朝鮮王朝、父子の悲劇を描く映画『王の運命』 イ・ジュニク監督「世代間の葛藤は昔もいまも変わらない」

朝鮮王朝の悲劇を描いた韓国映画『王の運命 ―歴史を変えた八日間―』が、6月4日から日本公開される。イ・ジュニク監督がハフポスト日本版の取材に答えた。
2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES

王が息子を死に追いやった朝鮮王朝の悲劇を描いた韓国映画『王の運命(さだめ)―歴史を変えた八日間―』が、6月4日から日本公開される。イ・ジュニク監督はハフポスト日本版のインタビューに「権力闘争の話より、人間の心理そして感情に重点を置いた」と話した。

作品は、朝鮮第21代目の王・英祖(ヨンジョ)と、実の息子・思悼(サド)、そして思悼の子として朝鮮後期最高の聖君となる第22代イ・サンの誕生まで、56年間にわたる歴史に存在した人々の心情を丁寧にひもとき、韓国では広く知られている1762年の「米びつ事件(壬午士禍)」を中心とした史実を映画化した。韓国映画界を代表する国民的俳優ソン・ガンホが演じる非情な王であり父である英祖と、数々のドラマや映画で活躍中のユ・アインが演じる悲運の王子・思悼の痛ましいまでの対立の様子が描かれる。

あらすじ:舞台は18世紀。朝鮮第21代国王の英祖は40歳を過ぎてから生まれた次男の思悼を、自分と同じく学問と礼法に秀でた世子=セジャ=(王位継承者)に育てあげようとする。だが、思悼は芸術と武芸を好む自由奔放な青年へと成長。英祖が抱いていた息子への期待は怒りと失望に転じ、思悼もまた、親子として接することのない王に憎悪にも似た思いを募らせていく。ついには謀反にかこつけて、我が子を米びつに閉じ込める英祖。もはや誰にも止められぬ哀切と愛憎の8日間の行方は――。

イ・ジュニク監督=東京・銀座

イ・ジュニク ソウル出身。韓国で1000万人を動員した『王の男』、音楽三部作と呼ばれる『ラジオスター』『楽しき人生』『あなたは遠いところに』、衝撃の社会派映画『ソウォン/願い』など人間の喜怒哀楽に深く切り込む作品を次々と発表してきた。

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韓国映画「王の運命—歴史を変えた八日間」より

韓国映画「王の運命—歴史を変えた八日間」より

――この映画を作ったきっかけはなんですか。

思悼世子のこの事件は韓国の人がみなよく知っており、これまでも映画やドラマなどで多く取り上げられてきました。今回は権力闘争といった政治の話ではなく、より新しい観点から、父と息子という家族をテーマにしました。

250年前のストーリーですが、ここに描かれている世代間の葛藤は昔もいまも変わりません。現在の韓国社会にも通じるところがあると思っています。

――韓国国内の反応はどんなものでしたか。

昨年公開されましたが、620万人の動員があり、おしなべて好評でした。思悼世子の描き方については、権力争いの犠牲になった彼のことをあまりにも家族の出来事のように捉えているという批判が、学者や専門家からありました。でもそういった批判があったことで話題となり、一層、知られるようになった側面もあります。韓国の人々には、新しいストーリーとして受け入れられました。

――家族関係がテーマとのことですが、人々はどう受け止めたのでしょうか。

昔の話を通して今の自分たちの社会と照らし合わせています。既存世代は英祖に理解を示し、一方、若い人たちは、息子の思悼世子の葛藤や考えに近いと思ったようです。このように、いまでも世代間の乖離があるんです。この映画は、現代社会の鏡を見ているようだと、そんな反応が多かったです。

――ストーリーでの工夫は。

毎回、いままで撮ってきたものとは違うものをつくりたいという欲が出てきます。今回の映画は、人間の心理そして感情に重点を置きたいと思いました。それ以外のところは他の作品よりも薄くしています。

――英祖を演じたのは日本でも知られる国民的俳優のソン・ガンホです。キャスティングは満足できるものでしたか。

ほぼ欠陥のないキャスティングでした。ソン・ガンホはいままでと違う面を見せてくれたと思います。

――日本人へ伝えたいのはどういった点ですか。

映画は事前の十分な知識があるから分かるということではありません。何げなしに見に行って感じることができるのが映画なんです。日本の方が思悼世子について知らなくても楽しむことができます。人間の関係の基礎となる家族の関係、特に父と息子、孫との人間関係と感情をみてもらえればいいいと思います。

…………

『王の運命―歴史を変えた八日間―』

配給:ハーク

監督:イ・ジュニク(『王の男』『ソウォン/願い』)撮影:キム・テギョン 美術:カン・スンヨン(『王の男』)

音楽:パン・ジュンソク(『ソウォン/願い、』)

出演:ソン・ガンホ(『スノーピアサー』) ユ・アイン(『ベテラン』) ムン・グニョン(『ダンサーの純情』)

キム・ヘスク(『10人の泥棒たち』) チョン・ヘジン(『テロ、ライブ』) ソ・ジソブ(『会社員』)

6月4日(土)、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー

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