児童結婚問題を啓発する動画の主人公が白人ばかりなのはなぜ?

啓発ビデオの中では、少女は西洋の伝統に則り、純白のウェディングドレスとベールに身を包んで通路を歩くという形でその門出を祝福されている。
UNICEF

近年、児童結婚に関する啓発動画は巷に溢れかえっている。

しかし、これら架空のお話に登場する花嫁たちと、現実世界で若くして嫁がされる少女たちの姿とは似ても似つかぬものだ。

ユニセフは3月15日、児童婚問題の啓発を目的とした動画をFacebook上で公開した。動画は2日間で1千万回以上視聴された。

この動画ではまず、結婚式当日、式に備える女性の様子が映し出される。髪をセットし、化粧を施され、白いウェディングドレスに身を包む。参列者たちの間の通路を進むと、そこには新郎が待っている。新郎が新婦のベールを取り、そこで初めて女性の顔があらわになる。花嫁はまだ幼い少女だ。

A storybook wedding?

This looks like a storybook wedding. Except for one thing...

UNICEFさんの投稿 2016年3月8日

「今年、1500万人以上の少女が結婚する」という字幕に続いて「18歳の誕生日を迎える前に」という文字が現れ動画は終わる。

この児童婚の描き方は重要な問題を浮き彫りにしている。ユニセフによれば、世界の20から24歳の女性のうち、4人に1人が18歳未満で結婚しているという。若くして結婚してしまえば、学校をやめざるを得なかったりDVの被害を受けるケースも増える。また妊娠中や出産時に死亡するリスクも高まる

これほど多くの人が視聴していることを考えれば、この啓発ビデオの役割は非常に大きいと言える。しかし、この紋切り型のビデオにはいくつかの重大な誤りがある。

このビデオに登場する少女は白人だ。しかし、現実の幼い花嫁たちの多くはサハラ以南のアフリカや南アジア諸国にいる。

このビデオに登場する少女は白人だ。しかしユニセフによれば、現実の幼い花嫁たちの多くはサハラ以南のアフリカや南アジア諸国にいる。それらの地域の住民は大部分が有色人種だ。児童婚の割合が高い上位10カ国は以下の通り。カッコ内は、現在20から49歳の女性のうち、18歳未満で結婚した人の割合だ。

  • ニジェール(77パーセント)
  • バングラディシュ(74パーセント)
  • チャド(69パーセント)
  • マリ(61パーセント)
  • 中央アフリカ共和国(60パーセント)
  • インド(58パーセント)
  • ギニア(58パーセント)
  • エチオピア(58パーセント)
  • ブルキナファソ(52パーセント)
  • ネパール(52パーセント)

啓発ビデオの中では、少女は西洋の伝統に則り、純白のウェディングドレスとベールに身を包んで通路を歩くという形でその門出を祝福されている。しかし、南アジアやサハラ以南の国々での婚礼多種多様だ。必ずしも白い衣装を着るわけではない。

15歳の花嫁シントゥ。2011年、インドのカムケダ村のバラジ寺院。18歳未満の女性の婚姻を禁じる法律にもかかわらず、インドの農村では未だに児童婚が行われている。

今回のユニセフのビデオは、白人の少女を花嫁として用いた初めての例ではない。2014年、プラン・ノルウェイがある架空のブログ記事を掲載した。その中で、まだ思春期前の少女が「自分は37歳の男性との結婚する予定だ」と書き込んだ。そのブログ記事は、プラン・ノルウェイによれば250万人に読まれたという。当の少女もノルウェー人のブロンドの白人だ。ちなみにノルウェーは、児童婚が行われている国としてガールズ・ノット・ブライズが名指しする120以上の国には含まれていない。

また2月には、若い女性と、彼女よりはるかに年上の男性がタイムズスクエアで結婚記念の写真撮影をする模様がYouTubeに投稿された。新婦は白人で白のウェディングドレスを着ている。この動画も830万回再生されているが、もちろん全て「やらせ」の社会実験だ。

多くの非営利組織は目的を達成するため、「わかりやすい」演出をして共感を得ようとする。それは理にかなっているし、一般人を装ったサクラを雇うこともまた、問題解決のための一つの方法ではあるだろう。しかし、いくら問題解決への取り組みだといっても、事実をゆがめたり、苦悩する異文化への敬意を欠いているならば、それはやりすぎではないだろうか?

ユニセフのメラニー・シャープ報道官はハフポストUS版に対して、西洋流の結婚式に白人の女性のキャストという啓発ビデオの趣向について語った。彼女は、白人女優の起用はこの問題への関心を高めるための「サプライズ効果」を狙ったものだという。

「一見児童婚の危険にさらされているようには見えない花嫁をキャスティングすることで興味をかき立てるのです。現代風の、ドキュメンタリーのようないかにもそれらしい映像に仕立てることで、映像の結末が視聴者に印象深いものになると思います」

「我々が望むのは、このビデオがきっかけとなって、世界中の少女の権利拡大への議論が促進されることです。また、このビデオはブライダル・ミュージングズという、世界で最も影響力のあるウェディング・ブログの協力を得て製作されたことも付け加えておかねばなりません」

「ブライダル・ミュージングズの情報はアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパの読者に向けられています。ですから、ビデオのコンセプトもこれらの読者層に訴えかけるものでなければなりませんし、ブライダル・ミュージングズのブログの内容も反映させながら制作する必要があったのです」

世間の注目を獲得すること必要性は認めよう。児童婚問題になじみの薄い人も少なくはないのだから。しかし、要領を得ないのは、白人の少女を主役に据えることがなぜ欧米の視聴者により「訴えかける」ことになるのか、だ。児童婚の真の被害者である有色人種の女性を起用するほうが、より正確に現実を反映しているはずであると思うのだが。

公平を期して付け加えるならば、実はユニセフは昨年に一度、児童婚の啓発ビデオを制作している。その時は、児童婚の盛んな上位10カ国の一つ、チャドを舞台にしていた。その啓発ビデオの視聴回数はおよそ70万回。今回のビデオに遠く及ばない結果だった。視聴者の望む作品を作ろうとするのは制作者の常。であるから、効果的な打開策を未だ見いだせない中、とにかくまずは世界の現実に人々の眼を見開かせようという目論みなのだろう。

国際女性デーのプレスリリースによると、ユニセフは児童婚撲滅の取り組みを世界各地で実施中だ。ユニセフは家庭や各国政府に働きかけ、若年女性の教育や福祉の充実、18歳未満婚姻禁止の法整備を進める考えだ。

カチュシャベ・チョイスさん(20歳)。6歳、3歳、1歳の自分の子供たちとウガンダで暮らす。結婚したのは13歳。最初の出産も13歳のときだった。

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