熊本地震・被災地の疑似体験で募金へつなげる「VR Donation」(360度動画)

北川さんはどうしたら震災を「自分ごと」に感じてもらえるかをずっと模索してきたという。
Yoshiki Kitagawa

どうすれば熊本地震を自分のことのように感じられるか――。

熊本地震の被災地で360度動画の撮影を続けているプロデューサー、北川義樹さん(31)は、7月、新たに南阿蘇村で撮影した360度動画をFacebookページ「体験空間設計」で追加公開した。北川さんは、これらの動画を使って、被災地の疑似体験とともに進める募金活動「VR(ヴァーチャル・リアリティ) Donation」を始めている。どのような仕組みなのだろうか。

南阿蘇村黒川地区の360度動画(再生できない方はFacebookアプリ上で

南阿蘇村の地表の亀裂をドローンで上空から撮影した360度動画(再生できない方はFacebookアプリ上で

風景を360度同時に撮影した映像は、スマートフォンを動かすことによって自分の周囲の様子を見ることができる。北川さんのVR Donationでは、さらに、段ボール製の装置を使用している。装置にスマホを差し込んで、覗き見るVR(ヴァーチャル・リアリティ)技術によって、視聴者はまるで被災地に入り込んでしまったかのような体験をすることができる。

代々木公園でのイベントでVR Donationを実施した北川さん(右)

2011年の東日本大震災後にも、募金活動などを行ってきた北川さん。どうしたら震災を「自分ごと」に感じてもらえるかをずっと模索してきたという。

「自分は熊本出身なので、熊本地震の被災地のことはとても気がかり。でも、東京からは遠く離れていて報道も少なく、募金額も東日本大震災ほどは集まっていないと聞きます。被災地のことをもっと伝えたい。でも、縁がない人にとっては、もしかしたら被災地の映像が『見せられている』という義務のようになってしまっているかもしれない。そうではなく自ら「知りたい」「見てみたい」と思えるようなものをと考えました」

7月に代々木公園で行われたイベントで北川さんは「VR(ヴァーチャル・リアリティ) Donation」ブースをもうけて募金を募る活動を行った。筆者も体験してみた。映像は、道を走るトラックの荷台に乗せたカメラが、両脇に倒壊した家屋が立ち並ぶ様子を映し出していく。イベントの楽しい雰囲気の中で、そこだけが被災地にワープしたような不思議な感覚を味わった。

北川さんによると、会場では、VR装置を見つけた来場者の側から「見せてください」と声をかけられる機会も多かったという。

「きっかけは『話題のVRを体験してみたい』でもいい。まずは見ることから、知ることから始めてほしいんです」と北川さん。この仕組みを、熊本地震に限らずNGOの資金集めなどでも活用できるのではと考えているという。

北川さんは現在、VR Donationが実施できるイベントなどを探しているという。募金で集まったお金は被災地でボランティア活動中の一般社団法人「チーム熊本」に寄付される。問い合わせは北川さんのFacebookページ「体験空間設計」まで。

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熊本県・南阿蘇村(2016年4月16日)

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