世界で活躍するダンサー・菅原小春さんが語る、海外と日本のダンス事情

誰も見たことがないものをつくりたいので、それを見つけてクリエイションしていく作業が好きなんです。
TOKYO, JAPAN - NOVEMBER 26: Dancer Koharu Sugawara attends the VOGUE JAPAN Women of the Year at the Meguro Gajoen on November 26, 2015 in Tokyo, Japan. (Photo by Ken Ishii/Getty Images)
TOKYO, JAPAN - NOVEMBER 26: Dancer Koharu Sugawara attends the VOGUE JAPAN Women of the Year at the Meguro Gajoen on November 26, 2015 in Tokyo, Japan. (Photo by Ken Ishii/Getty Images)
Ken Ishii via Getty Images

世界的ダンサー菅原小春が語る、世界と日本の異なるダンサー事情

リアーナや少女時代など、様々なアーティストの振り付けやバックダンサーとして活躍する菅原小春。スティービー・ワンダーと共演した『TDK』のCMや、今年6月に放送された『情熱大陸』(TBS系)をきっかけに英国・ロンドンで結成された人気ユニット・イヤーズ&イヤーズのミュージックビデオ出演も果たし、世界中からのオファーが後を絶たない。その菅原にダンスに賭ける想いや世界のダンス事情について話を聞いた

◆SNSに投稿した動画がきっかけで仕事が増えた

――今回はテレビ番組でしたが、映像がきっかけで仕事が決まることは多いですか?

【菅原】 今は、だいたいそうです。YouTubeやFacebookなどのSNSに投稿した動画を観た方が、「何だあの動きは!」って興味を持って連絡をくれます。そういう流れで、今年は三浦大知くんやEXILEさんなどのミュージックビデオにも出演させていただきました。

――SNSを活用するようになったきっかけは?

【菅原】 最初は6年くらい前で、単に面白くて観ていただけだったんです。海外のダンサーの動画を見て、LAとかNYにはこういうダンサーがいるんだ! ってわかって。じゃあ実際に行ってみたいと思って、高校卒業と同時にLAに行きました。それで、LAでできた友だちから「ビデオは撮ってないの?」って聞かれて、以前ショーに出たときのビデオを見せたら、「これはネットに載せたほうがいい」「載せたらスゴイことになるから」って言ってもらって。それでFacebookに載せたら、海外のいろんな人がシェアしてくれるようになって。最初はLAだけだったのがカナダまで広がり、そこからシンガポール、イタリアとどんどん動画をシェアしてくれる人の輪が広がっていって。そのなかで、ワークショップに誘ってもらったり、お仕事の依頼が来るようになりました。

◆海外はダンスそのものにフォーカスが当たっている、でも日本は…

――世界30ヶ国以上で活動されていると菅原さんから見て、海外と日本ではダンサー事情はどう違いますか?

【菅原】 日本のようにアイドルとかジャンルではなく、海外はダンスそのものにフォーカスが当たっていると感じます。一般の人もみんな注目していて、ダンス番組も多いし。専門のエージェンシーもあるし、大規模なコンペティションも頻繁に行われています。だからと言って、私が率先して日本をそういうレベルにしていきたいとか思ってるわけではなくて。むしろそういうことすら越えて、もっと違った次元で活動していきたいんです。誰も見たことがないものをつくりたいので、それを見つけてクリエイションしていく作業が好きなんです。日本は右向け右で、どうしても枠の中で踊ってるイメージですね。その枠をボンって壊してグチャグチャにしてもいいから、枠を越えて個性を出している人は、本当に少く感じます。なので、そういう人をたまに見つけたときは「うわっ!」って思います。テクニックって練習すれば誰でも身につくものですが、そこからどう色付けしてクリエイトして、自分というものを知って、いかにセルフプロデュースしていけるかが大事だと思います。

――そんな日本と海外の違いも分かったうえで、菅原さんのスタンスはどういうものですか?

【菅原】 「ダンスはダンスじゃない」というのが、私のモットーです。世の中から言われるいわゆるダンサーと言うのは、誰々の後ろで踊ってたとかCMにちょっと出てたとか、そういう人のことを指しますが、「それは何でだろうな?」って思うんです。たとえばダンサーが服を着たら、その服の見せ方の幅をモデルさんよりも広げられたりだとか、持ってるパワーをいろんな方向に向けられるのに、その可能性があまり認められていないと感じます。なので、それを証明したいと思っていて。

――アーティストの歌や画家の絵のように、ダンスを作品やメッセージとして伝えていきたいと?

【菅原】 言葉は言葉でしかないけど、何かを行動で示してもらえたら、みんな嬉しいと思うんです。たとえば口約束って簡単にできるけど、それを行動で示すのはすごく大変なこと。私はこういう人だ、こんなにスゴイんだって口で言うのではなく、言わなくても自分のダンスや表現だけで、相手に伝わったり心に届けられたらいいなと思っています。

◆5年経ったら心も体も持たないくらい……今突っ走っています

――ちなみに『情熱大陸』の中で、「5年経ったら辞める」と言っていましたが。

【菅原】 5年経ったら心も体も持たないくらいになって……というくらいに今突っ走っていますという意味で言いました。そのくらい1つひとつ取り組まないと気が済まない性格なんです。どんなに疲れていても100%出して、それで身体が折れても明日死んでしまっても、悔いが残らないように日々全力を尽くしていたいという気持ちのあらわれです。

――目標や目指すものはありますか?

【菅原】 目標とする人はいません。常に自分が目指す自分になりたいと思っています。自分の感情にどれだけ勝って、強くなって、どれだけ課題をクリアしていくかということ。だから、ここまでやったらゴールみたいな、具体的なものはないです。今興味あることに対して、全力でやるだけ。昨日できなかったことを今日はできるようにして、ダンスの幅を少しずつでも広げていって。その姿をより多くの人に知ってもらって、クリエイションしている感覚を自分でも楽しんでいたいです。

(文:榑林史章)

Misty Copeland

Ballet Dancers Changing the Landscape

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