「従業員の結婚式費用、会社が負担します」アメリカの企業が新しい福利厚生に挑戦

「Boxed」のチー・フアンCEOは、従業員手当の1つとして、従業員が結婚式を挙げる時に会社が最大で2万ドル(約210万円)までの費用を負担すると発表した。

食料品・生活用品のオンラインストアを手掛けるアメリカのスタートアップ企業「Boxed」のチー・フアンCEOは、従業員手当の1つとして、従業員が結婚式を挙げる時に会社が最大で2万ドル(約210万円)までの費用を負担すると発表した

小売販売を展開し「オンラインのコストコ」とも呼ばれるこの会社は2015年、従業員の子供が大学に通う際に学費を支払うと発表していた。2016年9月、Boxedは5人の学生の授業料を支払う。そのうちの1人は、9月にブラウン大学に入学する。

「無料の軽食などの福利厚生は古くなってしまいました」とフアン氏はハフポストUS版に語った。彼は、他のスタートアップ企業が提供しているハッピーアワー、軽食や卓球台よりも、結婚式や子供の学費の方が大切だと考える。「私はそういう本当に大切なものを提供したい」。

結婚式費用を負担するというアイディアは、フアン氏が思いついた贅沢な手当ではない。それは従業員が切実に求めていたものだった。

従業員の1人、マルセル・グラハムさん(26)は、ニュージャージー州エジソンにあるフルフィルメントセンター(商品の受注から決済まで行う拠点)で出荷を担当している。彼は、結婚式の費用を貯めるため週7日、2つのシフトを入れて勤務していたが、母親の医療費を支払ったことで貯金がなくなってしまった。結婚式が近づき、グラハムさんは追い詰められた。そしてつい先日、倉庫で勤務中に泣き崩れてしまった。

フアン氏はその夜、グラハムさんを呼び、何があったのか尋ねた。「我々は、正しいことをしなければなりませんでした」とフアン氏はハフポストUS版に語った。

フアン氏はこう考える。たいていの会社では、上司が従業員を必要とすれば(徹夜や残業もあるかもしれない)、その従業員は成長するだろう。でも逆に、従業員の助けになる雇用主はほとんどいない。「誰かが人生が変わってしまうような状況にいても、ほとんどの会社は助けてくれません」とフアン氏は語った。

フアン氏はグラハムさんの婚約者タラ・オーコインさんをフルフィルメントセンターに呼び、そこにいる全員に新しい結婚式手当について発表した。

Boxedのチー・フアンCEOは従業員のマルセル・グラハムさんとその婚約者タラ・オーコインさんに、会社が結婚式の費用を負担すると伝えて2人を驚かせた。

「会社が私の結婚式費用を払うなんて、唖然としました」とグラハムさんは語った。「涙が出ました。私の婚約者も同じです。ここでの仕事が評価されたのかと思いました」

ハフポストUS版はフアン氏に、なぜ給料を上げるのではなく結婚式や授業料を払うといった形で従業員に還元するのか尋ねた。フアン氏は、給料を上げるだけでは十分ではないと語った。

「仮に賃金を2倍にしたとしても、彼らは授業料や結婚式の費用を支払えないでしょう」

6年前、自身の結婚式に約1万4千ドル(約152万円)かかったという34歳のフアン氏。現在は4つの結婚式に出席する予定で、そのうち3つがBoxedフルフィルメントセンターの従業員だという。

Boxedの従業員は、会社が結婚式の費用を負担してくれると知って喜んだ。

フォーチュン紙が「ミレニアル時代のコストコ」と呼ぶBoxedは最近、100万ドル(約1.1億円)の資金調達に成功した。また、アメリカン・エキスプレスからの出資も決定している。フアン氏は最終的には株式公開したいと語る。

従業員を大事にするという点では、Boxedは「ディスラプト(破壊または変革)」する企業からヒントを得ているようだ。コストコはパート従業員にも十分な給料を支払い、敬意を持って接することで知られている。

Boxedの従業員は、結婚式などの費用に助けなど要らないようなシリコンバレーの企業に勤める高給取りで充実した手当てをもらっている従業員よりも、コストコの従業員の方に共通点が多い。Boxedの従業員約125人の多くはフルフィルメントセンターで働き、時給は平均14ドル(約1500円)だ。

Boxedはこういったパート従業員に対しても、社員と同じ手当を支給している。健康保険、特に無期限の病欠や休暇など充実した手当が受けられる。

また育児休暇にも期限がない。12カ月の育児休暇を「無制限」と自称するネットフリックス社とは違って、実際に期間に縛りがないとフアン氏は語った。いつまでが適切な休暇期間かを決めるのは、従業員本人に任せているという。

「みなさんには、これが信頼あってのシステムだと念頭に入れていただきたいのです。悪用する人にはならないでほしい。たとえば、誰にも言わずに6週間ネパールに消えてしまうなんてことはやめてください」

これまでで最も長かった育児休暇は7カ月程度だと言う。フアン氏はこの女性から、もう1人子供を出産する予定だと告げられたと語った。「彼女がもう7、8カ月休みが必要なら、当然取ることができます」。

現在まで会社を辞めたのは2人だけだとフアン氏は付け加えたが、それも不思議ではない。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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