大分・別府で地震に遭った留学生「地震国の備えが出来ていなかった」

大分県別府市で被災した留学生が語った苦しい現状とは。
HANAKO OGATA

4月16日に熊本県で震度6強の地震があったが、隣の大分県でも別府市や由布市で震度6弱の強い地震を観測した。別府市には、学生と教員の半数が外国から集まる立命館アジア太平洋大学(APU)があり、多数の留学生も住んでいる。

ハフポスト日本版では、APU3年の緒方花子さんと、APU2年でインドネシア・ジャカルタ出身のメラニア・ステラ(Melania Stella)さんから話を聞いた。

別府市周辺の地図。APUは、地図上の赤いマークの場所。別府市街から少し離れた高台にある。

■APU3年の緒方花子さんの話

−−地震があった時、どんな状況でしたか?

自宅で片付けをしていたところ、ドスーンと強い縦揺れがあり、その後に横揺れがきました。自宅はマンションの7階で、かなりの揺れを感じました。別府は海に近いので、地震直後は津波が来ないか心配しました。揺れている時、頭には東日本大震災の津波の映像が浮かびました。戸棚からも物が落ちてきて怖かったです。同じく別府市内に住む友達と連絡を取って、互いの無事を確認しました。別府は海も山も美しい場所だけど、地震の時にはそれが土砂崩れや津波に姿を変えるかもしれない。自然の怖さを実感しました。

−−街の様子はどうですか?

大分でも窓ガラスが割れていたり、お店の看板が落ちていたりしています。由布市では地割れも起きていて、物資が足りないと聞きました。特に水、トイレットペーパー、オムツ、生理用品が不足しているようです。テレビでは「震源地が東に寄ってきている」という報道がされて、今後の火山活動を心配する人も多いです。隣の熊本では40人以上が亡くなり、大分の人たちもどうなるか不安に思っています。温泉街の別府市には、温泉付きのマンションもありますが、泥水が混ざったりしています。県内でも通行止めが多くなっています。鉄道が止まり、空港に向かう道には速度制限がかかっています。

大分県で被災した家屋

−−物資は足りていますか?

コンビニとスーパーに行きましたが、パンやおにぎり、水など飲食物は売り切れでした。避難所でも物資が足りておらず、友達からは「人がいっぱい。トイレットペーパー、水、オムツ、生理用品とかが足りない」と、辛い状況が続いていることを聞きました。避難所には、日本語が不自由な外国人の方もいます。

緒方さんの友人・高橋あけ乃さんのFacebookより。「大分は特に外国人が多いので、外国人みんなのストレスが心配」と投稿している。

−−APUは海外からの留学生が多い大学ですよね。彼らの様子はどうですか?

出身国ごとにシェアハウスで暮らしている子が多いです。まとまって他の都市に移動したり、避難所に避難したりしています。新学期が始まって間もないこともあり、日本の携帯回線をまだ契約できていなかった学生がいます。無料で開放されているWi-Fi「00000JAPAN」も、別府市内全域で使えるわけではないようで、学生に限らず困っている人たちがいました。大学側は学生寮を全学生に開放しましたが、山の上の高台にあることもあり、物資が届きにくく、量も足りていません。授業は水曜日までの休講が決まりました。

■APU2年のメラニアさんの話

−−留学生の人も多く被災されたと聞きました。どんな様子ですか?

地震があった時、どこに逃げれば良いのかわからない外国人が多かったです。地震を体験したことがない人は、地震発生時にどうすればよいかわからず、混乱していました。地震が夜に発生したこともあり、家に一人でいた友達は恐怖を感じたそうです。どうすることもできず、ただただ避難所を探し、街を歩き回っていた子もいました。私は仲の良い緒方さんの家に避難させてもらいました。学生同士は、SNSで互いの安否確認をおこないました。幸いにも、けがをした友達はいませんでした。

留学生の中には、緊急地震速報が出た時に、避難所でみんなの携帯電話のアラームが一斉に鳴って、悲鳴が上がる様子に恐怖を感じてしまった人もいます。言葉もわからず、人も多く、「避難所に居辛い」と感じている人も多いようです。

−−留学生や外国人観光客も被災しています。困っていることは何ですか?

被災地には英語を話せる人が足りていません。いろいろと日本語で案内や説明をしてもらえてありがたいのですが、残念ながら言葉がわかりません。避難所の場所も、土地勘がない外国人は、せっかく日本語で説明してもらっても…。所持金に余裕がある人は福岡や大阪に移動できますが、お金を持っていない人は、今の状況では身を守るのは大変だと思います。

APUの建物にも被害が出ている

−−外国人が被災した時、何が課題だと思いますか?

地震国の日本での備えができていなかった人が見受けられました。地震がない国から来た人は特に顕著です。一方で、大学側も別府市側も外国人に対して備えが十分だったのか。私が通う大学は、学生の半分以上が外国人です。別府は海外からの学生がとても多いのですが、外国人向けの震災時の避難対策がしっかりと立てられていたのか、そこは分かりません。外国人向けの震災対策には、言葉の壁があると思います。外国人の中にも、英語ができない人もいます。地震を体験したことがない国の子達は何もできませんでした。まさかこんな事態になるとは、誰も予想できなかったと思います。

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