「怖い目にあったらタクシー停めて」 子供を保護する"タクシーこども110番"とは

子供を持つ親にとって、もしもの時に我が子が犯罪に巻き込まれないよう防ぐ手立ては、いくつあっても知っておきたいところだろう。女子中学生の保護が伝えられると、Twitte上ではこんな投稿も注目された。
Taxi cabs lined up at Tokyo station, Japan
Taxi cabs lined up at Tokyo station, Japan
Gary Conner via Getty Images

2年間行方不明になっていた埼玉県朝霞市の女子中学生(15)が公衆電話の110番通報がきっかけで、保護されたことが話題になっている。ネット上では「公衆電話に警察や救急に無料で掛けられる機能があるとは知らなかった」「娘は公衆電話の使い方も知らないし、公衆電話がどこにあるのかも知らない」といった声があがった。

子供を持つ親にとって、もしもの時に我が子が犯罪に巻き込まれないよう防ぐ手立ては、いくつあっても知っておきたいところだろう。女子中学生の保護が伝えられると、Twitterではこんな投稿が注目された。

このツイートは2015年6月に投稿されたものだが、女子中学生の保護が伝えられると改めて注目されたようで、3月29日には「そんな制度あったの?確かに知らなかった」「これは保育園や幼稚園の頃から教えるべき」といった声があがった。

東京の「タクシーこども110番」のステッカー

■タクシーが子供を保護してくれるって本当?

実際に、こういった制度があるのだろうか。ハフィントンポスト日本版は、東京都のタクシー・ハイヤーの業界団体、一般社団法人・東京ハイヤー・タクシー協会の担当者に話を聞いた。

--Twitter上で言われているような制度が、本当にあるんでしょうか?

はい。「タクシーこども110番」という取り組みをおこなっています。警視庁と東京都のサポートをいただき、2006年から東京ハイヤー・タクシー協会に加盟する事業者が実施しています。

加盟事業者は448社、タクシーの台数は30,924台(2014年3月末・国土交通省調べ)になります。東京で始める前に、地方で「何かあったらタクシーで子供を保護しよう」という活動例があり、協会内で「ぜひ東京でもやろう」という運びになりました。そこで、警視庁と東京都に協力を依頼し、活動を始めました。東京では法人タクシーだけでなく、個人タクシーでも同様の取り組みをしています。

--具体的に、どういった取り組みなのでしょうか?

「こども110番の家」のタクシー版のような取り組みです。24時間、街を走りつづけるタクシーの特性を活かし、犯罪に巻き込まれそうになった子供がいたらタクシーで保護します。「タクシーこども110番」の車は、目印としてステッカーを車体に貼っています。加盟している事業者さんには、全ての車両に貼っていただくようお願いをしています。ただ都内のタクシーは台数が多いので、貼られていない車両もあるかと思いますが、加盟事業者の法人タクシーであればシールがないタクシーでも子供さんを保護できます。都内のほとんどのタクシーが子供さんを保護できるとお考えいただき大丈夫です。

タクシーに貼られた「タクシーこども110番」のステッカー

--実際に子供から助けを求められたら、どのように保護するのでしょうか。

まず子供さんをタクシー内で保護。落ち着かせて事情を聞きます。そこで把握した内容を警察に通報し、最寄りの交番・警察署まで子供さんを届けます。

--今までに実際に子供を保護した事例はありますか?

取り組みが始まってすぐ数例あったことは把握していますが、それ以降について協会では把握しておりません。各事業者がそれぞれ警察に報告をおこなっています。

--子供以外、例えば夜道で襲われそうになった人が保護を求めることとかはできますか?

はい。犯罪に巻き込まれそうな方や緊急性が高い事案の場合、運転手の裁量でどのような方でも保護します。

--助けを求めた際、タクシーの料金はどうなるのでしょうか?

緊急性が高く、社会貢献活動になりますので、もちろん料金はいただきません。怖い目にあいそうになったら、ぜひタクシーに助けを求めるよう、子供さんに伝えてあげて欲しいです。

■「タクシーこども110番」東京都だけなの?

東京都のタクシー以外でも北海道茨城県大阪府などでも同様の活動が行なわれている。また、京阪神で営業する阪急タクシーなど、事業者が独自に取り組んでいる例もある。ただ、全国のタクシー・ハイヤーの業界団体である一般社団法人・全国ハイヤー・タクシー連合会に電話取材で話を聞いたところ「各地方や自治体ごとで行っている活動」であり「全国的な連携には至っておらず、今のところその予定はない」とのことだった。今後は、全国規模での取り組み拡大と認知度の向上が課題のようだ。

注目記事