日本郵政・ゆうちょ・かんぽが上場 知っておきたい3つのポイント

国内ではトップのトヨタに次ぐ巨大グループが誕生した。

日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社が11月4日、東京証券取引所1部にそろって上場した。最大の注目点は、初値が売り出し価格を上回るかという点だったが、3社ともクリア。売り出し価格と初値をみると、

日本郵政:1400円→1631円

ゆうちょ銀行:1450円→1680円

かんぽ生命:2200円→2929円

となった。初値で計算した時価総額は、3社合計で15兆3960億円。国内ではトップのトヨタに次ぐ巨大グループが誕生した。NHKニュースなどが報じた。

今世紀最大の新規株式公開(IPO)とも言われる3社同時上場をどう見たらよいのか。抑えておきたい3つのポイントを紹介する。

簡単に株価が下がっては困る日本政府

郵政株の売却は、小泉政権下の2005年に成立した郵政民営化法で決まった。政府が日本郵政株の3分の2弱を手放すほか、日本郵政は2017年までにゆうちょ、かんぽの全株式を処分し民有民営を実現するなどとした。

しかし、2009年に民主党政権は、公共性を重視して上場方針を凍結。その後の2011年に東日本大震災が発生し、復興財源が必要になったため、日本郵政株の売却益でまかなおうと、再び上場させる方針に変わった。

政府は今後、数年に1回ずつ合計3回程度にわけて郵政株を売却し、計4兆円もの財源を確保するとしている。

引き続き株式を売却して財源を確保していかなくてはならないため、政府としては今後も株価を簡単に下げてはならないという思惑がある。

買うのは個人投資家。高い配当利回りが人気

今回売り出す株式は、国内向けが8割、海外向けが2割という配分。国内分のうち95%以上が個人投資家向けで、残りを機関投資家向けと、個人投資家の購入割合を多くした点が特徴。テレビCMなどで個人に上場をアピールするなど、異例な状態だ。

ロイターは機関投資家が日本郵政株に対し「冷めた目を向けていることもあるようだ」と分析。経営コンサルタントの大前研一氏は同グループが「半端じゃない収益を稼ぎ出している」としながらも、NTTやJR、JTなどの公社に見られた「成長シナリオ」がなく、「ジリ貧」と厳しく評価した

一方で、配当割合が2〜3%と高いことや、郵政グループの事業は長期継続する考えから個人投資家に人気となり、証券会社には初めて株を買う人からの問い合わせも急増。ほとんどの証券会社が、事前の株購入の募集を締め切った。個人投資家が郵政株の取引を行うことは、貯蓄から投資への流れを加速させたい安倍政権にとっては追い風だ。

上場後の課題?

では、郵政グループの今後の課題は何か。小泉政権時に郵政民営化担当相を務めた竹中平蔵氏は、「天下り官僚を一掃し、もっと民間の経営にしていく必要がある」と主張する

竹中氏は、郵政民営化を凍結した民主党政権時に天下りが進み、ゆうちょとかんぽにおける株式売却が不透明になったと指摘する。竹中氏は9月7日付け東洋経済でも、「株を100%売却しなければ、民間企業と同じ制度・法律が適用できない」とコメント。ゆうちょとかんぽの株式売却がすすめば、両社とも業務範囲を広げることができるが、売却が不透明になった結果、投資家も見通しを立てられないと懸念した。

郵政グループは今後、超低金利の国債を減らして、貸し出しや株式・外国債券といったリスク資産を増やす方針だ。このときに今のような体制で、リスクを管理しつつ収益を最大化する資産運用が出来るかが、今後の焦点になるだろう。

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