TSUTAYA図書館は何を目指すのか? CCCの責任者が語る現状と「未来」

さまざまな問題が指摘されている佐賀県の武雄市図書館や神奈川県の海老名市立中央図書館。両館を指定管理者として運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の図書館カンパニー長の高橋聡さんが11月11日、横浜市で開催された図書館総合展のフォーラムに登壇。両館の現状を報告するとともに、今後「TSUTAYA図書館」は何を目指すのかを語った。
猪谷千香

さまざまな問題が指摘されている佐賀県の武雄市図書館や神奈川県の海老名市立中央図書館。両館を指定管理者として運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の図書館カンパニー長の高橋聡さんが11月11日、横浜市で開催された図書館総合展のフォーラムに登壇。両館の現状を報告するとともに、CCCが手がける「TSUTAYA図書館」は今後、何を目指すのかを語った。

■「TSUTAYA図書館批判は、図書館新潮流に対する戦い」

フォーラムは「公共図書館の未来像」というテーマで行われ、高橋さんのほか、東洋大学の南学(みなみ・まなぶ)客員教授がパネリストとして登壇、コーディネーターは立命館大学文学部の湯浅俊彦教授が務めた。冒頭で論点整理を行った湯浅教授は、「「TSUTAYA図書館という言葉は、どうも批判的に使われている」」と指摘。「商業主義=営利主義=悪であり、非営利=公共性=善ととらえられている。武雄市図書館への批判は民間企業に対する官尊民卑の思想であり、CCCが取り組む図書館の新潮流に対する戦いなのかもしれないと思っています」と批判した。

続いて高橋さんは、武雄市図書館と海老名市立中央図書館はともに来館者数が増え、来館者アンケートも「8割以上の方にご満足頂いている」と説明。両館以外にも、2016年にオープンする宮城県多賀城市の図書館をはじめ、岡山県高梁市や山口県周南市などでTSUTAYA図書館の計画が進行中だが、「『開館時間延長』『年中無休』、『BOOK&カフェ』や『滞在型空間』、人や事から学べる『イベント』、『発見性』のある分類などを導入して、図書館の魅力化をはかっています」と話した。

■「選書や分類のミスに起因する疑念を晴らしていきたい」

一方、高橋さんはTSUTAYA図書館批判に対し、「昨今、色々な報道があることを真摯に受けて止めております」と反省の意を表した。

「武雄市図書館では、リニューアルオープンする前に新規購入した1万冊の本に地域性を加味できていなかったり、時代の潮流に合わない本が購入されていたりというご指摘を受けています。こちらに関して、確かに不備があったと反省しております。海老名市立中央図書館では、分類方法において、ご利用者様からわかりにくい、間違っている蔵書がいくつかあるというご指摘を受けています。これも真摯に受け止め、改善してまいりたいと思います。武雄市では現在、13人の司書とともに選書を行い、海老名市では1日も早く適正な状態に戻るよう、早急に改善を努めてまいります」

また、選書や分類に対する批判以外にも、Tカード導入による個人情報の扱いなどの「疑念」があるとして、「疑念は図書館として大切な選書、分類ということに対するミスに起因していると思っております。早急にこの2点の改善を行い、晴らしていきたい」との認識を示した。

反省の意を語る高橋さん(右端)(主催者によるUstream中継より)

■「武雄市図書館への情報公開請求は意図的なものを感じる」

次に、南客員教授が「図書館は利用されていない」と指摘。「社会的資源である公共図書館を幅広い人に使っていただくことが目的となる」として、現在、増えつつある民間企業による図書館運営について「そもそも自治体直営は成り立たない時代。これから先、日本では不可能だと考えている」と語った。

また、「なぜ武雄市図書館の選書で情報公開請求が行われるのか。意図的なものを感じてます。CCCは50年ぶりに図書館のモデルを打ち破った。自治体直営の図書館が主だと思っている方にとっては大変な危機感がために、情報公開請求が行われたのだろう」という自説を展開。「貸出中心の図書館から、快適な滞在型図書館にしたことがCCCの価値。公民連携がこれからの世の中にふさわしいと思っています」と評価した。

高橋さんは、これまでの図書館運営を振り返り、「自分たちに課題があるとすれば、図書館に多くの方々に集まって頂いたが、まちづくりのエンジンになっているかがまだ提示できていない。まちづくりにどう参入できるかが、一番問われているのかと思っています」とした。

■「本物に成長できるストーリーを」

では今後、TSUTAYA図書館はどのような「未来像」を描いているのだろうか。高橋さんはフォーラムの最後、「本物」に成長できるストーリーを示した。「カフェや本を読む目的で来た人に、他者の自主教育活動をかっこよく見せることを意識しています。それを見た方が、学びや市民活動の実行に参加して、『本物』になっていく。そういうモデルを作りたい。この理念にもとづく新しい図書館像が、地域において図書館の役割を提示していくことになると思っています」

高橋さんが示した「本物に成長できるストーリー」(主催者によるUstream中継より)

また、「今回、一連のことで感じているのは、コアに置いておくべきものは外さず、忘れず。その中で時代感、利用者の方の考えていることをいかに汲みとっていくか。常に変化して、多様性を持つということを考え方の根幹に置くと、新しい求められている図書館像が作っていけると思っています」と語った。

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