「落選しても晴れやか」浪人経験から岸本周平・衆院議員が若者に送るエールとは #YoungVoice

「翌朝の青空を眺めてスカーッとした」という発言に、目下、就職活動に悩む若者たちは驚きの表情。

7月の参院選では、18歳以上が初めて投票できるようになる。新しい世代が参加することで「政治が変わる」ことに期待が高まっているが、そもそも若者たちの政治・選挙への関心はどこに向いているのだろうか。ハフポスト日本版は、18歳から23歳の若者と一緒に国会議員や自治体の首長らを訪ね、率直で様々な質問をぶつけてみた。

民進党の岸本周平・衆院議員(59)は、古家郷さん(20)、池羽梨月さん(20)、幸田真里奈さん(22)の質問に答えてくれた。公務員から、トヨタ自動車を辞めて挑戦した最初の衆院選で落選。「翌朝の青空を眺めてスカーッとした」という発言に、目下、就職活動に悩む若者たちは驚きの表情。一体どういうことなのだろうか?

――どうして政治家になろうと思ったんですか?

私は最初は当時の大蔵省、今の財務省で25年働いていて、40代で結構若くして辞めて、トヨタ自動車に転職したんです。正直に言うと、公務員を目指したのもあまり強い動機はなかった。どうせ働くなら、パブリックな仕事の方がいいかなという程度。実は民間の方がよっぽどパブリックだってことに後で気づくんですけどね。省庁ってね、自分の省のために仕事して、自分が天下りするために仕事している、それで私は辞めたんです。例えばトヨタ自動車の人たちはいい車をできるだけ安く作って、1日も早くお客様に届けることしか考えていないんですよ。でも、いい車が売れたら、次も買ってくれる。結果的に利益が出る。地域が栄える。

でもその頃、二大政党制のアメリカやイギリスのように、ダイナミックな、変わる政治をしたいと思って、48歳でトヨタを辞めて選挙に出たんですね。ずっと一つの政党が強いと既得権益になってしまうから。日本も2009年に政権交代できてよかったんですが、その時民主党は失敗しちゃって、また野党になって。安倍(晋三)さんもいいんですけれど、ちょっとやりすぎだから、どこかでブレーキを踏んで、また変わる。こういうようにね。

■「落選したらただの人になっちゃって」

左から、岸本周平・衆院議員、古家郷さん(20)、池羽梨月さん(20)、幸田真里奈さん(22)

――選挙に出てみてどうでしたか?

最初の選挙は落選しちゃって、4年間浪人しました。その前はサラリーマンで、しかもトヨタの部長でしたから、たくさん給料もらっていたんですけれど、落選したらただの人になっちゃって。お給料ゼロ、浪人みたいな感じで4年間大変でした。でも、それはそれですごく楽しかった。サラリーマンを辞めて、当選する保証はない。実際、落選して無職・無収入になりました。

でもね、落選した翌日の朝に街頭演説に立ったんですけれど、夏で、真っ青な青空で、ものすごく気持ちがよかったです。スカーッとしましたね。若い人は、ともかく、リスクを取りまくって欲しい。絶対失敗するから。でもその失敗した時の抜け感、「アチャー」って感じがね、いいっすよこれは。僕は48歳でそのリスクを取ったけど、もっと早く取っときゃよかったなって思いました。志のある若い皆さんも是非、選挙に出てみて欲しい。色々分かりますよ。

――何が分かったのでしょうか?

浪人中、1日8時間、街頭で演説をやってたんですよ、暇だから。スーパーで立っているとおじさんおばさんとか、文句言いたい人が来るんです。演説というよりも「日頃の不満を聞いて欲しい」とか「消費税上げて欲しくない」とかがあって、怒られることの方が多いですけど。「民進党だらしないわね」とか言われて、でもそれが私の原点。私は政治家って「しゃべる人」だと思っていたんですよね。自分の政策とか理念とかを演説する。そう思っている時は当選できなかったんです。違うんですよ、政治家って人の話を聞くのが仕事。今は立ってて喋るのが2だとすると、聞くのが8。地元でいろんな意見を聞いて、そういう人たちに代わって国会で喋る。だから代議士って言うんですよ。それがわかったら当選できました。今も土日は必ず、月曜日も朝は駅で街頭演説してから上京するんです。だから今はスーパーで話を聞いてそれをまとめて、委員会で聞く。政策にする。それが私の仕事です。

「岸本周平ブログ」と名付けた政策解説のチラシを若者たちに見せる岸本周平・衆院議員

■「子供って実は結構大人ですよね」

――18歳選挙権に賛成ですか?反対ですか?

賛成です。駅で街頭演説をしていると、中学生でも高校生でもチラシを取ってくれる子は取ってくれるんですね。最初大人にしか配ってないんですけど、ある時高校生が「くれないの?」みたいな顔をしていたもんで、渡すようになりました。中学生でもそれを読みながら行ってくれたり。結構難しい政策の話が書いてあるんですよね、マイナス金利とか。でも中学生・高校生も問題意識持ってる子はいる。自分のことを思い出すと、子供って実は結構大人ですよね。なめんなよ、みたいなね。小学生だってニュースは見るし、高校生の時だってみなさんいろいろ意見はあったと思うんです。大人はバカにして相手にしないってところもあると思うんですが。私が街頭演説で話した感じでは、十分政治に関心はある。18歳になれば大人ですから。若い人が投票に行けば絶対に政治は変わります。

――街頭で話して、若者が求めていることって何だと思っていますか?

