封鎖されたシリアの町、飢餓に苦しむ子供たちに3カ月ぶりの支援物資

やつれた子供たちの写真は、世界中の懸念を集めている。
Syrian children wait on the outskirts of the besieged rebel-held Syrian town of Madaya, on January 11, 2016, after being evacuated from the town.Dozens of aid trucks headed to Madaya, where more than two dozen people are reported to have starved to death, after an outpouring of international concern and condemnation over the dire conditions in the town, where some 42,000 people are living under a government siege. / AFP / LOUAI BESHARA (Photo credit should read LOUAI BESHARA/AFP/Getty Images)
Syrian children wait on the outskirts of the besieged rebel-held Syrian town of Madaya, on January 11, 2016, after being evacuated from the town.Dozens of aid trucks headed to Madaya, where more than two dozen people are reported to have starved to death, after an outpouring of international concern and condemnation over the dire conditions in the town, where some 42,000 people are living under a government siege. / AFP / LOUAI BESHARA (Photo credit should read LOUAI BESHARA/AFP/Getty Images)
LOUAI BESHARA via Getty Images

アサド政権の軍に包囲されているシリアのマダヤの町に1月11日、約3カ月ぶりとなる支援物資が到着した。しかし、今回運び込まれた物資は約1カ月分。補給路を絶たれた町では餓死者が続出しているとの報道があるが、アサド政権軍側は住民の避難を許していない。

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SYRIA-CONFLICT-AID-MADAYA

マダヤの町に救援物資が届いた

現在のマダヤは事実上、屋根のない牢獄だ

ブリス・デ・ル・ヴィンヌ MSFオペレーション・ディレクター

マダヤは首都ダマスカスから約40キロ離れたレバノン国境の町。2015年7月にアサド政権軍と、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラに包囲された。政府軍は町の周囲に地雷を埋め、約4万2000人を閉じ込めた。

国境なき医師団(MSF)の1月7日の発表によると、マダヤでは2015年10月18日に食糧配給が1回行われた後は完全な封鎖状態となり、12月1日以降、23人の患者がMSFが支援している現地の医療施設で餓死した。1歳未満が6人、5~60歳が12人、60歳以上が6人となっていた。

国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は、マダヤ住民の話として次のように伝えている。

マダヤ住民、ルーエイさん(2016年1月7日)

完全な食事を撮ったのは、1カ月半前のことです。今は水と葉っぱが主な食べ物です。冬が間近で、木の葉もなくなるでしょう。だから、生き延びることができるかはわかりません。お金があれば食べ物も買えるのですが、お金も尽きかけています。食糧がとても高いのです。私は数週間前にお金がなくなりました。

Amnesty International「'In Madaya you see walking skeletons': Harrowing accounts of life under siege in Syria」より 2016/01/08

別の住人は、お米や砂糖1キロあたりの価格が10万シリアポンド(約5万3000円)するとして「買える人がいるでしょうか?」と訴えた。MSFの担当者は、この状態を「現在のマダヤは事実上、屋根のない牢獄だ」と語った

これに対してアサド政権とヒズボラは、マダヤに餓死者はいないと反論した。国連はシリア国内には約450万人が、外部からの接触が困難な地域で暮らしていると見ており、うち15カ所に住む40万人は、アサド政権軍が包囲している地域に住んでいるとして、援助を続けるとしている。

■国際社会からの圧力で支援物資が到着。しかし…

この惨状に国際的な批判が高まり、シリア政府は物資の搬入に同意。11日に、国連や赤十字国際委員会(ICRC)の支援物資を載せたトラック49台が到着したAP通信がによると、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のサジャド・マリク氏は「寒い日で雨が降っていましたが、食料や毛布を見て、人々は興奮していました」とこの時の様子を紹介した。マダヤでの物資の配給を監督したICRCの広報担当、パウエル・クリジエク氏は「小さな女の子が近づいてきて、『食べものを持ってきたの?』と聞かれました」と話した。

物資の到着を待つ人々 2016年1月11日(Photo credit should read STRINGER/AFP/Getty Images)

この日、到着した物資は4万人の1か月分の食料。国連人道問題調整事務所(OCHA)のスティーブン・オブライアン担当事務次長はこの日、ニューヨークの国連本部で記者団に対し、オブライアン氏は今回の活動について、「一度限りでも、今回だけ特別ということでもあってはならない」と主張。また、マダヤには約400人が栄養失調などで命の危機にあるとして、「ただちに退避させる必要がある」と訴えた。

一方で、シリア国連大使のバシャル・ジャファリ氏は、マダヤで飢餓が起こっていることを否定。特にアラブのテレビ局が、「これらの主張や嘘を捏造している」と主張した。国連本部でジャファリ氏は、「武装テロ集団」が救援物資を盗み、法外な価格で転売していることを強く非難した。

AP通信の記者は、11日に救援物資を乗せたトラックがマダヤに入っていくのを見たとしているが、ジャーナリストが救援団体に同行することは許可されなかったと明かした。その上で、町の入り口には5人の子供を含めた市民が、寒さに震えながら町の外に連れ出してもらうのを待っていたとして、地元で教師をしているサフィヤ・ゴッシュさんの言葉を伝えた。

「この町から出たいです。マダヤには何もありません。水も無く、電気も無く、燃料や食料も無いのです」。

なお、11日にはマダヤと同量の支援物資が、北部イドリブ県のフアとケフラヤにも届けられた。BBCによると、この2つの町は反政府グループとアルカイダ傘下のアル=ヌスラ戦線によって包囲されているとされる。

シリアの飢餓の状態のレポートや、やつれた子供たちの写真は世界中の懸念を集めている。1月25日、スイスのジュネーヴでアサド政権と反体制派の代表による和平交渉が開催される予定だ

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