「私たちは地球の守護者になれるのです」 映画『フラワーショウ!』主人公のモデルとなったレイノルズさん

ガーデニングの世界大会に挑んだ女性の実話を基にしたアイルランドのサクセス・ムービー『フラワーショウ!』が、7月2日から公開される。主人公のモデルとなったメアリー・レイノルズさんに話を聞いた。
2014 Crows Nest Productions

ガーデニングの世界大会に挑んだ女性の実話を基にしたアイルランドのサクセス・ムービー『フラワーショウ!』が、7月2日から公開される。主人公のモデルとなったランドスケープ・デザイナーのメアリー・レイノルズさん(42)が来日した際にハフポスト日本版の取材に応じ、「私たちは地球の守護者になれるのです」などと語った。

アイルランドの田舎娘メアリーは、この最高峰の舞台「チェルシー・フラワーショー」にあえて華やかな花を使わず、雑草とサンザシの木だけという型破りなアプローチで挑んだ。上流階級の壁や資金操りなど次々と立ちはだかる困難に「雑草魂」で立ち向かい、権威主義がはびこる保守的なフラワーショーに新風を呼び込む。

あらすじ:アイルランドの田舎で育ったメアリーは、「自分のデザインした庭で世界を変えたい!」という夢を叶えるため有名なガーデンデザイナー、シャーロットのアシスタントに応募。晴れて採用されるも、高慢で貪欲な彼女にコキ使われた挙句、長年書き溜めていたデザインノートまで盗まれクビに...。どん底のメアリーがひらめいたのは、毎年世界中から注目される「チェルシー・フラワーショーで金メダルを獲る」ということ。コネもお金も経験もないメアリーだが、わずか8枠に殺到した2000人の応募者の中から見事合格。ヒッピー風の庭師や密かに思いを寄せる植物学者のクリスティらで寄せ集めチームを結成し、一路チェルシー・フラワーショーへ。果たして――?

メアリー・レイノルズ アイルランド出身。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンでランドスケープデザインの優等学位を取得し、1997年にランドスケープのデザイン会社を設立。2002年にチェルシー・フラワーショーのショー・ガーデン部門に初エントリーで、アイルランド人して初めて金賞を受賞。イギリス政府からの依頼を受け、ロンドンのキュー王立植物園(世界遺産)の野生庭園の設計を手がける。2011年にはBBCのガーデニング番組で司会を務め、「世界で最も偉大なランドスケープ・デザイナー10人」に選ばれた。

映画『フラワーショウ!』のモデル、メアリー・レイノルズさん=東京都目黒区

――この映画は、どのくらい現実に近いのでしょうか。また、作られたきっかけは。

映画のほとんどが現実に起きたことです。ただし、作品中でメアリーのライバル的な役割をしているシャーロットは実在しません。作品に緊張感を与えるためにストーリーに加えられたと思います。

きっかけは、私が2004年にヴィヴィアン・デ・コルシィ監督のガーデンを手がけたことです。今回、映画のあらすじについて意見を求められられました。以前にも他から声を掛けられましたが、お断りしていました。でもヴィヴィアンは自然に対する思いが深く、勢いをとても感じました。私はその勢いに飲まれて制作に加わることになりました。

――完成した映画を見た感想は。

奇妙な感覚ですし、ほっとしたとも言えます。映画にするとなると似たようなストーリーの作品も多いと思って躊躇する部分もありましたが、物語に備わっている矜持というか高潔さ、誠実な気持ちについて、ヴィヴィアンがきっちりと形にしてくれました。彼女は、私の自然に対する思いをしっかりと映像化しており、その空気感がきっちりと伝わっていてほっとしました。

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映画「フラワーショウ!」より

――母国アイルランドでの公開は日本より後になると聞きました。公開が楽しみですね。

いや、わくわくしてるかというと、そうでもないですよ(笑)。私は静かに、簡素でいつも通りの生活をしているだけですから。自分が他人に知られること、名声については望んでいないことなんです。今回公開することで、私の2人の子供に影響があっては嫌だと思ったりもしていて、正直、公開については神経質になっています。でも、愛する自然のために役立つことができればと願っていますし、そうなれば幸せですね。

4月に初めて著書「THE GARDEN AWAKENING(庭の目覚め)」を書いたんです。映画がきっかけにあったのですが、ここにもメッセージを込めました。例えば、自分がデザインした庭は美しくて自然の中にあり、調和が採れています。でも、その庭はずっと同じ形を保ち続けようとはせず、植物は自分の望む形になろうとします。そのため、自分が失敗したのではないか、自然と調和したデザインではないのではないかと感じました。だったらどうすればいいのかと考えながら、この本を書き上げました。

――日本庭園に対する感想を聞かせて下さい。また、日本の観客はどこに注目して作品をみたらいいのでしょうか。

日本庭園は景観を取り込んだ美しいものですね。風景の美しさを理解して作られていますし、その風景のミニチュア版とも言えます。落ち着いていて抑制が効いてもいますね。

映画については、私たちは自然を守らないといけないということが伝わるといいですね。庭園は小さい場所かもしれませんが、その庭を健康な状態に戻していくんです。それが、世界の自然を守ることであり、私たちは地球の守護者になれるのだと思っています。

…………

『フラワーショウ!』

2016年7月2日ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

© 2014 Crow’s Nest Productions

2014年/アイルランド/カラー/DCP5.1ch/シネマスコープ/100分/原題:Dare to be wild 字幕翻訳:鈴木恵美 /後援:アイルランド大使館/提供:クロックワークス、東北新社/Presented by スターチャンネル

監督、脚本:ヴィヴィアン・デ・コルシィ

出演:エマ・グリーンウェル、トム・ヒューズ、クリスティン・マルツァーノ

配給:クロックワークス 公式サイト:flowershow.jp

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