私の選挙区は和歌山という地方都市です。ですから「和歌山で働けるようにして欲しい」ということがまずありますよね。まず大学の数が多くないですから、私もそうでしたけれど東京や大阪などへ行ってしまう。じゃあ、戻ってきたら職場があるかというと、人口37万の都市ですから職場がない。そうすると当然、東京で就職活動をし、就職すると戻ってこない。でも本当は、戻ってきて親と暮らしたい人も多いんです。それで、私も11年間、大企業誘致とかってやってみたんですが、来ないです。当たり前です。製造業はベトナムやミャンマーへ行きます。サービス業だったら、もうちょっと人口の多いところへ行きますよね。だから、私はそれは途中でやめて、東京や大阪で学んできた若者に「起業なさいよ、和歌山で」って言うんですよ。実際そういう人たちが多くなってきていて、すっごく面白いですよ。

■「ソフトヤンキー」が地域のリーダー

――和歌山では、起業をする若者が増えているんですか?

ええ、一旦外へ出ちゃうんですけど、親の家業が小さな事業所やお店をしていて、後を継ぐために戻ってくるような子たちがいたり、東京出身でも奥さんが和歌山で、引っ張ってこられた人とか。あともっと面白いのは、「ソフトヤンキー」って言うのかな?若い頃にいっぺんグレて、それで中学卒業とか高校中退ぐらいで家出してたのが2、3年で改心して戻ってきて、親に詫び入れて家業を継ぐという子たち。そんな感じの子たちが今、和歌山の若手のリーダーになっているんですよ。

若い頃ヤンチャやってた子たちが真人間になって戻ってくると、めちゃくちゃリーダーシップがある。エネルギーが有り余っている。ビジネスもできるし、若者の集団を率いてお祭りを作り上げたり、資金集めをしたりとかも。起業といっても小さなビジネスが多いし、東京で働いて垢抜けたセンスを持って帰ってきた人たちも、ビジネスが成り立ったりする。起業するっていうマインドが今きていて。というのは、地方都市はドン底だからなんです。シャッター通り。でもね、それを悲しむのはおじさんおばさんだけなんですよ。若い人たちは生まれた時からシャッター通りだからなんとも思わない。そういう起業マインドが若い人たちにも育ってきていると思う。だから私は楽観的なんですよ。

■「皆さんの先輩が投票に行かなかった」

――若者が選挙に行かないと損することって何ですか?

若い人の投票率ってすごい低いんですね。で、30代、40代と上がっていって70代がピークで、80代になると落ちますが。そうすると政治家は50代、60代、70代の選挙に行く人のための政治をしてきたわけですよ。それが例えば年金で。これから皆さんは年金の保険料を支払わないといけないですが、今の人って自分たちの(支払った掛け金の)5倍もらっているんですよ。皆さんはトントン、あるいはマイナスかもしれない。それは皆さんの先輩の20代、30代の方が投票に行かなかったから。だから、若い人たちのための政治が行われてこなかったわけです。

――若い人たちのための政治とは?

例えば保育所不足の問題も今火がついていますが、30年前から女性は働き始めていたんですよ。20年前、10年前、政治は何をしていたの?それは若い人が投票に行かないから。2009年に政権交代した時に、今まで選挙に行かなかったようなママさんたちが投票に行ったの。それは民主党(当時)が「子育ては国でやります」と言って子供手当をマニフェストにしたから。それで投票に行ってくれたわけですよ。初めてそこで、若い人向けの政策が始まった。

例えば大学の授業料を無償化しようと思ったら、若い人たち、18歳、19歳が選挙に行かないと無理ですよ。でも、国公立だけに限れば4000億円で実現できるんです。消費税を1%上げれば、2兆7000億円もあるんですよ。仮に消費税を2%上げるんだったら、その中から大学の授業料、あるいは、子供の医療費を無料にできるんですよ。そういう政策は、若い人が投票に行ってくだされば、やりやすくなるんですよ。18、19歳の人がみんな投票にいけば、政治家は「大学の授業料無償化」って言いますよ。投票してくださらない人のために政策考えないもの。

もっといえば、生まれてくる子供、今は投票できない子供たちのために考えないと。国の借金1000兆円でしょう。でもそれはあなたたちが決めたわけじゃない。これから生まれてくる子たちも800万円の借金背負って生まれてくるわけ。そういうことも考えなきゃいけないし、そのためにも18、19歳の人には投票に行って欲しい。

岸本周平(59)1956年、和歌山市生まれ。1980年に東京大学法学部を卒業し、大蔵省(現・財務省)入省。理財局国庫課長などを経て2004年に退官し、トヨタ自動車入社。2005年の衆院選で民主党公認として和歌山1区から立候補するも落選。2009年に初当選し、現在3期目。民進党ネクスト農林水産大臣。趣味は柔道(3段) 、映画鑑賞。

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