台湾人K-POPアイドル謝罪、騒動収まらず 中国・韓国はピリピリ?

騒動は収まる気配を見せない。
SEOUL, KOREA- NOVEMBER 24: (CHINA MAINLAND AND SOUTH KORIA OUT)TWICE attend the opening ceremony of Snoopy dream tree on 24th November, 2015 in Seoul, South Korea.(Photo by TPG/Getty Images)
SEOUL, KOREA- NOVEMBER 24: (CHINA MAINLAND AND SOUTH KORIA OUT)TWICE attend the opening ceremony of Snoopy dream tree on 24th November, 2015 in Seoul, South Korea.(Photo by TPG/Getty Images)
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韓国のアイドルユニット「TWICE」で活動する台湾出身の周子瑜(ツゥイ、16)が、テレビ番組で台湾を実効支配する「中華民国」の旗「青天白日旗」を持ったとして謝罪した問題は、1月16日に投開票された台湾総統選と絡んで、中国、台湾、韓国で大きな話題となった。

中台関係や中韓関係と絡むデリケートな問題をはらむだけに、台湾総統選が終わっても、連日、報道が続いており、騒動は収まる気配を見せていない。

「ツゥイ問題」の余波と背景についてまとめた。

■騒動の経過

2015年11月、ツゥイは「青天白日旗」を持って韓国のテレビに出演。これを台湾独立に批判的な作曲家の黄安が批判したことから、中国内でツゥイへの批判が殺到した。所属事務所は2016年1月14日、ツゥイが謝罪文を朗読する動画を公開。しかしこれが、逆に台湾人の民族意識に火をつける格好となり、台湾総統選は中台協調を掲げる与党・国民党の惨敗に終わった。

■中国は神経質に?

1月16日夜、台湾総統選で当選した民進党の蔡英文主席は、次期総統として初の記者会見で、この問題に言及した。産経ニュースが伝えている。

「この2日間、あるニュースが台湾社会を揺るがせている。韓国でタレントとして活動している16歳の女性が、中華民国の国旗を持ったシーンが攻撃を受けたのだ。このことは党派を越えて多くの台湾人の不満を引き起こした」

蔡氏は「この国の強さと団結をもって域外の問題に対処することの重要性を永遠に思い起こさせるだろう。これは私の総統として最も重要な責任である」と、台湾の民族意識に訴えた。

総統選は終始、国民党の劣勢が伝えられており、選挙戦終盤に火が点いたツゥイの問題が勝敗に決定的に作用したというよりも、若者の投票行動に一定の影響があったとの見方がある

一方、中国のTwitterにあたる微博では、「蔡英文」「周子瑜」の2語が検索できなくなったと報じられている。この問題に絡んで中国大陸のネットユーザーが台湾の民族主義を批判し、一部のメディアが煽る動きもみられたことから、この騒動がネットで拡散し、中台間の感情的な対立が高まることを中国政府が恐れ、検閲に乗り出したとも考えられる。

TWICEが所属する芸能事務所「JYPエンターテイメント」のホームページは、1月19日未明の時点で閲覧できなくなっている。D-DOS攻撃を受けているとの情報もある

戦々恐々とする韓国

TWICEは2015年にデビューした女子9人組。メンバーはテレビ番組のオーディションで選抜された。韓国出身5人のほか、日本出身3人、台湾出身のツウィからなる「多国籍アイドル」だ。

「少女時代」や「KARA」など、日本や中国を含むアジア各国で活動するK-POPグループは数多い。ここ数年は韓国出身者だけでなく、アジア各国の出身者をメンバーに含めるグループが増えている。

TWICEと同じ事務所の男性7人グループ「GOT7」には、アメリカ、香港、タイ出身が1人ずついる。別の事務所だが、2012年デビューの男性9人アイドルグループ「EXO」には中国出身が計4人在籍した(現在は1人)。トラブルも起きていて、EXOは過去の中国出身メンバーが「(人種)差別的待遇」や「不合理なギャラの分配」などを理由に事務所を相手取って訴訟を起こした

韓国の毎日経済新聞は、

最初から東アジアのマーケットを狙って多国籍アイドルグループを構成するのが最近の傾向なので、第2のツウィ問題はいつでも再発しうる。

と懸念する業界関係者の声を伝え、「ツウィ事件がきっかけとなり、彼らの反中国発言や行動が、中国市場進出の足かせにならないか、憂慮がふくらんでいる」と報じている。

実はツゥイが所属するJYPエンターテイメントの社長も、ツゥイに中国での批判が殺到した後、再三、微博で釈明コメントを出していた。しかし批判が一向に収まらず、TWICEの中国でのテレビ出演や広告モデル契約がキャンセルされるなどの影響が出始めたため、本人をビデオに登場させて謝罪させたとみられる。

■謝罪は事務所の強要か

16歳の少女に、政治的な問題を含む謝罪文を朗読させた事務所の対応も問題視する声が上がっている。

外国出身者らを支援する団体「韓国多文化センター」は1月18日、「深刻な人種差別と人権侵害」として、謝罪の強要の有無について国家人権委員会に調査を求めると明らかにした。「所属会社の社長が、中国のネットユーザーの過剰反応に屈服し、少女を謝罪の被告席に立たせた」と指摘した。

韓国のニュースサイト・OhMyNewsは、2013年に日本でAKB48の峯岸みなみが「恋愛禁止」に違反したとして、断髪して謝罪したことも類似例として紹介し、以下のように批判した。

「アイドルがたとえ商品となる運命だったとしても、その商品で利益を得る所属事務所と放送局という存在は、少なくともそのアイドルを人間として保護しなければならない。アイドルを通じて利益を得ておきながら、問題が起きると責任を逃れる姿は十分、大人らしくもなく、プロらしくもない」

記事では「すべての責任をツゥイという一人の少女に負わせる現状はとても残念だ」と指摘している。

これに対しJYPエンターテイメントは18日、「今回のツゥイの立場表明は、ツゥイが未成年のため、最初から両親と相談して」決めたと釈明。「個人の信念は会社が強要できることでもなく、してはいけないことであり、そのようなことはまったくありません」と、事務所からの謝罪の強要を否定した

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