ドゥテルテ大統領の超法規的殺人に隠された真実

ドゥテルテ大統領は大きな推進力で社会と経済を変えていくに違いない。

2016年8月28日のフィリピンの人気テレビ番組「SOCO (犯罪捜査の現場から)」で、2人の容疑者がマニラの高速道路わきの検問所で警官隊に出会い銃撃戦の後に射殺された事件が放送された。NOEL CELIS VIA GETTY IMAGES

【「The Clever Filipina」「TCF Daily」編集長エルナ・ジューンの寄稿】

ロドリゴ・ドゥテルテが大統領に就任して60日ほどの間に、世界中のメディアがこのフィリピンの大統領について、人権を暴力で蹂躙し、わが愛する祖国の恐怖に満ちた将来像を大胆な筆致で描く油断のならない危険人物として伝えているのを、私は静かに見守って来た。誤った情報ばかり聞かされているアメリカの友人たちとの話があまりに大変だったので、フィリピン国民ならほぼ誰もが分かっているのに外国には間違って伝えられていると思われる明白な事実を、きちんと説明しなければならないと強く感じている。

正式な裁判を経ないで処刑されたとされる犠牲者たちを偲び正義を求めてニューヨークのフィリピン大使館前で開かれた大集会

2016年5月9日、さまざまな既成勢力を代表する何人もの候補者を大きく退けて、ドゥテルテが大統領に選ばれた。次点との差は660万票以上。その選挙戦術は従来のやり方とは大きく異なり、勝つために従来の型に合わせるようなことは絶対にしなかった。投票日前に開かれたテレビ討論会でも、この国を変えるための過激な野望をあからさまに公言していた。

彼は汚職や犯罪をなくすと約束し、麻薬の常習者とその販売人のどちらにも「降伏か死か」を選ぶように繰り返し求めた。

これは、この国を変えるために彼がやると言っていることが何なのか気が付いていなかった人々に、新たな現実を思い知らせることになった。彼はずっと、大統領になったら犯罪を確実に告発し、警察が国の治安を守るという本来の職務を果たせるようにする、と唱え続けていた。長い間汚職と腐敗にまみれ、高い地位にある者ほどその犯罪が見逃されて来たこの国の麻薬・犯罪組織に狙いを定めると言ったその言葉を、彼は忠実に守った。彼は矢継ぎ早に政策を打ち出して犯罪に立ち向かい、警察の後ろ盾となって正義を追い求める努力を100%支えた。

彼は繰り返しこう述べた。「みなさんには、やるべきことをやってほしい。もちろん誰の命も奪ってはいけないが、もし相手が暴力をふるって抵抗し身に危険が及ぶようなら、撃て」と。

この方針に従った結果、麻薬犯罪者およそ4000人が逮捕に抵抗して殺されたため、フィリピンの麻薬・犯罪組織に激震が走った。政府の広報担当秘書官マーチン・アンダナーによると、73万人に及ぶ人々が自首し、治療やカウンセリングを求め、巨大な麻薬企業から脱出した。4000人とは膨大に聞こえるが、それでも、破滅の運命を免れた家族や、市民が正業に戻って来てかつての活力を取り戻すであろう地域社会への影響の大きさに比べれば、間違いなく小さいと言うべきではないだろうか。

73万人。これが私たちの中心課題だ。フィリピン人は他人の罪を許すし、人の助けを求める非常に多くの市民が「バヤニハン」と呼ばれる文化に大きな期待を寄せている。この「バヤニハン」とは、地域社会の団結を示す精神であり、これによりある一つの目標に向かって地域の皆が協力し合う。そして、他人の罪を許して皆が力を合わせた時に初めて私たちはこの国を救うことができる、と気づく。

麻薬に対する戦争の他にも、レーダーにはすばらしい進展がいくつも引っかかている。

緊急事態に対応し、また市民からの不満を聞くための24時間ホットラインが全国規模で2016年8月1日より稼働。TCFDAILY.COM

フィリピンの歴史上初めて、全国規模での単一の緊急通報システムが、アメリカの911と同等レベルで稼働を開始した。以前、警察への通話番号は地域ごとに異なっていて、地方組織に直結してはいたものの、繋がらなかったり対応が遅れることも多かった。このシステムの稼働により、人々の心には、この国の安定を保ち汚職を減らすための努力を後押しできる全国規模のソリューションがあるという安心感が生まれた。

犯罪対策用とは別に、政府の役所に対する不満や意見を聞くための共通の電話番号8888も導入された。ドゥテルテは汚職の追放を約束しており、前大統領からの大統領府および政府機構の引継ぎのための60日の政治的任用期間が終わると、彼は迅速に行動を起こし政府のすべての部長や局長を首にした。人々の期待に適う新たな人材が見つかるまで、それぞれの副部長や副局長がそのまま昇格する形で暫定的にその後を引き継いだ。これはまた、基本的に現状維持のやり方を続けてきたこれまでの政権との決別を強く印象づけた。

もう一つの大規模な政策として、2016年後半から2017年にかけて、建設事業やインフラ開発計画を順次立案し公表していく。例えば、中国と日本の支援を受けて初めての高速鉄道を建設し、大量輸送手段の多様化を図るとともに何千もの雇用を創出する。また、マニラとセブ以外の地方都市についても開発が重点的に進められる予定で、雇用の創出と交通網の整備、渋滞の緩和を図る。

この他にもさまざまな変化が実際に進んでおり、これが国全体で91%の高い信頼度に繋がっている。フィリピン人は自尊心の高い国民であり、リーダーが先頭に立って国造りの骨格を示し、より良い未来への道筋を考え抜いてそれをはっきりと示すならば、大多数が支持する。

フィリピンは発展途上国とされている。しかし、ドゥテルテ大統領は大きな推進力で社会と経済を変えていくに違いない。

西側諸国のメディアはどこも死傷者数の報道が得意で「流血事件は一面記事に」の精神を守っている。しかし、わが国は現在、過去数十年間に蔓延した腐敗や汚職を廃絶する歴史的なチャンスを迎えている。あらゆる妥協をきっぱりと拒絶し、市井の人々の謙虚さや夢や願いをさまざまなレベルで体現するリーダーが現れたからだ。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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