子供の頃に夢みた、スター・ウォーズの「あのメカ」が現実に

子どものころのおとぎ話に命を吹き込もうとしている大人たちを、止めることはできない。
Video by Tom Compagnoni

特殊効果の専門家、技師のデイブ・エヴェレットは、仲間たちに向けて誇らしげに親指を立ててみせた。機械に「命」を与えようと懸命に働く仲間たちだ。

「みんな思い切り楽しんでいます」と言って彼は微笑んだ。

子どものころのおとぎ話に命を吹き込もうとしている大人たちを、止めることなどできない。2週間に1度、エヴェレットは同じ趣味に生きる仲間たちと共に集まる。彼らは、誰もが知っている映画やテレビに登場したロボットたちの、実際に動くレプリカを作り上げている。ドラゴンだって作ってしまうのだ。

想像してみてほしい。遠隔操作で動く実寸大のR2-D2や、『ロスト・イン・スペース』に登場する7本足ロボットのB-9、火星探索船、SFテレビドラマ『ドクター・フー』のダーレク。それから、お祭り会場で大きな炎を吐くドラゴンや、極めつけは、保険を気にする人たちに向けてタバコを吸うロボット…。

「みんな誰でも、ロボットが出て来る映画やテレビを見て大きくなったでしょう。私たちはずっと、そんなロボットを自分の手で作ってみたいと思ってきましたし、いまやそれができる年になったのです」とエヴェレットはハフポスト・オーストラリアに語った。

「映画で見たロボットと同じものを、片っ端から作ってみるつもりです。映画と同じように頭が動き、光る部分はきちんと光るものを」。

FX(特殊効果)が専門のデイブ・エヴェレットは、人がロボット作りに夢中になるのは「冷たい機械に命を吹き込むことができる」からだという。

「一般に思われているほど難しいことではありません」と、エヴェレットや仲間のロボット製作者ドリュー・ピアースは語る。実際、彼らが製作に使っているのは、ノートパソコンを何台か乗せた作業台と、ありきたりの電子部品や道具類だ。

R2-D2を自分で作り始めるのに必要なのは、ただ2つのことだけ。カッターナイフが一本と自由に描いた下絵に、あとはあなたが何か月もかかってプラスチックの板からいろいろな形を慎重に切りだしているのをみても、文句を言わず放っておいてくれる家族があればいいだけだ。

「本当に簡単なんです。でも、なんでも同じことでしょうが、8割がたの時間は、仕上げの2割の仕事に費やされます。正しく色を塗り、こまごまとした細部を作り上げる仕事です。これに何か月もかかるのです」とピアースは話してくれた。

「家の食卓の上ででも作ることができます。あなたの頼みを奥さんが聞いてくれれば、の話ですが」。

「つまり、動くロボットを作るのはケーキにデコレーションするのと大して変わらないのです」。

ドリュー・ピアースは家で作って来たR2-D2に頭部を取り付け、リモコンでそのドロイドの動きを見せてくれた

このプロの製図士は、5年前に製作を始めてから、ずっとその作業に熱中し続けている。そして作業室では、宇宙メカのドロイドたちがぶんぶん音を立てて動き回りながら、ピアースに「ハロー」と言ってすっと寄ってくる。「ビー・ブー」と機械音を立てながら。

「スターウォーズの第1作が公開されたとき、私は10歳でした。最初の方のシーンで、R2-D2が廊下を近づいてくる場面があったのです」と彼は言った。

「当時、こんなレベルの高いロボットが登場したのはこの映画だけでした。そんなふうに描かれたことはなかった。子どもながらびっくりしました。そして部屋にR2-D2のポスターをずっと貼って、いつかこの手で作ってやる、と思ったものです」。

この遠隔で操作可能なR2の動きの秘密は、ほんのわずかな(しかし正確な)ロボット工学の知識と、どうすればうまく動くかを見抜こうとする真剣な目だ。

R2の頭部にあたる金属製ドームの動力源は、中古車の窓用モーターだ。このドロイドの「背骨」になっているポリ塩化ビニル製パイプに、しっかりとくっついている。

「SID」- プログラム可能なおしゃべりロボット。シドニーロボット工房製

シドニーロボット工房は、現在、シドニーの西、グレイズヴィルにある。紆余曲折はあったものの、12年ものあいだ活発に活動を続けてきた。

はじまりはエヴェレットの家のガレージからだった。友人が企画を持って彼に助けを求めてきたのだ。そして、瞬く間に10人の友達が集まった。

「おそらく、なんの経験もない分野を、みんなそれぞれに探求し始めたのだと思います。ロボット作りなんて一人では誰もやろうと思わなかったでしょうから」とエヴェレットは語った。実際、仲間のほとんどは初めロボット工学とはなにかも知らなかったのだが、すぐにスキルを身に付けたのだという。

「動き、知覚するロボットという領域が広がっていくとすると、ますます面白いことになるでしょう。冷たいロボットの身体の中に、ほとんど命のような輝きを見つけられるようになるのですから」。

このロボット屋たちは、ロボットが人間の生活の中心に躍り出そうとしている世界にあって、お金もうけなど考えず、ただただ楽しくロボットとたわむれているのだろう。

2015年11月27日、中国はテロリズムに立ち向かうためと称して、おもちゃサイズの攻撃用ロボットを発表した。ドローンはすでに実際の戦争に配備されているし、ビーチではサメを監視している。商品の配達にも使われ始めてもいる。

オーストラリアは、ロボカップ2019のホスト国となる。これは世界規模のコンペで、「FIFAの公式ルールに則ってワールドカップの優勝チームと戦って倒すような、自律的ヒューマノイドのロボットからなるサッカーチームを、2050年までに編成する」ことを目標に掲げて行われる。

エヴェレットは、ここ数年のうちにロボットがもっと毎日の生活の中に入ってくるだろうと予想している。でも彼は、そうしたロボットが生まれることを今のところ恐れてはいないという。

「ありがたいことに、今のところ、ロボットがあなたに引き起こす危険のほとんどは、あなただけに関わることがらです。ある晩ロボットが真夜中に突然訪ねてきたとしても、それだけなら別に怖くないでしょう」と彼は語った。

この記事はハフポスト・オーストラリア版に掲載されたものを翻訳しました。

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