入っていたことや、通常の図書館で多用されている分類を使わずに行った独自分類が使いづらいことなど、CCCの図書館運営に批判が集まっている。愛知県小牧市でもCCCとTRCが共同事業体となり、新図書館計画が進められていたが、「TSUTAYA図書館」への不安から、10月4日に実施された住民投票で反対が上回り白紙撤回が決まった

海老名市や小牧市で「TSUTAYA図書館」問題に巻き込まれた形のTRCは、全国で指定管理者や業務委託など432館を受託している業界最大手。海老名市立図書館でも、2014年にCCCとの共同事業体として指定管理者になる以前から、窓口業務などを受託してきた経験を持つ。一方、CCCは武雄市図書館で初めて図書館業界に参入した新参企業。そんなTRCとCCCの図書館に対する考え方の違いは、海老名市立中央図書館の改修以前から顕著だった。

ハフポスト日本版では2014年4月に海老名市立中央図書館の館長に就任したTRCの谷一文子会長にインタビューを行っている。そこで谷一会長は、「新しい図書館がオープンしたら大勢の利用者の方がいらっしゃるのは当たり前なので、改修をしていない状態でも、民間が入ったことによってこれだけ変わったとソフトの部分でもお見せたいと思います。自分なりの理想の図書館を実現させたい」と発言。海老名市立図書館の郷土資料に着目し、海老名市の文化や歴史を掘り下げ、「地域のアイデンティを大事したい」と抱負を語っていた。

海老名市立図書館には、「TSUTAYA図書館」となった中央図書館の他にも、分館の有馬図書館がある。また、市内小中学校の学校図書館の支援にも力を入れる体制づくりもされてきた。中央図書館だけでなく、これらの図書館すべての指定管理者として、図書館のノウハウを持つTRCと武雄市図書館でその空間演出が注目されたCCCには、それぞれの持つ「長所」を組み合わせた図書館運営が期待されていたはずだった。

しかし、中央図書館の改修工事期間を終えてフタを開ければ、中央図書館の館長にはCCCの高橋聡・図書館カンパニー長が就任。中央図書館はCCC、有馬図書館はTRCがそれぞれ管轄するという「分業」が行われ、TRCの谷一会長は、両館を束ねる「統括館長」というポストに就任していた。谷一会長が改修前に語っていた理念は、実際にリニューアルオープンした「TSUTAYA図書館」で共有できていたとは言いがたい状況だ。

そうして、「分業」に至った背景には、報道されているような図書館に対する考え方の違いがあったわけだが、そのひとつに雑誌や郷土資料の取り扱いがある。CCCが担当する中央図書館では、蔦屋書店が約600タイトルの雑誌を中心に書籍販売を行う一方で、以前は148タイトルあった図書館の雑誌は51タイトルに減らされた。

しかし、雑誌のバックナンバーが閲覧できることは、書店にはない図書館の強みでもある。そのため、TRCが担当する有馬図書館では、購読する雑誌のタイトルを増やして対応。2013年には67誌だったが、中央館の改修工事にともなって104誌に増加、現在も休刊などで2、3誌が減ったものの、継続して購入しているのだ。他にも、中央図書館に所蔵されていた主だった郷土資料は改修工事中に有馬図書館に移され、現在も戻されることなくそのまま管理されている。

■11月15日の市長選、市議選に影響必至?

海老名市立中央図書館のオープン時、CCCでは武雄市図書館に端を発した選書問題の渦中にあった。9月30日に行われた会見で、CCCの高橋カンパニー長は反省の弁を語り、海老名市立中央図書館では「多くの本、多くの人、事に出会える、多くの価値観にである場を目指したい」と目標を語っていた。会見に臨席していたTRCの谷一会長も、「中央図書館はCCCの皆さんで運営しますが、ただ、まだまだ業務に慣れていないことがありますので、郷土資料やレファレンスについてお手伝いをさせて頂きたいと思っています」というフォローの発言をしていた。

海老名市立図書館では、TRCが図書館運営の経験が浅いCCCをサポートするとみられていただけに、関係解消の報道を受けて、不安の声が上がっている。

TRCでは現在、図書館を管轄する市教委と「良い方向に向かうよう協議中」としており、市教委は今週中にも会見を開き、今後の図書館運営について説明することになった。海老名市では市長選と市議選が11月8日に告示され、11月15日に投開票が行われる。本格的な選挙戦に向けて、「TSUTAYA図書館」問題が影響しないよう対応に追われている。

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