社員の上下関係ない方がいい? 上司を廃止したらこうなった

上司が嫌いな人でも、思っている以上に上司を必要としているらしい。
AFP/GETTY IMAGES

何度思ったことだろう。上司がいなかったらもっと仕事がしやすくなるのに。

だが現実はそう単純でもなさそうだ。上司が嫌いな人でも、思っている以上に上司を必要としているらしい。

特にシリコンバレーに多いようだが「上司がいなくなれば、多くの従業員が素晴らしいアイデアを出すようになる」と考える人たちがいる。

それを実際に試した企業がある。靴や洋服のオンラインストア、ザッポスだ。2015年、ザッポスは起業家ブライアン・ロバートソン氏が考案した「ホラクラシー」という経営スタイルを導入した。ザッポスのトニー・シェイCEOは、社内を徹底的に透明化するためにホラクラシーを導入したと話している。

ホラクラシーでは従業員の上下関係がない。自分で仕事を決める。また、情報を上司や部下に伝える制度も無いため、従業員は積極的にコミュニケーションを取って現状を把握しなければいけない。

上司がいなくなって、どう変化したのだろう。

ザッポスが公表したデータによれば、ホラクラシー導入後、約1500人いた従業員の約20%が会社を去った。2015年春に会社がホラクラシー導入を発表した時点で、210人が早期退職を選んでいて、3月以降に少なくとも50人の従業員が会社を辞めたそうだ。

ニューリパブリック誌が掲載した、元ザッポス従業員クリス・コイ氏のインタビュー記事にはこう書かれている。

自己管理については反対しません、とコイは語った。実際、自分自身もキャリアを自己管理しながら生きてきたと彼は考えている。「問題なのは考え方ではなくてやり方なんです。私たちは、批判したりオープンな話し合いをしたりする文化を持っていません。無理やり積極的になれと言われても、急にオープンに話し合うような気持にはなれないのです」

スタンフォード・ビジネス・スクールのリンドレッド・グリーア教授は「人間は階級制度を嫌います。階級があるところには不平等もあるからです」と述べる一方で、「オフィスでの上下関係は、情報処理をスムーズにする」と話す。誰に情報を与えるべきかがはっきりするからだ。

一方で、多くはないがホラクラシーが成功している企業もある。金融サービス会社アーカテックシステムや、コンテンツプラットフォーム事業に携わるMediumなど、中小企業が多いようだ。

SNS管理サービス会社Bufferもホラクラシーを導入する予定だった。しかし、多くの従業員、特に新入社員には管理する体制が必要だと判断して導入を見送った。Bufferの共同設立者レオ・ヴィードリッヒ氏は「従業員は社内にそれぞれのポジションを持っています。それが対等でないということに気が付きました」とブログに書いている。重要でない従業員がいるということではなく、上下関係があると物事がスムーズに進むという意味だという。

しかし、人間が階級制度を好意的にとらえていないことを考えると「ホラクラシーのような制度には可能性がある」とグリーア教授は述べる。実際、教授はホラクラシーの基本的な考え方を好意的にとらえている。その一方で、組織を極端に構造改革してはいけないと研究が示唆していると説明し、こう述べている。

「社内の上下関係を完全に廃止してはいけません。不平等を減らす方法を探ることが大切なのです」

【UPDATE】

記事掲載後の1月28日、ハフポストUS版はホラクラシーを提唱しているホラクラシーワン社から次のようなメールを受け取った。

「階級制度」が必要だとする研究結果はありません。研究が示しているのは「構造作り」が必要だということです。組織の構造をつくるためには、上下関係が唯一の方法だと考えられがちですが、それは他の方法を知らないからです。ホラクラシーは、従来の方法に代る、よりわかりやすく柔軟な方法です。

メールには、ホラクラシーワン社のパートナー、オリビエール・コンパーニ氏の2014年のブログのリンクも含まれていた。ブログの中でコンパーニ氏は階級制度と構造作りの違いをこう説明している。

「ホラクラシーは単なる『上司がいない』システムではありません。従来の管理体制に比べて、ホラクラシーの下で組織の構造化や情報公開が進むことに、多くの人は驚きます」

ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。

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